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福原伸治×宇野常寛
テレビはこのまま終わるのか
(HANGOUT PLUS 11月21日放送分書き起こし)
【毎週月曜日配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.11.28 vol.742
http://wakusei2nd.com

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毎週月曜日夜にニコ生で放送中の宇野常寛がナビゲーターを 務める「HANGOUT PLUS」。今回は2016年11月21日に放送された、フジテレビプロデューサーの福原伸治さんをゲストに迎えた回の一部書き起こしをお届けします。
昨今のテレビはなぜ「寒い」のか。いまだ業界内にはびこる80年代的「内輪いじり」の宿痾、業界改革を促す黒船になるはずだったインターネットの失速など、テレビにまつわる問題の本質について、徹底的に議論しました。


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▲先週の放送はこちらからご覧いただけます

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▼プロフィール
福原伸治(ふくはら・しんじ)
フジテレビジョン 報道局メディア担当局長/「ホウドウキョク」プロジェクトリーダー。
京都大学経済学部卒業後フジテレビに入社。かなり前衛的でエッジの効いた番組を多数演出。テクノロジーと番組を融合した斬新な発想は多くのフォロワーを生んだ。2014年に報道局に異動、2015年4月にマルチデバイスニュースメディア「ホウドウキョク」を立ち上げる。テレビとネットを繋ぐキーマンのひとり。

「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。

※このテキストは2016年11月21日放送の「HANGOUT PLUS」の内容の一部を書き起こしたものです。


■ 「メジャー病」の病巣はどこにあるのか

宇野 まずはテレビの何がダメなのかという話をしたいと思います。

福原 宇野くんはよくその話をするね。

宇野 福原さんはダメだと思わないんですか?

福原 どっちもだよね。ダメなところもあるし、まだまだ大丈夫だと思うところもあるし。一応テレビでご飯を食べている以上、あんまり自分のいるところがダメだとは言えない。でも、やっぱりダメなところはあるかな。

宇野 どこがダメだと思います?

福原 まず、あまり時代に寄り添っていないことかな。視聴者というか、世間の人々が何を考えているのか、もっとちゃんと知らないといけないのかなと。

宇野 僕は逆だと思うんですよね。今のテレビは、今どきテレビを観ているような人に媚びすぎていると思うんです。単純にお金や視聴率のことだけを考えるなら、「昭和の日本人」とマイルドヤンキーを対象にするしかなくて、あえて露悪的に言ってしまうと、情弱を騙すゲームになってしまっている。だから、今ここで変えない限り、テレビで面白いことはできないのではと。

福原 たとえば、どうしたらいいと思う?

宇野 お金の取り方を変えるしかないと思いますね。サブスクリプションをどんどん導入するべきだし、受信料を取るのが無理なら、有料に切り替えていくべきだと思う。今は無料のものが面白くないので、面白いことをやりたかったら有料に切り替えるしかないです。

福原 お金の話でいうと、広告をベースにしている今の民放のシステムは本当によく出来ているんだよね。これはかなり昔に作られたシステムで、そこの仕組みをサブスクリプションに入れ替えていくのは、かなり大変だと思う。

宇野 当面は二つのラインを平行して走らせればいいんです。マス広告は、情報環境的に今後は無効になっていく古いモデルですが、社会は高齢化しているので、いきなり消すのではなく、ゆるゆると下げていくわけです。そして、まだ余裕があるうちに、サブスクリプションを中心とした課金モデルに切り替えていく。ビジネスモデルの大転換を20年ぐらいかけてやるしかないと思うんですよ。

福原 それは賛成。CMを観てもらうことが前提の広告モデルとは別の仕組みをどうやって作り出すかは、まさにこれから考えなきゃいけない問題だと思う。サブスクリプションもそうだし、CMのあり方も変えていかなきゃいけないし、いろんなことをハイブリッドに組み合わせないといけないんじゃないかな。

宇野 ビジネスモデルの転換をしないと、つまらない人が集まる業界になっていくと思うんですよ。僕自身「スッキリ!!」に1年半以上出ているし、その前からNHKの番組に出たりしていますが、そうやってテレビと付き合ってきて思うのは、この業界って基本的に、「鈍感さをあえて演じることが大人だ」というモードになりすぎているんですよね。古市くんモードと言い換えてもいいんですが。僕は彼が基本的に大好きなんだけど、彼が大人受けがいい理由として、今は「メジャー」は成立していないけれど、「旧テレビムラ」「旧戦後中流ムラ」「昭和ムラ」、これらが「限りなくマスに近い大きなムラ」として、かろうじて残っている。ここに照準を合わせているわけです。でも、基本的には「昭和の日本人」とマイルドヤンキーを騙すしかないから、最大公約数的なヌルいものになるんだけれど、それも全て分かった上で「その最大公約数に媚びるのが一番クレバーで大人なんだ」というモードで生きている人がテレビ業界には多すぎる。この態度は、面白くないものを作っている自分への言い訳でしかないと僕は思います。これが一番良くないと思うんですよね。ここを変えるためには、ビジネスモデルを変えないといけないと思うんです。この「あえて鈍感なふりをするのが大人になることだ」というモードを解除しないと、ビジネスモデルを変える動機付けも生まれないと思うんですよ。これはどう思いますか?

福原 それは何をスケールにするかっていうことだよね。これまでは視聴率がスケールとなっていて、今はそこに録画視聴率がプラスされて、多少変わってきた部分はあるけれど、そういうものをベースにしている限りは、やはり大きくは変わらないというのがある。

宇野 テレビ局は視聴率を社内の壁に貼り出すのをやめたほうがいいですよね。現状ではそれしか基準がないから仕方ないんですが。電通の人もテレビ局の人も本当はわかっていることなんだけれど、視聴率とCMの広告効果や訴求力って、全然関係がないですよね。

福原 それはネットになって、かなりディスクローズされているよね。どうすればクリックされるか、どうすれば見てもらえるか。ネットだとすぐわかるけど、テレビはなんとなくざっくりしているわけでしょ。

宇野 デジタル放送だから、本当はもっと細かい数字を取ろうと思ったら取れるはずなのに、そうするとパンドラの箱を開けることになるのでやらないんですよね。

福原 どれだけの人間が真剣にテレビに向き合って観ているかは、たぶん今の数字からは出てこないよね。

宇野 そういった本当は意味のない数字を一生懸命追いかけている状態が、さっき言ったような「あえて鈍感なふりをすることが大人なんだ」と勘違いしたテレビマンたちを増やしていると思うんですよ。視聴率って内部の基準でしかないんですよね。テレビの外側にとっては、実質的な訴求力とか広告効果とかほぼ関係ないわけですよ。視聴率のことを気にしているのは広告業界の人とテレビ業界の人だけ。もっと言ってしまえば、テレビ局間の見栄の張り合いというか、覇権争いと社員ディレクターや社員プロデューサーのボーナスの査定にしか関係がない数字なんですよね。

福原 でも、よく言われるのは、Twitterでもテレビのツイートはものすごく多いわけで、それこそ今だとドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を放送すると、たくさんツイートされるよね。ネットの世界でもテレビはそれなりに存在感がある。だから一部の人のものだけという風にはなかなか思えない。

宇野 それはさっきの議論の繰り返しになりますけど、今どきテレビを見ている人たち=昭和のライフスタイルを持っている人たちというのが、未だに日本では最大勢力であるわけですよね。でもそれは、旧来の意味の「マス」なのではなくて、一番でっかい「ムラ」というだけだと思うんです。それは今日よりも明日、明日よりも明後日には縮んでいくものだと思うんですよ。

福原 確かにシュリンクはしていくと思う。

宇野 テレビが一番大きなムラであるうちに手を打っておくべきだと、僕は思いますね。そのためには、今のテレビの「鈍感さをあえて演じるのが大人である」という、ある種の「メジャー病」と僕は呼んでいるんですが、この「メジャー病」に罹ってしまったつまらないやつらを排除していくことが大事なんです。そうしないと、出演する側の人間も、特にやりたいことや作りたいものはなくて、単に有名になりたいとか、業界人ぶりたいやつばかりが集まってくるようになると思うんですよ。そのためには、テレビの業界からいかにそういうメジャー病みたいなやつらを放逐していくかが僕は大事だと思いますね。

福原 でも、大きくなってしまった組織は、変えるのに時間がかかる。そういった昭和的な価値観というか、視聴率が絶対だという人たちの価値観というのは、テレビのいろんなところに染み付いているわけですよ。そういう人たちが偉いポジションにいるので、その人たちが変わらないと価値観は変わらない。組織全体が変わるまでは時間がかかると思うよ。ビジネスモデルを変えていかなきゃいけないというのは、みんな薄々気がついているけれど、そうなると、いろんなものを変えていかなきゃいけない。


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