「クール・ジャパン」の輸出法
(初出:「東洋経済」2012年5月26日号)
去る4月28日、幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」で「超クール・ジャパン作戦会議」というシンポジウムが行われた。メディアジャーナリストの津田大介氏、ニコニコ動画を運営、ニコニコ超会議を主催した株式会社ドワンゴの川上量生会長、そして枝野幸男経済産業相などが登壇し、マンガ、アニメ、ゲーム、アイドルなど日本のポップカルチャーをいかにして海外に売り込んでいくか、というテーマで議論を交わしていた……らしい。
「らしい」と書いたのはほかでもない。僕はそのとき同じ会場にはいたが、自分が主宰する雑誌『PLANETS』のブースで別のイベントに出ていたのだ。壇上での議論の内容はほぼ聞いていなかった。にもかかわらず、司会の津田氏からお呼びがかかり意見を求められた。突然のワンポイント・リリーフでびっくりしたが、僕は壇上のメンバーが指摘していないであろうことに見当をつけてざっと問題提起を試みた。
ポイントは、この種の日本のポップカルチャーについては単に作品を輸出するだけでは、おそらくその面白さが半分くらいしか伝わらない、ということだ。たとえば日本のマンガ、アニメなどの文化はコミックマーケットやインターネット上のコミュニティサイト(それこそニコニコ動画など)での二次創作文化、つまり、インディーズ市場で、ある作品の登場人物や設定を用いて消費者が別の物語を展開する文化に強く支えられている。「聴いてよい曲」とカラオケなどで「歌って楽しい曲」が違うように、日本のオタクたちは単に映像作品としてクオリティの高いアニメを評価するだけではなく、二次創作の素材として優れた作品を評価する文化を数十年かけて育てている。
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