香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月11日の補欠選挙への出馬を表明していた周庭さんでしたが、その立候補は認められませんでした。政見の審査による出馬無効、香港人が立たされている困難について、周庭さんが語ります。
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第14回 認められなかった立候補
今年の3月11日、立法会の補欠選挙が行われます。本来だったら、この時期に様々な選挙活動や、公開討論、ディベートなどでわたしの予定はいっぱいになるはずでした。しかし、政権の不条理、反対意見を持つ者への心の狭さのために、わたしは立候補することができませんでした。
立候補申込書提出後の1月27日の午前、わたしは政府選挙主任から「立候補申請を認められない」という旨のメール連絡を受けました。つまり、わたしは選挙に出ることができないということです。選挙主任はメールのなかで拒否理由を十数行述べていました。そこにはわたしの所属する政治関連組織が香港衆志であることが理由として挙げられていました。香港衆志は「民主自決」を志す政党であり、「香港独立」に関しては住民投票によって民意を問うべきだと主張をしています。そのため、わたしが「心から基本法(第一条『香港特別行政区は中華人民共和国の不可分の部分である』)を遵守するとは思えない」ことを理由に、立候補を認めることができないということでした。その後、更に香港独立を主張したことある2人の立候補者が出馬不可となりました。
このように政見を審査し、政府と意見の異なる者の出馬を認めないという事案は今回が初めてではありません。2年前、現在服役中の梁天琦氏を含む香港独立を主張する若者たちが、「政治的スタンスが基本法に反している」と判断され立法会選挙に立候補することができませんでした。彼は前回の立法会補欠選挙に出馬し、6万票を超える投票を獲得した人物でした。
香港基本法に基づき、香港人には言論の自由、選挙権、被選挙権が与えられています。候補者の立候補取り消しは、明らかに公民権の侵害に当たります。政見を問わず、誰もが選挙に参加する権利を持っているはずです。香港政府が香港独立・自決を求める候補者を除外する動きに法的根拠はなく、ただ中央政府の政治的意向に従い候補者を選別しているだけです。そもそも、香港人に基本法に対して意見する権利を持っているはずです。現行政長官の林鄭月娥氏は選挙の際に、基本法107条(入るを量りて出ずるを為すことを財政原則とする)に反対すると表明しました。それでは、林鄭氏も基本法を遵守ていないことになるはずではないでしょうか? 明らかに、この動きは反対意見を潰すために決められた制限です。2年前に香港独立の声が除外され、更に今年は民主自決の声が除外された。数年後には反基本法23条(国家安全法)や、六四集会時に一党制の廃止を叫んだ人たちも除外されかねません。
ただ、今回わたしが立候補できない件については、他の候補者と少し違いがあります。選挙主任は立候補の無効を宣言する前に、まずメールで該当者に連絡し、政治的立ち位置について弁解の場を設けるのが通例です。無論、政治的意見をもとに選別を行うことは公義に反していますが、少なくとも説明する機会はあります。しかし、立候補無効が宣言される前、わたしの政見・香港衆志の政治的スタンスについて一切問い合わせられることがなく、弁解する機会も与えられませんでした。つまり、わたしの立候補が認められなかったことは、公民権の侵害がされているだけではなく、手続的正義(Procedural justice)にも反していることになります。
今回のこの出来事で、多くの国々から注目を得ることができました。様々な交際機構や政府がわたしの政治的権利が(おそらく永久に)剥奪されたことに関心の意を示していました。例えばEU、イギリス外交部、アメリカ在香港領事館、カナダ在香港領事館など。今後は日本政府にも香港人が立たされている弾圧について注意を向けていただければと思っています。
(続く)
▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。
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