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(ほぼ)毎週金曜日は、ゲームAI開発者の三宅陽一郎さんが日本的想像力に基づく新しい人工知能のあり方を展望した人気連載『オートマトン・フィロソフィア──人工知能が「生命」になるとき』を改訂・リニューアル配信しています。今朝は第七章「街、都市、スマートシティ」をお届けします。
今回は、人工知能による総合的な都市管理を実現するスマートシティ構想をテーマに、ビデオゲームやSF作品を手がかりにしながら、人間と都市が結ぶ新しい関係について掘り下げます。

 今、人工知能を応用する最も射程の長い取り組みとして、街全体を人工知能で覆うとする試みがあります。試みというより、ビジネスとしてそれが最も大規模な応用分野になります。日本は比較的、安全な国なので気が付きませんが、世界には治安の悪い国が多いですから、人工知能によって街そのものを人工知能化し、治安を良くしサービスを徹底しようという機運が高まっているのです。
 人工知能があらゆる場所に監視カメラ、センサーを設置することで、リアルタイムに街全体が監視され、街の治安が良くなります。街の治安が良くなれば企業が集まり、人も集まり、経済圏が良くなっていきます。現在の、特にディープラーニングなどを基本とする監視カメラに顔認証を入れれば、どの人がどの場所でどのような行動をしているかまで追跡することができます。2015年以降は、ベンチャーを含め監視カメラ業界の発展は大きな勢いになっています。監視カメラは街全体の人工知能の眼となり得るものです。それは可視光のみならず赤外線、超音波、レーザーなど人間の視覚を超えた波長の光さえ持ち得ます。質的にも量的にも、人間の認識を超えた把握が可能となります。まず家がスマートハウス(知能を持った家)に、マンションが、ビルが、そしてデパートが、そして街全体が、人工知能を搭載した知的存在となるのです。
 もちろんプライバシーの問題もあります。その保護の原則を確立して強化していくことは、並行して導入していくべき課題となります。しかし、最終的にはやはり人が求めるもので「安全」と「健康」に勝るものはありません。監視カメラとその自動解析技術が発展し、世の中に浸透していく方向に進んでいく流れは、もはや避けられないのではないかと考えています。
 進化した監視カメラのように、すべてのIoT(Internet of Things)デバイスは街の状況を収集するデバイスとして活躍し、その情報を解析し認識へと変換することで、人工知能は街の状態をリアルタイムに把捉することができます。さらに、そこから市民の安全を守るためにドローンやロボット、人に状態が伝達され、彼らがその場に赴くなどの行動を起こすことで、街全体を統御する人工知能は、インフラ技術として機能するわけです。行動を指令するのは街全体を制御する人工知能ですが、物理的な実行部隊はロボットやドローン、スクリーン上ではアバターとなるでしょう。
 また、街の人の流れや事故なども即座に認識して、ドローンやロボット、人に通知し、事件が拡大する前に抑えることもできます。しかし、このような人工知能システムはかなり大規模な開発が可能な会社しかできません。そこで、このような「インフラとしての人工知能」の汎用システムを開発して発展させれば、世界中の街や都市に導入することができるようになり、これまでにない巨大な市場が立ち上がります。ガスや電気を融通するといった機能に加えて、このような情報の網の上に人工知能を組み上げるビジョンを「スマートシティ」と言います。
 本章では、「人工知能化する都市」を主題として、都市と人工知能の関係について探求していきます。

(1)西洋の街、東洋の街


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