今朝のPLANETSアーカイブスは、宇野常寛による『ガンダムAGE』論です。ヒットメーカー日野晃博をストーリー原案に据えた本作は、なぜ失敗に終わったのか。架空年代記を通して成長/老いを描こうとする試みが空転した経緯を、『イナズマイレブン』シリーズなどを参照しながら読み解きます。(初出:「ダ・ヴィンチ」2013年7月号)
※この記事は2013年12月20日に配信した記事の再配信です
▲『機動戦士ガンダムAGE』
フリット・アスノは高名なエンジニアの家系──アスノ家──の長男として生まれた。幼少期からその天才を発揮し、周囲を驚愕させていたというフリットだが、その運命はある事件で一変する。彼が生まれた当時、人類は正体不明の外敵の脅威に晒されつつあった。そしてフリットが七歳を迎えたある日、生まれ育ったスペースコロニーが敵の襲撃を受け、彼は最愛の母親を失う。既に父親を亡くしていたフリットは天涯孤独の身になった。フリットは軍事技術者だった母親の意志を継ぎ、外敵に対抗し得る新兵器──ガンダムの開発を引き継ぐことを決心する。そしてフリットが14歳になった日、地球人類はようやくその姿を現した外敵──火星移民者による軍事国家ヴェイガン──との戦争状態に突入する。フリットは自ら開発したガンダムを操り、人類の救世主となるべく戦いに身を投じる。その胸に刻まれたフリットの復讐心は、戦いの中で恋人や仲間が犠牲になっていくことでさらに肥大してゆく……。
これは一昨年(2011年)から1年間放映されたテレビアニメ『機動戦士ガンダムAGE』のあらすじだ。本作は全四部構成となっており、第二部ではフリットの息子アセムを、第三部と四部ではアセムの息子(フリットの孫)キオを主人公に、約100年に及ぶ地球人類とヴェイガンとの戦争の行方を描いた大河ストーリーが展開する。
はっきり述べれば、本作は「ガンダム」シリーズ屈指の不人気作品だ。ストーリー原案に株式会社レベルファイブを率いる人気ゲーム作家・日野晃博(代表作に「レイトン教授」「イナズマイレブン」シリーズがある)を迎え、主に小学生男子を中心とした低年齢層をターゲットにしたと思われる本作は、視聴率、ソフト販売、玩具の販売とすべてにおいて苦戦が報じられた。失敗の原因はいくらでも思いつく。1年の放映期間をもってしても圧倒的に尺が足りず、詰め込み過ぎのエピソードを強引に処理する脚本は常に総集編を見ているかのような印象を視聴者に与えたのは間違いないし、近年のアニメとしては作画のクオリティも高いとは言えなかった。
しかし、僕が引っ掛かるのはもっと別のことだ。僕は日野晃博は現代日本を代表する作家のひとりだと考えている。日野は僕の知る限りもっとも果敢に「失われた20年」以前の少年漫画(ジャンプ)、児童漫画(コロコロコミック)のドラマツルギーを現代的なものにアップデートすることに挑戦している作家であり、そして相応の成果を上げている作家である。しかし、その日野をもってしても、「ガンダム」を扱うことはできなかったのだ。
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