香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。日本の正月にあたる春節(旧正月)を迎えた香港。周庭さんたち香港衆志は歳の市に出店し、干支にちなんだイノシシのデザインのグッズを販売することで、政党の理念のPRに努めたようです。(翻訳:伯川星矢)
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第24回 香港の春節と日本の大晦日
春節おめでとうございます!
日本の新年と同じように、春節は香港最大の祝日でもあります。
わたしたちはいつも通り、香港最大の歳の市ーーヴィクトリアパーク歳の市で出店をし、イノシシ年のグッズ販売しながら、わたしたちへの応援を呼びかけました。
今年は、布バック、ハンカチ、Tシャツ、デコテープと、わたしたちの理念がプリントされている旗を販売し、とても良い売り上でした。
特に布バックは、今年の干支であるイノシシ年に合わせて、香港人にもっと社会や時事に関心を持ってもらいたいと思って作ったもので、「今年はもう“香港ブタ”にならない」をテーマとしています(「香港ブタ」とは最近流行り始めた単語で、社会に無関心、流されるままの香港人を意味しています)。
わたしたちは毎年、社会に関するさまざまなテーマでグッズをデザインし販売しています。例えば今年のTシャツでは、泣いているイルカのイラストを印刷し、政府の埋め立て計画が海の生態を破壊していることと、香港の海域周辺に住むシナウスイロイルカが帰る場所を失ったことを表しています。
そして、デコテープには、わたしたちが幼い頃よく歌っていた「ゴジラ版国歌」(※注)の歌詞が印刷されています。政府がこれから進めようとしている「国歌法」では、国歌の歌詞の改変が違法となりますが、それが一般市民の表現と創作の自由を侵害していることを表しています。
「国歌法」はすでに立法会に提出され、審議中となっています。審議の初日(2019年1月末)に、わたしたち香港衆志は政府本庁前の「公民広場」に突入し、フラッグポールに「歌わない自由」と書かれた横断幕を掛け、国歌法によって表現の自由が制限されることに対して抗議しました。
政府が立法会に提出した資料によれば、侮辱行為と国歌の不当利用行為は「国歌法」違反となり、最高3年の禁固刑が提案されています。
また、故意による歌詞や楽譜の改変や公開、変調や軽蔑的な演奏・歌唱なども「侮辱行為」と見なされます。ここでいわれている「故意」とはなんなのか、「軽蔑」とはなんなのかは一切定義がなく、グレーゾーンとなっているため、政権側の解釈次第で、反対する団体や市民を提訴できます。
すなわち、国歌法の成立によって、政府は政治的訴追を任意に行うことができるようになるのです。そのため香港の民主派は全力で国歌法の成立に反対しています。
新年といえば、今年の1月1日、わたしは東京で過ごしていました。東京大学や立教大学で講演する機会もあり、日本の皆さんに香港の最新状況をご紹介させていただきました。
議員選出馬資格の剥奪後、初の来日にもかかわらず、東京大学での講演は満員で、多くの人々が香港の近況に関心を抱いていることに感動しました。
そして12月31日、わたしは多くの日本人と同じように紅白歌合戦を見ながら、年越しそばを口にしていました。
今年の紅白で最も印象に残ったのは、乃木坂46の西野七瀬の最後の出演です。
「なぁちゃん推し」としては、本当に泣きそうでした。
でも、なぁちゃんが乃木坂を卒業しても、これからずっと応援し続けます!(笑)
(続く)
※注:中華人民共和国の国家「義勇軍進行曲」の替え歌。戯れ歌のため歌詞に意味はない。香港の立法会では2019年1月23日より「義勇軍行進曲」を侮辱する行為を禁じる国歌条例案(違反した場合、最大3年の禁錮刑)の審議が行われている。歌詞の和訳は以下の通り。
起來 我帶你環遊世界
(立ち上がれ!世界一周旅行に連れて行きましょう)
我騎住歌斯拉 呀媽話我真係變態
(私はゴジラに乗りながら、母親に変態だと言われた)
非洲牛肉好食 因為係紅色
(アフリカの牛肉は美味しい、なぜなら赤いから)
起來! 起來! 起來!!
(立ち上がれ!立ち上がれ!立ち上がれ!)
成個世界輸晒 老婆仔女都走埋
(全てを巻き上げられ、嫁も子供にも逃げられた)
起來!
(立ち上がれ!)
老婆仔女都走埋 還債! 還債! 還我債!!
(嫁も子供にも逃げられた。金を返せ!金を返せ!金を返せ!)
(翻訳:伯川星矢)
(続く)
▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。
『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。
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