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今回のPLANETSアーカイブスは、本誌編集長・宇野常寛の『京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録』をお届けします。今回は「戦後アニメーションと終末思想」をテーマにした講義の最終回です。〈現実=アイドル〉に敗北したあと、〈虚構=アニメ〉は何を描くべきなのか?
(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年6月10日の講義を再構成したものです/2017 年4月7日に配信した記事の再配信です)

【書籍情報】

本連載が『若い読者のためのサブカルチャー論講義録』 (朝日新聞出版)として書籍化することが決定しました!

〈現実=アイドル〉が〈虚構=アニメ〉を追い越した

 こういった感覚は、アニメとインターネットの関係にも言えるわけです。アニメを含めた映像は原理的に虚構の中に閉じている。作家が演出し、編集したつくりものを視聴者はただ受けとることしかできない。しかしインターネットは原理的に半分は虚構だけれども半分は現実に接続してしまっている。どれだけ作り手が虚構の世界を完璧に作り上げても、受け手という現実がそれを打ち返すことができる。ニコニコ動画にコメントがつくように、虚構がそれ自体で完結できない。双方向的なメディアであるインターネットは、原理的に虚構の中に完結できず、現実に開かれてしまう。

 震災後の日本に出現したのは、まさにこの感覚だったと思うんですね。「ここではない、どこか」、つまり完全な虚構に入り込んでしまうのではなく、現実の一部が虚構化している。日常の中に非日常が入り込んでいる、とはそういうことです。

 この2011年頃は、アニメからアイドルへと若者向けのサブカルチャーの中心がはっきりと移行していった時期に当たります。AKBに先行して2006年頃にブレイクしたPerfumeにしても元は広島のローカルアイドルで、この時期にライブアイドルブームが起こり始めていました。インターネットの登場によって、アイドルというものがテレビに依存しなくても成立するようになってきた。小さい規模であればライブの現場+インターネットで盛り上がれるわけです。AKB48は2005年に結成されたわけですが、2008年ぐらいまでは今ほどテレビに出ておらず、そうしたライブアイドルとして着実に人気を伸ばしていました。

 これ以前の80年代にもアイドルブームは起こりましたが、当時はテレビを中心とした「メディアアイドルブーム」でした。しかし21世紀のライブアイドルブームはテレビに依存せずに伸びてきて、同時にサブカルチャーの主役にも躍り出たわけです。

 ここまで話してきたことを考えれば、それは当然の流れなわけです。そもそもアニメにアイドルを持ち込んだ80年代の『マクロス』でもライブシーンが重視されていました。当時のアイドルブームというものを意識して、実際の3次元のアイドルに負けないような映像を作ろうという意識がすごく強かったんですね。『マクロス』シリーズはその後も連綿と続いていくわけですが、近作『マクロスF』(2008年放映開始)の劇場版を観ると、それがより顕著になっていることがわかると思います。

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▲劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~ [DVD] 中村悠一 (出演), 遠藤綾 (出演), 河森正治 (監督) 

 2012年には、秋元康が企画・監修した『AKB0048』というアニメが放映されました。近未来の宇宙を舞台に、伝説のアイドルグループ「AKB48」の名を継承したアイドルたちが、戦場にやってきてライブをして戦争に干渉するというストーリーです。これは本当に『マクロス』そのままの内容ですが、実際にアニメ制作は『マクロス』のスタッフがかなり関わっているんですね。

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