アニメーション監督の山本寛さんによる、アニメの深奥にある「意志」を浮き彫りにする連載の第20回。
今回は、現在公開延期中の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』で再び注目が集まる『逆襲のシャア』をめぐって。膨大な「ガンダム」シリーズの中でも、特に富野由悠季監督の作家性が鮮明に顕れた映画である本作について、「モダニズム」という観点から山本さんが切り込みます。
山本寛 アニメを愛するためのいくつかの方法
第20回 「モダニズム」とは何か -『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
この連載を通じて僕が論じてきたアニメの「モダニズム」と「ポストモダン」であるが、まだいまいちピンと来ていない方もいるかもしれない。
そんな中、やはり毎度毎度お世話になっている岡田斗司夫氏が、非常に解りやすい解説をしてくれた。
「『えんとつ町のプペル』を見ない理由、話します / OTAKING talks about "POUPELLE OF CHIMNEY TOWN"」
この配信において彼は「思想性」について語っている。
「思想性」とは即ち「葛藤」である、と。
自分の考えに反するものに対しいかに真摯に向き合い、悩むかであると。
これを哲学的には「弁証法」と言う。
「テーゼ(正)=アンチテーゼ(反)=ジンテーゼ(合)」という仕組みの「葛藤(から止揚に至る)」こそが哲学なのだ、と提唱者のヘーゲルは説いた。
僕の言う「モダニズム」とは、まさにこのような「思想性」を有するものであると定義する。
それは必ずしも難しい概念やメッセージを必要としない。
いろいろな価値観や思想がぶつかり合い、その中で「真実とは?」と思惟する、その運動そのものこそが「モダニズム」なのだ。
さて、今回はその「モダニズム」を考えるに相応しい作品について考えてみよう。
ちょうどこの文章の執筆時、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開を控え「ガンダム」界隈が盛り上がっているので、せっかくなので『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)を取り上げることにする。
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