香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。アメリカの旅の途中に22歳の誕生日を迎えた周庭さん。前回に引き続いて、ランタオ島の埋め立て計画の続報をお届けします。政府と利権団体の緊密な関係によって、開発計画は無責任かつ杜撰に拡張され、ここでも香港議会はあからさまに軽視されているようです。(翻訳:伯川星矢)
【告知】
周庭さんが〈HANGOUT PLUS〉にやってきます。
周庭×宇野常寛 「香港で民主化運動している女子大生は今何を考えているか」
1月7日(月)21:00より放送予定。ぜひご視聴ください!
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第23回 37時間の誕生日と巨大化する人工島
わたし、22歳になりました!
約一週間前の12月3日は、わたしの22歳の誕生日です!
正直、わたしはまだ自分が1歳老いた事実を受け止められていません(苦笑)。ついこの間まで10代だったのに……。そういえば18歳の誕生日は、雨傘運動の占拠区で過ごしていたし……あれからもう4年も経つのだと考えると、本当に時の速さには驚くばかりです。
今年、わたしは37時間に渡る誕生日を過ごしました。
なぜならその日はネイサン・ローと一緒にアメリカのワシントンに向かい、パスポートを没収されたジョシュアの代わりにLantos Foundationからの人権賞を受賞しに行きました。ワシントンと香港は13時間の時差があり、祝う時間もありませんでしたが、過去21回の誕生日よりも長く過ごせたので悪くない「プレゼント」だと思っています。
大学のテストもあり、アメリカには4日しか滞在できませんでした。また、過密なスケジュールに加え、激しい時差ボケで、ほとんど休むことすらできないありさまでした。
でも、アメリカの上院・下院の議員にお会いでき、「香港人権および民主法案(Hong Kong Human Rights and Deomcracy Act)」を支持してもらえるように呼びかけができたので、少し疲れたけれども、価値のある訪米だったと思います。
前回、香港政府より、ランタオ島(大嶼山)に1700ヘクタールの人工島を建設する計画が発表されたことをお話ししました。あまり日本では報道されていなかった様なので、今回はそれについてもう少し詳しくお話ししようかと思います。
実は数年前、香港政府にはランタオ島の開発計画があり、当時の資料では埋め立て面積が1000ヘクタールの予定でした。すなわち、当時市民や社会による意見や討論(賛成・反対問わず)も、この1000ヘクタールに基づいていることとなります。
しかし、今年10月の施政方針演説では行政長官の林鄭月娥より全く違った計画が発表されました。1700ヘクタールの埋め立て計画、そして施工場所も本来と異なる内容でした。
この埋め立て面積の増加には、多くの市民の質疑や批判を招き、香港政府は親中のシンクタンクの報告を丸呑みしたのではないかと懸念の声も上がっています。
そのシンクタンクは「団結香港基金」という名前で、香港の初代行政長官である董建華を筆頭に結成され、理事会は元官僚をはじめとする「政府の身内」で固められています。
このシンクタンクは、不動産財団や金融財団の支持と支援を受けているので、この「金の匂いがする」人工島計画にはもちろん賛成です。
この組織は今年の8月、施政方針演説の前に人工島に関する研究報告を発表し、開発規模を2200ヘクタールまで増やす提案をしています。そして、林鄭月娥の最終的な演説では、開発面積は1000ヘクタールから1700ヘクタールへと変更され、政府の新法案とシンクタンクの報告結果を見比べると類似している部分を多々ありました。ここまで見ると、政府がシンクタンクがもたらした「天からのお告げ」を「最大限、参考にした」と感じざるをえないでしょう。
埋め立て面積がいきなり7割も増えたこと自体、政府が民意・立法会を尊重していないことの現れです。過去数年の公開されている資料では、政府の見解と立法会での討論は1000ヘクタールの開発となっています。政府は事情聴取も、理にかなった説明もなく勝手に面積を増やす計画を発表したのです。さらに、政府が委任した土地開発調査委員会の首席も、1700ヘクタールに変更された計画を知らなかったらしく、政府側がいかに不条理な行いをしているかが察せられます。
この人工島計画に関しては2019年度の立法会で討論される予定で、親中派が立法会の過半数占めている現状では、彼らはあらゆる手を尽くして政府を擁護し、市民の猛反対を受けながらも賛成票を入れるでしょう。
これは私たち民主派にとっても辛い戦いになると思います。来年、皆さんに続報を報告させて頂きます、
では、2019年に、またお会いましょう!
(続く)
▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。
『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。
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