(ほぼ)毎週金曜日は、ゲームAI開発者の三宅陽一郎さんが日本的想像力に基づく新しい人工知能のあり方を展望した人気連載『オートマトン・フィロソフィア──人工知能が「生命」になるとき』を改訂・リニューアル配信しています。今朝は第三章「オープンワールドと汎用人工知能(2)」をお届けします。
一般的な人工知能は「問題に立脚して」作られていますが、三宅さんは問題に立脚しない、汎用人工知能に人類の「他者」となる可能性を見出します。
(2)人工知能の持つ虚無
問題特化型人工知能
「人工知能は稠密に作られる」というのは、人工知能は人間が設定した目標に達成するように、最適に作られていくことを意味しています。問題特化型の人工知能はその問題に向かって、というよりも、その問題を土台として築かれる人工知能です。つまり、問題特化型の人工知能は、問題を対象として構築されるというよりは、問題を立脚点として構築される、といった方が正しいでしょう(図3.15)。
たとえば、工場のベルトコンベアでネジを締めるロボットを考えてみましょう。ロボットは目の前に来る部品のネジを締めるために、画像でネジを入れる位置を確認してアームでネジを締めるとします。このロボットアームはベルトコンベアで部品が流れてくる、という前提の上に固定されて設置されているわけですので、なぜ部品がそこに来るか、なぜネジを締めなければならないか、という問題は、人工知能が考える問題の外にあります。このロボットアームは問題の上で初めて成立する人工知能になっているのです。ベルトコンベアから外されればこのロボットは何者でもなくなってしまうのです。
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