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『シン・ゴジラ』――日本が実現できなかった“成熟”の可能性を描く、“お仕事映画”としての『シン・ゴジラ』(真実一郎×宇野常寛)

2016/10/24 19:00 投稿

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今朝のメルマガは、映画『シン・ゴジラ』をテーマに、真実一郎さんと宇野常寛の対談をお届けします。3・11以降の想像力を象徴する作品として高い評価を得ている『シン・ゴジラ』。本作を巡って、庵野秀明監督が見出した「お仕事映画」としての新境地、さらには、ポリティカル・フィクションの新しい可能性について議論します。(構成:須賀原みち/初出:「サイゾー」2016年10月号
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▼作品紹介
『シン・ゴジラ』
監督・脚本/庵野秀明 特技監督/樋口真嗣 出演/長谷川博己、竹野内豊、石原さとみほか 配給/東宝 公開日/16年7月29日
東京湾沖の海中で、突然謎の爆発が起きる。海中火山かと思われたそれは、出現した「巨大不明生物」によるものであると判断され、政治家たちは対応を迫られる。保守政党の若手議員である矢口蘭堂をリーダーに、各省庁や学識関係者の中から技能と知識を持った変わり者たちが集められ、「巨大不明生物特設災害対策本部」が設立。ゴジラと名付けられた生物の侵攻を食い止めるべく、奔走する。
真実 3・11の後、宇野さんにお会いした時「今後はフィクションにとって、厳しい時代になる。その代わり、“怪獣”的な想像力が蘇るかもしれない」とおっしゃっていたのを覚えているんですが、東日本大震災から5年たって、まさに『シン・ゴジラ』で、その通りになりましたね。怪獣好きにとっては、まさか21世紀に、オタクじゃない人たちと、こんなに怪獣のことを語れる日が来るなんて──と、それだけでうれしい。そもそも僕のような第二次オタク世代にとって、庵野秀明はDAICON版『帰ってきたウルトラマン』【1】などをリアルタイムで見ていたりして、もともと特撮の人というイメージでした。アマチュア特撮映画を作っていた人が『新世紀エヴァンゲリオン』を経由して、ついに日本を代表するゴジラというキャラクターで特撮映画を撮ったことは、非常に感慨深いです。

宇野 正直、公開前はそんなに期待していなかった。理由はいくつかあるけど、ひとつは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(12年)ですよね。『エヴァQ』では冷戦期にイメージされていた終末の風景、つまり世界を一瞬で焼き尽くす原爆的な破滅が大安売りされていて、そのセカイ系的な陳腐さに白けてしまった。その庵野秀明が、『シン・ゴジラ』では、この先半永久的に世界を内部から蝕んで壊死していくような原発的な破滅を描くことによって、新しい形で「ゴジラ」を再生させたのは、良い意味で意外だった。

真実 『エヴァ』でずっと10代の少年の自意識や承認欲求について描いてきた人が、 “働く”ということを真正面から描くようになったのは、僕にはものすごく大きな変化に思えました。『シン・ゴジラ』は “お仕事映画”だった。劇中では、ほぼ全部のキャラクターが、大事なシーンで「仕事」という言葉を使う。「仕事ですから」とか「総理の仕事って大変だなぁ」とか、「国民を安心させるのが我々の仕事だろ!」とか。組織の中での自分の使命を最優先にして働く大人たちというのは、これまで庵野さんが描いていたキャラクターとかなり違うものだな、と。それは、自分の会社として株式会社カラーを作った影響も大きいのかな、と思いました。


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