鷹鳥屋明さんの連載『中東で一番有名な日本人』、今回のテーマは日本人にはあまり馴染みのない、湾岸アラブ諸国の民族衣装です。個人でのアラブの民族衣装の保有数は日本一、現地でも日本国内でも民族衣装を着こなしている鷹鳥屋さんが、各国の衣装の違いや着用法について徹底的に解説します!
服装による湾岸アラブの見分け方
第2回でお伝えしたように、最近の湾岸アラブ間では外交状況の変化によりそれぞれの国民性が強調されるようになってきました。その時代の中で湾岸アラブの装いの差異に対して見極めをつけることが少々重要になってきたと言えます。
最新のニュースではサウジアラビアの女性がミニスカートで宗教的に厳しいと言われる地域を歩き警察に逮捕される、という話が出てきております。女性の自由について、という点では議論が多くありますが、ミニスカート以前に現地の方々がどういう服装をしているのか、という点を知ることは中東に皆様が出向く際にお役に立つと思います。
日本と他の東アジアの民族衣装のまだ見分けがつきやすいですが、アラブ諸国の民族衣装の差異はなかなかつきにくいかもしれません。ですが昨今外交上のトラブルが多い湾岸アラブ諸国の中でサウジアラビアの人に向かってカタール人か、と聞いたり、アラブ首長国連邦(以下、UAE)人にサウジアラビア人か、と聞いたりするのは相手の第一印象に大きく影響することになります。
多くの人は中東の衣装、といえば真っ白な衣装に頭に黒い紐を巻いて、時にはサングラスをしてというイメージがほとんどだと思います。石油王ルックスなどと呼ばれていますが決して王族ばかりが着ているわけではなりません。なかなか面白いことなのですが、中東の湾岸アラブ諸国では例えばサウジアラビアやUAEやカタールなどでは身分の違いにより服装が大きく変わることはありません。デザインに関しては民族ごとの特徴はそのままで、高価な物は素材が大きく変わります。
イメージとしては国ごとに特徴的なスーツのデザインがあり、国民が皆同じワイシャツとスーツを着ていますが、廉価版と高級版では素材が大きく異なってると考えていただければと思います。
今回の推薦書:星海社コミックス『サトコとナダ』
▲ハロウィーンでよく着られている石油王コスプレ衣装
今回はこのコスプレ衣装についてではなく、本物について詳しく説明したいと思います。まずこの男性用民族衣装の名前についてですが、コスプレ衣装では「カンドゥーラ」と呼ばれていますが、これは主にUAEでの呼び方になります。
▲例外もありますが大きく分けるとこのような形になります。
男性用民族衣装はサウジアラビアやバーレーンでは「ソーブ」もしくは「トーブ」と呼びます。クウェートやオマーン、イラク等では「ディスターシャ」という名前になります。それぞれ服の特徴として、UAEの「カンドゥーラ」は襟がなく、糸を固めたボタンが3つ正面に付きます。それに対してサウジアラビアの「ソーブ」「トーブ」は襟首が中学校、高校の制服のカラーのような形になります。それに対してカタールの「ソーブ」「トーブ」は通常のワイシャツと同じような襟型のカラーが付きます。「ディスターシャ」はクウェートのタイプだとサウジアラビアの形に近いのに対して、オマーンの「ディスターシャ」はUAEの形に近いものになります。
基本的にこれらの服の色は白がほとんどですが、サウジアラビアの西岸、ジェッダなどの方では線模様や袖にデコレーションが付いたりします。UAEだとクリーム色や黒色などがあり、クウェートでもクリーム色や藍色などバリエーションがあります。この中ではUAEやオマーンが装飾も多く、一番カラフルと言えます。
▲中東の男性ファッションをまとめたイラスト ©Liz Ramos Pardo
*バーレーンはサウジアラビアと同じスタイルが多くイラストのような服はあまり着ません。
*イラスト上のサウジアラビアとクウェートの「トーブ」がそれぞれ逆になっています。サウジの「トーブ」はボタンのラインが下までおりません。胸前で止まります。
*最近はサウジもクウェートも胸にポケットが付くものが多いです。
▲UAE内での「カンドゥーラ」販売店の様子
コメント
コメントを書く