鷹鳥屋明さんの連載『中東で一番有名な日本人』の第2回となる今回は、現在話題になっている対カタールへの国交断交がテーマです。湾岸アラブを高校に例えて話題のニュースをユーモラスに解説。鷹鳥屋さんならではの視点で、現地の人の反応や今回表面化した各国の思惑をまとめます。
鷹鳥屋明「中東で一番有名な日本人」第2回 もしも湾岸アラブの国々が男子高校生だったら
今回様々なニュースで報道されている内容で皆様はご存知かもしれませんが、6月5日にサウジアラビア、UAE、バハレーン、エジプトの4カ国が相次いでカタールに対しての外交関係を断絶する、と発表しました。現在もいくつかの国とカタール間で国交断絶か外交レベルの格下げが次々と行われています。もう既に著名な先生方や知識人の方々が筆を尽くし話されているので、内容が被るような詳しい話を書くよりも、さっぱりしてわかりやすい話にして、今回の国交断絶についてお話したいと思います。
▲カタールサッカースタジアム建築予定地
*本当に遡れば、現カタール首長(元首のこと)のお父様の即位時点のゴタゴタについてから書かなければならないのですが、そこまで書くと大変長くなるのでここ最近起きたお話を“超”単純化してお話したいと思います。
とある世界にある王立湾岸アラブ高校にサウジアラビアとカタールとバーレーンとUAEがいました。彼らは同じ学校のメンバーとして仲良くつるんでいましたが、最近カタールが抗争中である他校のイランやムスリム同胞団などとこっそりと、時には堂々と遊んでいる姿が目につくことは湾岸アラブ高校の他のメンバーは許せませんでした。それにサウジアラビアやUAEはカタールが転校してきた際に前々から因縁があるので学内でトラブルがあるとお互いメンチを切っていました。
▲セガサターンを楽しむカタール人の若者 © Shams_Qamar_JP
そんな時、海の向こうの巨大なメリケン高校の番長、トランプ番長が湾岸アラブ高校までやってきました。湾岸アラブ高校メンバーたちにトランプ番長は
トランプ「俺たち仲良くやっていこうぜ、あと気に食わない相手は一緒に倒していこうぜ、ほらサウジさんに鉄パイプと釘バット。(大口の武器輸出合意)」
▲サウジアラビアを訪問するトランプ氏
といくつかの高校を名指しにして打倒宣言をしました。ですがその高校の中にはカタールが仲良くしている高校が入っていることがカタールは許せませんでした。さらにカタールは
カタール「他校の強い生徒とつるんでなにが悪い? あいつらだって悪いやつじゃないさ!それにメリケン高校の今後なんかわかったもんじゃないぜ!」
と発言したという噂が出てきました。メリケン高校と合わせて結束し他校を打倒していこう、と皆で宣言したばかりの王立湾岸アラブ高校のメンバーとしては言ってはいけない発言でした。それに対してサウジアラビアが
サウジ「全員で足並み揃えているのに何言ってるんだ? 潰れたデーツ(ナツメヤシ)みてーにしてくれんゾ・・?」
と激怒してカタールになぜそんなこと言ったのか、を問い詰めますが、カタールは
カタール「いやいや、そんなこと言ってねえよ! 俺の発言じゃない! これは何かの陰謀だ!(QNA:Qatar News Agencyに対するロシアのハッキング疑惑?)」
と必死に否定しますが、サウジアラビアは様々な証拠を突きつけると同時にカタールの言い分を信じず言い訳も聞こうとしません。(アルジャジーラチャンネルの遮断)
サウジアラビアは同じ湾岸アラブ高校のメンバーと示し合わせて
サウジ「最近カタールが他校の連中と仲良くしすぎているのはもう我慢できないわ、サウジをナメるんじゃねーゾ・・カタールゥ・・・」
と、カタールに対して今後湾岸アラブ高校のメンバーは
カタールと口もきかない(外交断交)
カタールの席にみんな行かない、来たら追い返す(国外退去)
カタールとお昼のお弁当のおかずを交換しない(貿易の停止)
カタールへの同情発言をすると掃除用具箱に閉じ込める(同情発言への禁固刑)
カタールのいつもの通学路を封鎖する(領空通過の禁止)
▲領空一覧
▲領空通過禁止後のカタール航空航路
▲人のまばらなハマド国際空港
などと湾岸アラブ高校内で徹底的に無視することにしました。さらに他の影響力が及ぶ他校にまでカタールとの関係を切るようにプレッシャーをかけていきました。カタールが態度を改め、皆に謝るまで許さないつもりです。カタールは一瞬お昼のお弁当のおかずが一部なくなる危機感に襲われました。
特に鶏肉や乳製品、飲料品などはサウジアラビアやUAEからもらっていたからです。そうすると、そんなカタールの様子を聞いた他校のイランやトルコが
イラン「おいおい、カタールかわいそうだな。安心しろよ、俺たちがいるぜ?」
トルコ「なんだよ、苦労しているな。ほら差し入れだ。俺とお前の仲じゃないか」
とカタールが湾岸アラブ高校のメンバーから回してもらえなくなったチキンやジュース、乳製品、果物をいっぱい抱え、カタールの席まで行って支援するようになりました。
▲パニック前後の写真
▲「カタール国産品を買いましょう」というカタール経済通産省の広告(©mec.gov.qa)
イラン「ほら、お肉を66トン持ってきたぜ! 安心しろよ、これから毎日100トンの果物と野菜をお前の席まで空輸してやるぜ!」
とイランはノリノリです。一瞬、これからのお弁当どうしようと心配していたカタールでしたがこの万全の支援を受けて
カタール「俺はこれからも湾岸アラブ高校内で態度を変えるつもりはないぜ!」
と宣言する、という状況になりました。
他の場所への移動は苦労しますが(航空ルートの制限)今の所カタールの台所事情は落ち着き、さてこれからどのような動きになるのか、、、
▲カタール国産を強調するPOP(© mohtakec)
と、ちょっとざっくりし過ぎているかもしれませんがこのような例で考えていただければ、なんとなく何が起きているのかわかっていただけると思います。
追記:どういう流れで届いたかわかりませんが、貿易封鎖がされているカタールに日本の「雪見だいふく」が届いたという報告がありました。この事件が契機となり灼熱のカタールで雪見ができるようになりました。
▲雪見だいふく、カタールのスーパーマーケットに陳列!
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