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落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』 第6回 デジタルネイチャーをいかに生きるか(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.651 ☆

2016/07/26 07:00 投稿

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落合陽一自身が読み解く『魔法の世紀』
第6回 デジタルネイチャーをいかに生きるか
(毎月第4火曜配信『魔法使いの研究室』)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.7.26 vol.651

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今朝の「魔法使いの研究室」では、『魔法の世紀』の第6章「デジタルネイチャー」を取り上げます。有史以来、人間はイメージと物質の狭間を彷徨ってきました。約500年続いたパラダイムに変化が訪れ、人間・自然・コンピュータの境界線は消失しつつあると説きます。あらゆるものが記述され、計測される超自然の中で我々はいかに哲学を定義し生きていけば良いでしょうか。自身が主宰するラボの名前にも冠される「デジタルネイチャー」の世界観の全容とは――?
【お知らせ】「魔法使いの研究室」は今回が最終回となります。来月からは、落合陽一さんによる新連載「デジタルネイチャーと幸福な全体主義」が始まりますので、ご期待ください。


▼『魔法の世紀』第6章の紹介
『魔法の世紀』の最終章である第6章では、来るべき「魔法の世紀」の具体的なビジョンである「デジタルネイチャー」へと至るヒントが語られます。
人間の感覚器の限界をはるかに超えたテクノロジーの登場と、場としてのコンピューテーショナル・フィールドの構築。「エーテル」という概念の導入――。アナログとデジタルの境界は融解し、コンピュータが森羅万象を記述する、新しい世界の訪れを予見します。

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【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)

☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
取り扱い書店リストはこちらから。

▼プロフィール
落合陽一(おちあい・よういち)
1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。

『魔法使いの研究室』これまでの連載はこちらのリンクから。
▼放送時の動画はこちらから!
放送日:2016年4月19日

◎構成:長谷川リョー


■イメージと物質の境界を超越する
 
『魔法の世紀』の解説は、今回が最終回となります。最終章のテーマは「デジタルネイチャー」です。

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まずは簡単に、これまでの復習をしておきましょう。前回までは、イメージと物質の話をしてきました。有史以来、我々はイメージと物質のギャップの中にいました。古代人が洞窟の壁に牛や狩猟の様子の絵を描いていた頃から、我々が目で見えている物質世界と、頭の中で処理されるイメージとの間にはギャップがありました。
たとえば「技術のイデア」という観念について考えてみましょう。これは我々の脳内にはありますが、物質世界には目に見える形で存在していません。人々がイメージを絵画として描いたり、文字として残したりする行為は、そうしたギャップを埋める機能を果たしていたわけです。

そうした中で、僕はメディアアートに取り組みながら、「コンテンツなき芸術は存在するだろうか?」という問いをずっと抱き続けてきました。普通は、メディアの中にコンテンツがあることによって「芸術」とされるわけですが、コンテンツがなくてもアートは成り立つのではないか。メディアを作り続けることそのものが芸術になるのではないか、という問いです。

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このメディアとコンテンツの関係性が顕著に表れるようになったのは1800年以降のことです。この頃は人類史に残るような発明が相次いているのですが、その一つが写真技術の発明でした。写真はフランスの発明家ニセフォール・ニエプスによって世界で初めて撮影されましたが、世界で最初の写真はとても見れたものではなかった(写真左)。それからわずか20年後には、銀板写真の登場によって、美しく優れた写真が撮れるようになります(写真右)。これは技術の進歩そのものが新しい表現を獲得した、よい例なのではないかと思います。

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僕が普段何をしているかといえば、宇都宮大学にあるレーザー装置でプラズマを作ったり、超音波を出したりしています。これは従来のアーティストのクリエイティブのプロセスとは全然違いますよね。
僕の最近のテーマは「イメージと物質の境界を超えること」です。例えば昨年に発表した、プラズマを用いて空中に光の絵を描いた『Fairy Lights in Femtoseconds』もその一つですね。イメージのように現れて、物質のように振る舞うようなものを作るのは、なかなか大変なんですが、いずれにしても物質と映像の探求を突き詰めていく中で、頭の中にあるイメージをいかに物体化させるかということが非常に重要になっていきます。ちなみに、ここで僕が言っている「イメージ」はベルクソンが『物質と記憶』の中で言っている「イマージュ」と同義ですね。

1891年にエジソンがキネトスコープを、1895年にはリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明したことで、20世紀は「映像の世紀」となりました。映像文化によって一つの巨大なイメージを大衆が共有する時代の到来です。
映像技術とは、時間と空間を二次元平面に落とし込むことによって保存を可能するテクノロジーです。そこから我々は、いかにしてモノ自体を記録したり出力したりするか、という領域まで踏み込んできています。今、世界には「ゲノムを編集する」とか「プラズマで触れるホログラムを作る」といった発明を続けている人が大勢います。こうした潮流によって21世紀の世界は変わっていくのではないか、もっと言えば、デジタルネイチャー的になっていくのではないか、ということが『魔法の世紀』には書かれています。


■近代的な〈人間性〉という概念の解体

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20世紀のキーワードをもう一つ挙げておくと、「二次元イメージの共有」があります。例えば、宗教革命は活版印刷の発明にともなう二次元イメージの共有によって引き起こされていますし、世界大戦もイメージの共有がもたらした社会変化の一つだと思います。


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