Daily PLANETS

京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第5回 補論:少年マンガの諸問題 (毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.639 ☆

2016/07/08 15:00 投稿

  • タグ:
  • ほぼ日刊惑星開発委員会
  • 宇野常寛
  • 宇野常寛の対話と講義録
  • サブカルチャー
  • 京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録

チャンネル会員の皆様へお知らせ

PLANETSチャンネルを快適にお使いいただくための情報を、下記ページにて公開しています。
(1)メルマガを写真付きのレイアウトで読む方法について
(2)Gmail使用者の方へ、メルマガが届かない場合の対処法
(3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について
を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。

京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録
第5回 補論:少年マンガの諸問題
(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.7.8 vol.639

e3d1235898d24f62f9454041a53822f52abaa735

本日は「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録」をお送りします。今回は、前回までの少年マンガ論の補論です。部数的なピークを過ぎた「週刊少年ジャンプ」が、自身を題材にすることで、ある種の限界を露呈してしまった『バクマン。』。そして、高橋留美子の『うる星やつら』の世界、ラブコメの母胎的な箱庭を相対化した、押井守の映画『 ビューティフル・ドリーマー』について取り上げます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月29日の講義を再構成したものです)。

毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。


■『バクマン。』の七峰くんは本当に「悪」なのか?

 さて、ここまで「週刊少年ジャンプ」を中心に少年マンガについて考えてきました。「少年ジャンプ」の歴史はこの国の消費社会の歴史でもあり、とくにその中で「成熟」や「老い」という問題が作家や編集者の意図を超えたところで現れてしまっているところがあります。
 ただ、僕が最近強く感じるのは現在のジャンプは、この授業で取り上げたようなかつてのものからはかなり変わりつつあるように思います。たとえば最近『バクマン。』の映画版がヒットしていましたよね。この作品は『DEATH NOTE』を送り出した大場つぐみと小畑健の原作、作画コンビが自分たちの体験を素材にしたマンガで、主人公はマンガ家を目指す二人組の少年です。舞台はそのものずばり集英社の少年ジャンプ編集部で、彼らは次々と交代する担当編集者と格闘し、そして毎週の読者アンケートの結果に一喜一憂しながら作家として一本立ちしていく。なかなかよく出来た作品で、二人の少年がプロデビューしていく過程がそれこそ「少年ジャンプ」のバトルマンガのようにスピーディーでメリハリの効いた展開で描かれています。マンガ家の世界も分かりやすく紹介されていて、知識欲も程よく満たしてくれる。しかし、端的に言ってこれって「ジャンプ礼賛マンガ」になってしまっている感は否めない。
 たとえば、主人公たちの最大の「敵」に設定されるのは、「七峰くん」という同世代の少年マンガ家です。彼は外部スタッフを活用して組織的に、そして集合知的に作品を作り上げていくスタイルを採用しているのだけど、なぜか『バクマン。』では彼のスタイルは「卑怯なこと」であるかのように描かれてしまっている。
 でも、僕には考えれば考えるほど、七峰くんのどこが悪なのかさっぱり分からない。っていうか七峰くんのやっていることって、「マガジン」の手法ですよね。もっと言ってしまえば樹林伸の手法です。彼は外部のスタッフを含めた集団によるマンガ制作のノウハウを確立しようとした。しかしジャンプは作家主義を貫いてきたことにプライドを持っている。だから七峰くん=マガジン的な手法はすごく嫌いなんですね。要するにライバル雑誌のノウハウを「悪」として描くことでこの作品は成立している。これはちょっとかっこ悪いんじゃないか、というのが僕の正直な感想です。「自分たちの歴史最高!」とか「僕らが今まで積み上げてきたものをリスペクトしなさい」って自分で言うのってカッコ悪くないですか?


p-OmnlmEthk0z8kHlMRP9PSEzmmsjEyYxOUyeGnB
【ここから先はチャンネル会員限定!】
PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。
 

ここから先は有料になります

チャンネルに入会して購読する

月額:¥880 (税込)

  • チャンネルに入会すると、チャンネル内の全ての記事が購読できます。
  • 入会者特典:月額会員のみが当月に発行された記事を先行して読めます

ニコニコポイントで購入する

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

PLANETSチャンネル

PLANETSチャンネル

月額
¥880  (税込)
このチャンネルの詳細