本誌・編集長の宇野常寛に連載『観光しない京都』。今回は宇野が世界が終わる日の最後の食事にしたいというほどおいしい、京都の等持院近くの「ジャンボ」というお好み焼き屋さんの紹介です。名前の通り量が多いのが自慢ですが、その真価は味にあり。20年来の常連である宇野が写真入りで詳細にレポートします。
※前回の記事はこちら。
「地球最後の日」に食べたいお好み焼き
以前僕がよく出演していたNHKの番組に「日本のこれから(私たちのこれから)」「日本新生」という番組がありました。タイトルはころころ変わっていましたが中身は基本的に同じで、これはさまざまな社会問題を二十人程度の市民と数名の「識者」とが討論するといった番組でした。数カ月に1回、不定期に放送されていた番組だったのですがいわゆるゴールデンタイムに配置されていたので、見たことがある人も多いかもしれません。そして僕はこの番組にたぶんデーブ・スペクターさんの次くらいに多く出ていた「識者」の一人だったと思います。
社会問題を扱う討論番組と言っても、この「これから」シリーズで「これからの安全保障のあり方」とか「グローバル資本主義の暗号通貨による変化」といった大仰なテーマはあまり取り上げられることがなく、どちらかと言えば「空き家の増加」とか「団塊世代の男性はあまり野菜を取らない。そして塩分を取りすぎる。さてどうするか」といった等身大の生活から考える「社会問題」を扱うことがほとんどだったような気がします(僕が呼ばれた回がたまたま所帯じみたテーマだっただけかもしれませんが)。
なんで過去形なのかというとこの番組はずっと司会を務めていた三宅民夫アナウンサーの退職(いわゆる定年退職的なもの)で終了してしまったからです。数十人の「市民」をさばきながら議論を組み立てる技術は一種の「職人芸」のようなもので、そしてその三宅さんの技術を継承できるアナウンサーはいないというのが局の判断だと聞きました。
その三宅アナウンサーは番組の収録開始前にかならず、僕ら「識者」に対してこんな質問をしていました。「あなたが世界の終わりの日に最後に食べたいものはなんですか?」と。この番組は普段人前で喋り慣れていない「普通の人たち」がたくさん出ている番組だったので、こういう砕けた質問をして場をなごませていたのだと思います。それも緊張しきった「普通の人たち」にいきなり話させるのではなくて、僕ら「識者」に議題とはなんの関係もない好きな食べ物の話題をさせることで場を和ませて、スタジオの一体感をつくりだす効果を狙っていたのだと思います。なんだか難しいことを研究していそうな学者先生や、大臣を何回も経験したような政治家の人が学生時代によく通っていた定食屋さんや、近所のパン屋さんの話をしているのを見ると、「識者」サイドにいるはずの僕でさえなんだかぐっと彼らが「近く」なったような気がします。
前置きが長くなりました。そして僕がこのとき三宅アナウンサーに対していつも答えていたのが「京都の等持院にある『ジャンボ』というお好み焼き屋さんのお好み焼きと焼きそば」です【1】。たぶん、毎回こう答えていたので、何度目かのときは三宅さんは僕がこの店の名前を口にした途端、「ニヤリ」としていました。
▼【1】ジャンボ
京都を代表するお好み焼き屋さんにして、地域(北区と右京区の一部)のソウルフード的存在。恐るべきことに地域住民には年越しそば代わりにこの「ジャンボ」の焼きそばを食べる習慣すらある(年末が近づくと、店内に予約受付の張り紙が出る)。2階はマージャン店で、例外的に「出前」が可能らしいが麻雀をやらない宇野は試したことがない。
究極のお好み焼き、至高の焼きそば
このお店はとても有名なお店なので、知っている人も多いかもしれません。その名の通りとてもボリュームが大きいことで有名なお店で、「ジャンボ」サイズのお好み焼きまたは焼きそばを注文すると成人男性二人がそれだけでお腹いっぱいになります。つまりいわゆる「大盛り」を頼むと普通に二人前くらいのボリュームが提供されるということです。
しかし、個人的にこのお店の真価はむしろその「味」にあります。
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コメント
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(ID:79502708)
ジャンボみつとしの満足気な表情がいいですね(´∀`)