現役官僚の橘宏樹さんが「官報」から政府の活動を読み取る連載、『GQーーGovernment Curation』。今回のテーマは「教育」です。6月15日に閣議決定された「第3期教育振興基本計画」(2018-2022年) を、第1期(2008-2012年 )、第2期(2013-2017年)と比較しながら、この10年の間に国が掲げる教育のビジョンが、どのように変化したかについて検討します。
▲教育。政策にできること、できないこと。
こんにちは。橘宏樹です。国家公務員をしております。このGovernment Curation(略してGQ)は、霞が関で働く国民のひとりとして、国家経営上本当は重要なはずなのに、マスメディアやネットでは埋もれがちな情報を「官報」から選んで取り上げていくという連載です。どんな省益も特定利益にも与さず、また玄人っぽくニッチな話を取り上げるわけでもなく、主権者である僕たちの間で一緒に考えたいことやその理由を、ピンポイントで指摘するという姿勢で書いて参ります。より詳しい連載のポリシーについては、第一回にしたためさせていただきました。
【新連載】橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第1回「官報」から世の中を考えてみよう/EBPMについて2018年6月のマスコミでの話題は、やはりワールドカップ開催ですよね。森友・家計問題も少し影を潜めたように見えます。西野ジャパンの大健闘や団結力に僕は勇気をもらいました。実はサッカー見るのは結構好きなので、色々と書きたくなってきてしまうのですが、誘惑を抑えます…。政治・行政関係では、会期の延長された国会で、働き方改革法案、TPP関連法案と、話題の法律が立て続けに可決されました。ちなみに、昨日(7月4日)から、霞が関では「官庁訪問」と呼ばれる、国家公務員総合職試験の合格者による就職活動期間が始まりました。毎日1官庁ずつ選んで訪問し、人事担当者や原課の職員と数回の面接を行います。訪問者も官庁側も、お互いに選んだり選ばれたりの4週間。ライバル?仲間?との待合室での待ち時間が異常に長いことが特徴です。この部屋に集められているのは1軍なのか?2軍なのか?と評価に気を揉んだりします。心身ともにかなりしんどいです。僕も面接官を務めます。イマドキの若者がどんな志望動機を語ってくれるのでしょうか。また僕の方でも、いい訪問者にはうちの役所への志望を固めてもらえるよう魅了せねばならず、真剣勝負の毎日が始まります。
さて、今回のGQのテーマは「教育」です。6月15日閣議決定「第3期教育振興基本計画(2018-2022年)」を取り上げたいと思います。閣議決定は普通官報には載らないのですが、あまり話題になっていないけれど非常に重要な行政の動きを伝えるGQの使命に照らしてうってつけかなと判断しました。「教育振興基本計画」は、今後5年間のあらゆる教育政策の根幹になります。なので、極めて重要です。ですが、一般的に存在はどのくらい知られているでしょうか。
第3期教育振興基本計画(2018-2022年)(概要)
第3期教育振興基本計画(2018-2022年)(本文)
本文は96ページあって一見長いですが、パラグラフが細切れにされていて、文体も平易で一文の長さも短く、けっこう読みやすい気がします。なので、御覧になってみてください。(ちなみに、第1期計画は48ページ、第2期計画は84ページです。)
本稿では、第3期教育振興基本計画のポイントを、ザックリと第1期、第2期と比較してみます。政府の教育政策が力点の置き方がこの15年間でどのように変わっているか(または変っていないか)を確認してみます。
ちなみに、民主党政権は2009年から2011年でした。第2期の計画内容を議論し始める期間にかかっており、政権交代前後で議論するメンバーに入れ替えがあったりはしています。ただ、それが定例の入れ替えなのか、政権の意向なのか、今、僕にはわかりません。
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