今朝のPLANETSアーカイブスは、人と建物の関係を結び直す“建物のプロデュース業”=不動産プランナーとして、京都を拠点に活動する岸本千佳さんのインタビューの後編です。 かつて京都に住んでいた宇野常寛とともに、東京と京都、地方における「住むこと」への意識の課題、そして多様なグラデーションの町・京都の可能性について語り尽くす、これからの「住」を考える対談です。(構成:友光だんご)※本記事の前編はこちら
※本記事は2017年10月1日に配信された記事の再配信です。
京都は町が拡大している
▲京都駅
宇野 後編では、岸本さんが拠点を置く「京都」についてお話を伺っていきます。東京で不動産の会社に勤めたあと、独立する土地として京都を選んだのはなぜだったんでしょう?
岸本 京都という町については、他の都市とは違うという印象があるんです。東京に比べて建物が圧倒的に魅力的ですし、それを掘り起こしているプレーヤーも少ない。そこに可能性を感じたのが理由ですね。
宇野 僕も京都に7年間ほど住んでいましたが、京都の人々の気質については、難しい人が多いなという印象があります。
岸本 確かに悪い噂が広まりやすい面はあるかもしれませんね。でも逆に、いい評判も数珠繋ぎで広がるので、きちんとした仕事は評価されやすい土地柄だと思います。
それに京都は、東京とは違った意味で、京都は世界中から一目置かれている都市なんです。でも、そのブランド力に、生粋の京都人はあまり気付いていません。京都を客観的に見ることのできる人の方が価値を付与しやすいので、その点において、私にもできることがあるのかな、と思っています。
宇野 岸本さんが京都に戻られたのはいつ頃ですか?
岸本 2014年の11月でしたね。
宇野 今起きている観光バブルが始まる直前ですね。京都が大きく変わり始めたタイミングで、不動産プランナーという新しい仕事を始めたんですね。
岸本 今思うと凄いタイミングです。あの頃からの京都の変わりようは凄いですから。以前は市バスで外国人を見ることなんてありませんでした。よく地元の人たちは適応できているなと感じます。
宇野 僕が京都に住んでいたのは1999〜2006年頃ですが、当時はこんなに海外からの観光客が町を歩いていませんでしたからね。ここ4、5年、京都精華大学で教えている関係で、頻繁に京都へ来ているんですが、「京都も変わったな」と感じながら、変な居心地の良さもあるんです。大人の男が昼間からラフな格好で歩いていても、大陸からの観光客だと思ってもらえる(笑)。いい意味で、放っておいてくれる町になりました。
岸本 仕事柄、町中でよく写真を撮るんですが、そういう行為も以前と比べて許されるようになりましたね。私が住んでいるのは西陣で、観光地エリアではなく住むための町なのですが、今では路地にたくさんの観光客が来ますし、宿のあるエリアも、どんどん外へ広がっているんです。
宇野 京都は今、町が拡大しているんですね。
岸本 この2、3年で確実に変わっています。その一方で、誰も京都のことをきちんと見ていないとも感じるんです。観光地としてのミーハーな見方ばかりで、生活の場所としての視点がない。
宇野 たとえば、僕は桂や久世橋のあたりが結構好きだったりする。京都の西側は東側と比べてるとファミレスやブックオフが点在する普通の住宅地なのだけど、その中に突然、1000年以上の歴史を持つ寺があったりする。あのハイブリット感が魅力だと思うんですよね。日常空間の中に、非日常が入り込んでいるような面白さがある。
岸本さんの著書『もし京都が東京だったらマップ』は、不動産業の経歴がある人ならではの本だと思いました。町というのは総論で語られがちなんだけど、この本では固有の建物にアプローチし、一駅一駅、建物一つ一つの個性に向き合っている。
▲出町柳
岸本 ひとつのイメージでは括れない、モザイク状で多様性のある町が京都なんです。それがこの本で一番伝えたかったことです。
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