現役官僚の橘宏樹さんが「官報」から政府の活動を読み取る連載、『GQーーGovernment Curation』。今回のテーマは「国債」です。国家予算の約3割を占める国債ですが、近年は海外投資家の保有比率が増えています。現在の国債価格は、マイナス金利政策の影響で上昇傾向にありますが、この保有比率の変化は、景気回復後の日本経済のファンダメンタルズに、大きな変化をもたらすことになるかもしれません。
(写真出典 Alice Pasqual on Unsplash)
【新連載】橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第1回「官報」から世の中を考えてみよう/EBPMについて
そして、今更ですが、新年あけましておめでとうございます。本年もGQをよろしくお願いいたします。2017年12月が第1回で、その後拙著の刊行記念エッセイ全5回の連載を挟みつつではありますが、早いものでGQも3年目に突入です。これまでの12回を振り返ってみると、①EBPM、②水道法、③農業、④教育、⑤通商、⑥金融、⑦社会保障、⑧会計検査、⑨入国管理、⑩公務員人事、⑪SDGs、⑫防衛と、一応、各行政分野に万遍なく触れて来れた感じなのかなと思います。
また、当初は毎月の連載を目指していたのですが、昨年は業務の方が色々と詰まってしまいまして、だいたい2か月に1度くらいの投稿になってしまいました。書きたいことはたくさんあるのですが、体力、気力、時間といった条件を揃えるのがなかなか難しかったです。しかし、昨年末の人事異動で環境は改善したと思いますから、また気持ちも新たに令和の官報を解説していきたいと思います。
さて、まずは昨年11月、12月を振り返りますと、最後まで大きな出来事が目白押しでしたね。天皇即位のパレードや祝賀行事、東京オリンピックのマラソンの札幌開催決定、「桜を見る会」問題の紛糾(本当に立場上コメントが難しいです...)、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効回避、沢尻エリカ被告の覚せい剤所持、中曽根元首相の死去、ペシャワール会中村哲医師の死去、IRをめぐる収賄容疑、カルロス・ゴーン氏の逃亡などなど。海外では、アメリカとイランの緊張が高まり、両国のシビれる判断から戦争が一旦回避されたり、英下院総選挙の保守党勝利を受け今月末のEU離脱が確定したり、相変わらず激動の日々です。
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そんななか、いつものように、スポットの当たっていない重要な官報はないかなと検索しておりました。で、当初は、2019年11月の「農産物輸出促進法」の成立について取り上げようかなと、思いました。以前本稿でも取り上げたEUとのFTAとも非常に深く関連します。
橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第5回 通商 逆襲の自由貿易~日欧EPA~
EU等が求める、産地がどこかを証明したり、放射性物質の検査をクリアしていることを証明したりする「輸出証明書」を都道府県等が発行できるようにすることがポイントの一つですが、輸出証明書の発行の単位と、ブランド戦略の単位は、必ずしも同じではないのではないか、ということを論じようかと思ったのです。愛媛県産のミカンには愛媛県が、和歌山県産のミカンには和歌山県が、輸出証明書を発行するわけですが、大量注文に対応できるようにロットを確保するべく、小っちゃな産地でくくらないで「ジャパン・オレンジ」で売り出さないといけないのではないか、と。このことは以下の機会に「ミカンはワインに学ぶとよいのではないか。」という見出しで論じたことではあります。
橘宏樹「父性のユートピア」をあきらめない(『現役官僚の滞英日記』刊行記念エッセイ第三部・最終回)
しかし、年末、通常業務のなかで、とある統計の最新値を目にして、ちょっと驚いたことがありました。国債に関する、とある数値が、僕が記憶していた「大体この程度の数字だろう」という値よりも少し大きくなっていたのです。何かが直ちにどうである、というようなことは言えないのですが、なんというか、「地味にゾッとする」ものを感じたのです。とはいえ、国債という分野は、専門性も高く、議論百出で、ある種の機微にも触れるトピックですから、この感覚をお伝えするには言葉選びもなかなか慎重にしなくてはなりません。なので、GQで取り扱うのを一瞬、躊躇ったのですが、この「地味にゾっとした感触」を共有することこそがGQの本来の使命であろうとも思い直しまして、やはり今号で取り上げることにしました。折しも1月は通常国会が開催され令和2年度予算が審議されますから、GQ1月号としてもふさわしいと思われます。以下、そういう意味で、挑戦となります。
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