鷹鳥屋明さんの連載『中東で一番有名な日本人』。若年層の多い中東では、年々アニメや漫画、ゲームの人気が高まっています。5〜6万人を動員するというドバイコミコンを筆頭にイベントも乱立していますが、「中東クオリティ」のトラブルが起こることも多くあり……。延期を重ねるイベント、準備体制が「マイナス」のワークショップ、いっこうにできあがらないアニメ、それに翻弄される日本企業の様子まで、鷹鳥屋さんに詳細に語っていただきます。
前回は石油依存型の経済から脱却し、石油産業以外の産業を興そうと努力をするサウジアラビアの現状とサウジアラビアの若者が以前よりは勤勉に働きつつある近年の流れについてお話しました。今回は今後、中東各国が発展させようとしている様々な産業の中で特に注目すべき産業、日本も深く関わることになるでしょう、エンターテイメント産業にフォーカスを当てたお話をさせていただきたいと思います。それと合わせてエンターテイメント産業を活発化させて「エンタメ大国」を目指す中東各国の現状についてご紹介、さらにこの「エンタメ大国」の担い手が人口の多くを占める若年層たちを盛り上げるために行っている投資やイベントの様子についてお話させていただければと思います。
▲政府主催イベントで『まどマギ』について語る女性スピーカーと聴衆
乱立する中東アニメ・漫画イベント戦国時代
近年、中東の各国ではアニメ、漫画系のイベントが乱立しています。小規模なイベントから大規模なイベントまで行われており特にこの2〜3年の間に中東の様々なイベント会場で行われ吸収、合併、解散など動きが激しくなっております。
ある意味、エンタメ系イベントの戦国時代と申しますか、激しい競争が行われています。一番大きなものはドバイコミコンで3日間に5〜6万人近くの来場者数を誇ります。この後の表以外にも水面下で動いているイベントなども多数存在しており、11月のコミコン・アラビアや12月の日本村イベントなど小規模、中規模のものは除いて大規模なものをピックアップしてみました。
▲乱立する中東各地のアニメ、漫画イベントの一例(10月以降の内容は仮予定)
現状ではアラブ首長国連邦がその利便性と会場の融通性、展示物、販売物の規制の緩さ(展示物や販売物の肌の露出の問題など)によりリードをしていますが、皆ドバイコミコンに対抗してより良い集客のためにクウェートやサウジアラビア、カタール、アブダビでは有名なアーティストを呼ぶべく、招致合戦を活発化させております。ただ同時にその裏で、例えばこれは某北アフリカのイベントなのですが、肌の露出が多いコスプレイベントを反イスラム的と考えるイスラム過激派がイベントを中止させるため主催者の一人を拉致する、などという事件が起きています。主催者は後ほど無事解放されました。今までの保守的な文化と開放的な文化とのせめぎ合いのトラブルもそこそこ聞きますが、やはり中東各国の多数派を占めるのは若年層であり、この層はゲームやアニメに対して親和性が高いため徐々に受け入れられており、年々この種の規制が緩くなっているという印象を受けます。戒律などで女性の肌の露出が厳しいサウジアラビアでも去年のサウジコミコンではコスプレゾーンを男女それぞれのゾーンを完全に区切ることでこれらの問題に対処しています。
▲中東一の来場者数を誇るドバイコミコン会場(DWTC)
▲アブダビ開催のアニメイベントの広告に集まる観客
▲ドーハで日本のアイドルに笑顔のカタール人©「みちのく仙台ORI☆姫隊」
▲クウェートのアニメイベント内のコスプレ大会の様子
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