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不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。今回紹介するのは、京都の中宇治エリアを、地元民や観光客に愛される街にするためのプロジェクト。その中心となる小商い複合施設の立ち上げの鍵となるのは、一緒に街を変えていく「共犯者」を探すことでした。

中宇治エリアを変えるための五箇年計画

この連載も、早くも第3回になりました。今回は、京都は宇治の町家+建具工場のリノベーション。しかも建物単体でなく、エリアにリノベーションが波及するプロジェクトの紹介です。

私のもとに来る相談は、「○○を作ってほしい!」と用途がはっきり決まっているものより、「この空き家を何とか活用したい。こういう想いを汲み取ってほしい。」というような相談が多いです。
今回も、「若い人の実験的な出店と地域の人たちの交流拠点にしたい。うまくいけば、ここを拠点として、このエリアの空き家再生へと繋げていきたい。」そうオーナーさんから一本のメールが来たのがはじまりでした。

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▲宇治川からの風景。昔の貴族も、この風景に惚れ込んだのでしょうか。

舞台は宇治。京阪宇治駅とJR宇治駅の間、平等院に近い旧市街地の「中宇治」と呼ばれるエリア。中宇治は、古くからお商売をしている地元の方が多く、ヨソモノが入りにくいエリア。ゆえに、雰囲気のある路地や町家がひっそりと残っています。実は、私は宇治の郊外出身なのですが、サラリーマン家庭で育った私にとって、ここ中宇治は近いようで遠い存在でした。

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▲古い町並みの残る中宇治のエリア

宇治と言えば、お茶を思い浮かべる人が多いと思いますが、平等院の参道は、観光客向けのお茶関連のお店ばかり。別の商店街は、夜は閑散としています。住居が多いにも関わらず、地元の人が美味しいものをゆっくり食べられる店が無く、結果的に観光客に媚びた街となってしまっていました。

そこで、オーナーさんやまちづくりが専門の大学教授、商店街の会長さんなどで構成されるプロジェクトメンバーで何度も話し合い、今回の案件は「地元の人に長く愛される場所」であり、「大人の女性が通う場所」をつくろうとなりました。

また、依頼のメッセージにもあったように、建物単体のリノベーションではなく、このエリア全体のリノベーションの一投目という位置づけでした。そこで、まずは五箇年計画を作成し、メンバーに共有しました。宇治は宿泊施設が少なく、8割が京都市内に戻って宿泊するという統計が出ていたので、宿泊施設に活用するという案もあったのですが、「夜楽しめる場所も無いし、泊まりたいと思えるエリアになっていない」ということから、1年目は「訪れたくなる店」、2年目「通いたくなるエリア」とし、3年目にやっと「泊まりたくなる場所」を書き加えました。


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