お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、高佐さんが子供の頃から大好きという「スーパーマーケット」について語ります。スーパーで流れてくる絶妙なBGMについて、思いを馳せてみましょう。
高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ
第11回 戦略的低クオリティ
僕はスーパーが好きだ。
スーパースター、スーパーヒーロー、スーパーサイヤ人……。
スーパーと名の付くものには何か特別な存在感があるが、ここでいうスーパーとは、言わずもがなスーパーマーケットのことだ。
なんの特別感もない、むしろ身近な存在として我々庶民のそばに寄り添ってくれるスーパーマーケット。これを読んでる人でスーパーに行ったことのない人はいないだろう。
子供の頃から大人になった今の今まで、ほぼ毎日お世話になっている。
僕は北海道函館市という北海道の中では3番目に大きい街の出身ではあるが、市の中でもだいぶ田舎の町に住んでいたので、子供の頃の遊び場としては、スーパーの中に設置してあるこじんまりとしたゲームセンターくらいしか無かった。
母親とスーパーに行くということになると、ちょっとウキウキした気持ちで車に乗り向かった思い出がある。
カートにレジカゴを嵌め、青果コーナー・鮮魚コーナー・精肉コーナー・惣菜コーナー・お菓子コーナーを母親と一緒にゆっくり見て回る。
「白菜が昨日と比べてこんなに安くなっている!」
「おっとっととハイレモンとチョコフレークでちょうど500円以内に収まるぞ!」
「カレーのルーってこんなに種類があるのか」
飽きたらカートの運転を母親に代わってもらい、僕はゲームセンターへと足を運び、じゃんけんゲームをしたりする。
「ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ! ズコー!」
そして和菓子コーナーに向かい、棚からどら焼きを一つ手に取り、母親が運転しているカートを探しに向かう。探すコツは、スーパーの中央を横切る通りを歩きながら、縦に並んだ棚を左右見ながら進んでいくことだ。あまり歩みが早すぎると、ちょうど棚の死角に隠れてしまっている母親を見落としてしまう。
そうやって母親のカートに合流し、母親が献立を考えている隙を突いて、レジカゴの下の方にどら焼きをそっと忍ばせる。レジでお会計している時に、どら焼きがひょっこり顔を出すけど、もう時すでに遅し。どら焼きは店員にバーコードを読み取られ、受け取りのレジカゴへと入れられる。母親は、「あんた、いつの間に入れたの?」という顔をしている。
そんな微かなスリルを楽しめるのもスーパーの醍醐味だ。
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