お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載エッセイの第3回。日頃から物持ちが良すぎるという高佐さん。長年クローゼットに保管されたままになっていた服をまとめて処分しようと、衣服の買取店を訪れますが……?
高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ
第3回 「ニーズが無い」という言葉の恐怖
僕は物持ちがいい方だ。
スマホは最低6年は使い続けるし、靴も底に穴が空くまで履き続ける。フライパンに至っては今年で13年目に突入したので、テフロンが全て剝がれ落ちてしまいめちゃくちゃ使いづらいのだが、テフロンの代わりに愛着が表面にコーティングされてしまっているので、捨てるに捨てられない。
そんな中でも溜まっていくのが服だ。自分で買った服以外に、先輩からもらった服、プレゼントで頂いた服など、一度着ると愛着が湧いてしまい、どんどん溜まっていく一方だ。もうクローゼットはパンパンである。
思い切って処分することにした。いつか着るだろうと保管していた服も処分しようと決めた。その服は余裕で5年、10年着ていなかったりする。
有名ブランドの服をまとめて20点。ちゃんと状態のいいものだけを選出した。汗ジミのあるものや、ボタンが外れ糸もほつれてしまっているのものは、雑巾として第二の人生を歩ませることにした。
渋谷の有名ブランド買取店に持っていくことに決め、行く前にどれくらいの値段になるのかを、自分でざっと計算してみた。
以下は僕にとってのご都合計算。20点合計の、買った時の値段が合計で25万円。一応聞いたことのあるブランド。古着の買取の相場など全く知らないが、おそらく1割の値が付く。なので買取額は2万5千円! しかし一度も着ていない、まだタグの付いた服もあることを考慮すると、もう少し値が上がる。ズバリ3万5千円だ! 3万5千円を超えたら今日はすき焼きにしようと、昭和の主婦みたいな考えになり、大きめの黒いナイロンカバンに服を詰め、いざ出発した。アウターも入っているのでまあまあな重さだ。カバンの紐が右肩にギュギュッと食い込む。しかしそんなことは気にならない。なぜなら今日はすき焼きだからだ。
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