今日のメルマガは、草野絵美さんによる新連載の第1回目をお届けします。音楽からファシリテーションまで、多方面に活躍する草野さんが、アーティストとしての活動を本格化。80年代のSF的な想像力と10年代に実現したテクノロジーとのギャップから、現代という時代を見つめなおします。
はじめまして。私の名前は、草野絵美です。コラムを書いたり、テレビCMに出演したり、TV番組の司会をしたり、作詞作曲をしたり、歌ったりと、様々な活動をしていますが、肩書きとして筆頭に掲げるのは、「アーティスト」です。”Artist” という肩書きは、英語圏で言えば美術作品を手がける芸術家という意味合いが強いですが、日本では、ミュージシャンをアーティストと呼ぶことも多くあります。ちなみに私は、どちらかというと前者の“芸術家”としてのアーティストを名乗っているつもりです。
とはいえ、私には手がけた美術作品はまだ少なく、フェスに出たりアルバムを配信している音楽活動のほうが目立っているので、このようなことを言うのは正直おこがましいとも思っています。しかし、音楽活動では、楽曲やMVやパフォーマンスなどを包括する世界観を複合芸術として生み出している感覚です。もっと言うと、宮島達男氏が著書『art in you』で説くように、アーティストを職業ではなく、生き方そのものであると捉えるほうが自然であると私は信じています。自分の内なる想いを納得をするまで形にすること、それを他者に伝えること、それは私の理想の生き方です。
80年代レトロカルチャーの「新しさ」
平成初頭に東京に生まれた私は、物心ついたころには、ギャル文化、アムラーやシノラーなどの熱狂的な流行に出会い、大人の文化に羨望を抱きながら真似をしていました。しかし、自身が青春時代を過ごす2010年代を皮切りに、圧倒的なファッションリーダーは姿を消し、無数の親しみを帯びたオンライン・インフルエンサーたちの世界線に変わっていきました。
H&M、Zara等のファストファッションが街に溢れ、ガングロギャルやロリータなど、日本特有のファッション部族たちが徐々に衰退を目の当たりにました。終いには、コレクションで模倣した粗悪品も飽きられ『ノームコア(*1)』というなんとも寂しいスタイルが普及したのも印象深い出来事でした。
そんな一連の時代を過ごしてきた私にとって、多くの人間が同じ国の、同じメディアで同じコンテンツに熱狂させられていた時代は二度と戻れないレトロであり、不思議と猛烈に惹かれるものがありました。特にYouTube上にアップロードされたバブル時代のテレビの映像は、どこかグロテスクな魅力を内包しているように私の目には映りました。まだ情報よりも物への執着に狂喜乱舞している情景が、奇妙にもこれから始まる近未来のようにも錯覚し、とにかく目が離せなかったのを覚えています。
このような偏愛により、大学在学中の2013年に音楽ユニット『Satellite Young』を結成しました。曲調・ビジュアルは近未来風に解釈された80年代アイドルでありながらも、歌詞で扱うテーマは80年代には存在することのなかった「オンライン交際」や「人工知能」「ネット上の仮想記憶」など現代におけるテクノロジーと人間の関係性です。
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