第1回 目白ーー高級住宅街で見つけた自然と癒しスポット
【毎月配信】
「東京に住んでいる人にこそ、東京のことを知ってほしい」
宇野さんと話しているとき、勢い込んでこんなことを言ってしまいました。
ガイドブックは外から訪れる人に向けて作られたものです。ガイドブックに載るほどの観光名所じゃない、でも地元の人なら知っている「名所」。あるいは、道を歩きながら何気なく見つけた「なんとなく良いと感じる場所」。そういう場所をめぐることができたら遠くに旅行なんかしなくても、きっととても楽しいはず。
後日、「編集部のレクリエーションで街歩きをやろう」と思って作成したルートが「いいね! 記事にしよう!」ということで実施され、配信されることになりました。めまぐるしく色々なことが決まり、あっという間に街歩き当日です。
(だいたい)5キロメートルで歩けるルートで散歩をしながら、東京を再発見しよう!
そのコンセプトのもと、今回の企画が実現しました。
■今回のコース
当時、PLANETSの事務所は引っ越してから1か月あまり。
周辺にはなにがあるのか、どんな街なのか実際に歩いて知ろうということで、新事務所から近い目白駅周辺のコースを考えました。
目白駅は、山手線で高田馬場から1駅。駅同士の間は700メートルも離れていませんが、あの騒がしい高田馬場駅からは想像もできないような、綺麗で落ち着いた場所がたくさんあります。
今回のコースは、こんな感じ。
(1)ランチ
目白駅からすぐのピザ屋さん「PIZZERIA 37」でランチを食べてからの出発です。薪窯で焼き上げる37種類ピザが楽しめるお店、というのが名前の由来のようです。
お店は「トラッド目白」という、目白駅前すぐのおしゃれビルに入っています。
▲生地はこんがり、具はとろとろなマルゲリータ。
皆でランチセットを注文。ランチは、種類豊富なピザ、パスタから好きなものを選べます。ピザは思っていたより大きくて食べきれるか心配な程でしたが、生地が薄く、とても美味しいのでぺろりと完食。味もボリュームも大満足でした。
しっかり腹ごしらえをした後、いよいよ第1回街歩きスタートです!(2)寛永堂
▲寛永堂の外観。
最初に訪れたのは1630年創業の和菓子屋さん、「寛永堂」。
店内には灯篭やシャンデリア、屏風などがあり、和洋折衷な高級感の中で和菓子・お茶を楽しむ人が多くいました。
店内に入ると、店員さんが試食の和菓子とお茶を持ってきてくれました。お茶もお菓子も飾り気がないのにとても美味しい。
ここでは団子の中にタレが入っているという逆みたらし団子の「おみた」を買おうと思っていたのですが、残念ながら売り切れていたので代わりにおまんじゅうを購入。昼に訪問したのに売り切れとは、なんて人気商品なのでしょう……。
▲徳川家の家紋入りの立派な灯篭。
そして、そのおまんじゅう、これがとっても美味しいんです! 外側は少しかためで、食べると口のなかに上品な甘さが広がります。このおまんじゅうに出会えたので、おみたが売り切れていたことも結果オーライです。
ちなみにおみたは、後日、寛永堂さんを再訪し、リベンジできました!
▲おみた!
かじった瞬間、中からほど良い甘さのタレがでてきます。普通のみたらし団子とは逆に、タレが中に入っていることによって、おもちもタレも両方しっかり味わうことができるのです。ひとくちサイズで可愛らしく、ぱくぱく食べてしまいました。手がベタついたりしないので、お土産にもぴったりです。
次の目的地「目白庭園」に向かうまでの道は、お洒落で閑静な住宅街です。バレリーナのためのお店や個展を開いている小さなギャラリーなど、ところどころに高級感あふれる場所でした。
▲普通の家の敷地内に鳥居が! なぜこんなところに?
歩いていると、視界に赤くちらつくものがありました。近づいてみると鳥居です!
鳥居好きの私としては予期せぬ遭遇で、大変うれしい展開だったのですが、よく見てみると、なんとこの鳥居、私有地の中にあったのです。趣味で庭に鳥居を建てたのか、鳥居があった場所に家を建てたのか、謎は深まるばかりです。
今回の散歩で目撃した私有地内の鳥居は全部で2基でした。
(3)目白庭園
少し歩くと、今回の目玉スポットの一つである目白庭園に到着です!
入園料は無料ですが、予想をはるかに上回るハイクオリティな庭園でした。
▲入園無料なのに立派な庭園でした。水が澄んでいます。
この日は桜がまだ残っていたこともあり、とても美しい空間になっていました。学校帰りの女学生が椅子に座ってお喋りしていたり、マダムの皆さまが集ったりと、地元の方にとても愛されているようです。
▲「井」戸。中心から小さな泡がぷくぷく浮いてきます。
滝があったり、鯉がいたり、井戸があったり。水の「静」も「動」も体感できる目白庭園には、水の魅力が盛り込まれたかのような空間でした。
▲散りはじめている桜と緑葉。
「立教大学で授業があるときは、事務所から池袋まで歩いていたから、このあたりは何回も通ってたのに、いっつも素通りしてたよ。こんなすごい場所だったんだね。」としきりに感心していた宇野さん。確かに、素通りするにはもったいない場所です。
▲散った桜の花びらが浮かぶ水面。風景が綺麗に映ります。
きっと紅葉の時期には全く違う顔が見られるのでしょう。秋になったらまた来たい、と強く思える場所でした。
目白庭園をあとにし、目白通り沿いの「目白銀座商店街」を歩きます。商店街と言うにはお店がまばらでしたが、お洒落なお店もあれば昔ながらのお店もあり、歩いていて楽しい通りでした。
▲さまざまな種類のお茶碗。
「三条陶器店」。軒下に出ているたくさんのお茶碗に、「かわいい!」と思わず足をとめてしまいました。店内には湯呑やきゅうす、ティーカップなどもありました。
(4)エーグル・ドゥース
▲焼き菓子の名店、「エーグル・ドゥース」。
商店街の中でも一際お洒落なお店が、このエーグル・ドゥース。店内はたくさんの人でにぎわっており、とても混雑していました。
▲彩り豊かな焼き菓子。店内のあちこちに目を惹かれます。
一通りながめて感動し終わった一同は、会計係を残し、いったん店の外へ。
会計が終わるのを待っていると、男子たちがざわついています。どうしたのか聞いてみると、店の前に高級外車が止まっており、とてもかっこいいとのこと。
しばらくすると店内から車の持ち主が出て来て、そのまま乗車。そして、なんとオープンカーに変形…! ぽかんとしている我々を残し、かっこよく走り去りました。
「座った瞬間、ハンドルの位置が運転手に合うように動いた!!!」と男子は大興奮。かっこいい外車でエーグル・ドゥースにお菓子を買いにくるとは、なんて優雅な休日なのでしょう……。
さて、次の目的地は目白の森です。
▲エーグル・ドゥースを出てすぐの路上に落ちていた寝袋。何故……?
目白の森に向かって歩いている途中、道端に綺麗な寝袋が落ちていました。落とすには大きすぎるので、忘れ物なのかしら……。不思議なのでとりあえず写真撮影。
(5)目白の森
「目白の森」は、明治以降、周辺が住宅地として開発されていく中で屋敷林が鬱蒼と茂ったまま残った一画。22年前に開発計画が持ち上がったのですが、周辺住民の協力で守り抜かれたものだといいます。
▲目白の森に入ると、地元のかたが話しかけてくれました。
▲ムクロジの実。「羽根つきのはねについてる黒いのは、この中に入っている種なんだよ」。
▲教えてくれたのは目白の森の係の方。温かく迎えてくれました。
▲鳥巣箱。「野鳥は、じっと待ってないと見られないよ」。
▲桜の花びらで埋まっている水面。
▲宅地造成のために伐採されてしまった、樹齢200年あまりの切り株を使用したというオブジェ。
▲木には手作りの札が。ふりがなも振ってあり、あたたかみがあります。
▲目白の森にあったポンプ式井戸。「この水は」……?
地域の方が開発に反対して守られた森。土はふかふかしていたり、キジバトを間近で見ることができたり、大切にされている場所であることがひしひしと伝わってくる場所でした。
(6)中村彝アトリエ記念館
▲こじんまりとした外観。
次にやってきたのは「中村彝(つね)アトリエ記念館」。この地域で過ごした画家・中村彝の記念館です。こちらも入園無料ですが、無料とは思えない充実度。
▲展示ブース。中村彝のデスマスクもあり、圧倒されます。
▲館内は作品が点在していました。
さらに、館内では中村彝の一生を解説したビデオが流れており、全員でじっくり鑑賞しました。
短い時間のなかで、画家としての活動と恋愛に身を焦がした中村彝さんの半生を知ることができました。
(7)おとめ山公園
最後に訪れたのは「おとめ山公園」。木々が生い茂り、川が流れる、自然たっぷりの公園です。
この日は、偶然東京へ来ていた、香港中文大学の社会学者チョウ・イクマンさんと合流しました。
「お花見をしに東京に来たよ」と、チョウさん。
▲雨に降られても散らなかった桜
この数日前に桜散らしの雨が降っていたので、「桜はもう見れないかも」と諦めていましたが、きちんと咲いていました。皆、童心にかえって落ちてくる桜の花びらを追いかけます。
▲小川に沿って蛇行する道を歩きます。
日曜日だったので、家族連れも多くいました。川ではザリガニ釣りを楽しむ親子も。
木の葉の間から光がたくさん差し込み、明るい散歩道になっていました。
▲緑が映る水面。アメンボもいます。
高田馬場駅・目白駅から徒歩20分ほどの場所にありながら、自然にあふれている。園内は道が整備されていて歩きやすく、芝生で遊んだり、ピクニックもできる。「都会の喧騒に疲れちゃったよ」という方にピッタリのリフレッシュスポットです。
▲数日前に降った雨にも耐え、見ごろを迎えていた桜。
綺麗に咲いている桜と、のんびりとした雰囲気の公園をみて「ここでお花見してもよかったなあ」と宇野さん。
皆でお弁当を広げて楽しみたい場所でした。
▲ガード下に描かれていた絵。
公園から事務所に戻る途中で潜り抜けたガード下には、両側に可愛らしい絵が。「戸塚交通少年団・目白小学校 ガード下アートプロジェクトチーム 2010.7.17」と書かれていました。学校の課題作品でしょうか?
■終わりに
5キロほどのコースを歩き終え、事務所に帰ってきました。感想をおしゃべりしながら、エーグル・ドゥースで買った焼菓子をいただきます。どれも丁寧に作られた、高級なお菓子に戸惑いながらも、街歩きを終えた充実感に満たされ、お菓子の甘さに幸せな気持ちになりました。
「普段、生活している地域でも、こんなに気づかない景色や場所が隠れているんだ。」
今回の街歩きは、私たちにとってとても新鮮な経験でした。次回は、どんな街を再発見できるか、楽しみです。
(続く)
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