“メジャー”とか“エリート”と位置付けられている人たちとは一線を画し、「何か道を外れたことがしたい」という残念な情熱を抱える坂本崇博さんと、変に意気投合したという文具事務用品のメジャー、コクヨ。この奇妙な握手によって、坂本さんの働き方改革人生は加速期に入ります。
今回は、コクヨ社員になってからの新人研修時代の「My WX(私の働き方改革)」を振り返ります。苦手なコミュニケーションを乗り越えるために編み出した、「コミュニケーション・ポートフォリオ」の工夫とは?
明日夜に開催のイベント「遅いインターネット会議」に坂本崇博さんがご出演されます!
●5/12(火)坂本崇博×新野俊幸「ワークスタイルから社会を変える」
気がつけば「働き方改革」という言葉がブームになって随分長い時間が経ちました。しかしこの国のワークスタイルは、企業社会は、本当に変わったのでしょうか。「働き方」「やめ方」のプロを交えて、サラリーマンの働き方から社会を変えるための作戦会議を行います。
詳細・お申し込みはこちらまで!
坂本崇博 (意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革
第6回 これが私の働き方改革道(後編:Aパート)
コクヨにおける私の働き方改革 新人研修編
2001年4月。入社式も終わり、いよいよ「変」を求めるコクヨの一員として、私なりの「変」に挑戦できるとワクテカしながら人生初の会社員生活が始まりました。そして私はいきなり「壁」にぶち当たります。正確にいうと、自分で自分の中に勝手に「壁」を作り上げていたことに気づき、愕然としたのです。
そのきっかけは、新人社員研修でした。新人社員というのは、たちまちなんらかの仕事に就くわけではなく、当たり前といえば当たり前なのですが、コクヨの一員として会社の歴史、理念、事業内容を学び、見学し、体験することが最初の「仕事」として提示されることになります。
「国の誉れになる」というコクヨの社名の由来(ちなみにここでの国は、創業者の出身地である富山県を指します)や、創業から100年の歴史における経営陣・社員たちの努力と創意工夫の成果、さらには現在の様々な事業部の事業内容や、工場・物流センターなどの仕事内容を知り、実際に体験していくことで、次第に「コクヨ社員」になっていくというプロセスが用意されていました。
講師や先輩社員たちはとても真摯かつ暖かく、コクヨとはどういうものか、そしてコクヨの事業や仕事内容はどういうものかについて、忙しい時間を割いて丁寧にレクチャーしていただきました。また、社会人としてのマナー講座や法令遵守についても学びながら、私は社会人として、そしてコクヨの一員として、先輩たちのように早く一人前になって仕事がしたいと願うようになっていきました。
そしてある朝、そんな「意識高くコクヨ社員になろうとしている自分」にガツンと石を投げつけられるような事件が起こりました。アメリカ同時多発テロです。
2001年9月11日、朝TVをつけると、夏の抜けるような青空の中にそびえ立つ資本主義の栄華の象徴であるWTCビルに、人類の技術革新の成果を詰め込んだ旅客機が突撃し炎上しながら崩壊していく様子が何度も流されていました。それはまるで過去私が画面の中で観てきたアニメのような、非日常の光景でした。
私はその光景を見ながら、当たり前に続くと思っていた日常が急に失われることがあることを改めて思い知らされました。そして同時に、自分自身がコクヨ社員としての「日常という壁(固定概念・枠)」をどんどん築いていることに気づいたのです。
そして、このことに気づいたことで、新人研修開始当初に研修担当である人事部門の方に告げられたメッセージも合わせて思い出すことができました。それは、
「これからコクヨのいろいろな部署で様々な体験・勉強をしてもらいます。そして、最後には皆さんで『コクヨの歩き方』という本を書いてください。それは、コクヨがこれまでどういった仕事をしているかを見聞き・体験した皆さんがこれからどんな道を歩みたいかの宣言書です。」
というミッション提示でした。あまりに意識が高いメッセージなので、ちょっと引いてしまってすっかり忘れてしまっていました。
普通、一般的な企業においては新人研修で「やる事」といえば、会社の仕事を学び習得し、先輩たちと同じレベルの仕事ができる前向きな社員を育てることではないでしょうか。私自身勝手にそうした固定概念がありました。しかしながら、コクヨの研修担当から提示された「やる事」は実は違っていたのです。
それなのに、日々流される中で、いつの間にか普通の新人として研修を受けることが自然になり、本来のミッションを忘れて、「これまでのコクヨ社員(日常)」となろうと勝手に枠を決め、壁の中に籠もろうとしていたのでした。
それに気づいた私は、自分の仕事、つまり「新人研修」におけるやる事・やり方・やる力を大きく転換していきました。これまでのコクヨの事業・仕事にはどんな課題があり、どんな変化のチャンスがあるのかを見つけようとし始めたのです。
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