マル激!メールマガジン 2015年9月23日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第754回(2015年9月19日)
シリア難民問題は対岸の火事でいいのか
ゲスト:渡邉彰悟氏(弁護士)
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日本が安保関連法案の国会審議に揺れる中、シリアなど中東の紛争国を脱出してきた大量の難民をどこの国が受け入れるかが、大きな国際問題として表面化している。
今、最も多くの難民を出しているシリアは2011年に始まった内戦にイスラム国(ISIL)の台頭などが重なり、大半の国民の生活が成り立たない異常事態に陥った。戦闘はシリア全域に広がり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、400万人以上が国外に脱出したほか、760万人が国内で避難生活を強いられているという。まさに異常事態だ。
難民の大半はトルコ、レバノンなどの周辺国に逃れているが、安全で豊かな生活を求めて欧州、特にEU域内を目指す難民の数が急増し、その受け入れの分担が大きな国際問題になっている。欧米諸国は軒並みシリア難民の受入れ枠の拡大を表明している。
しかし、豊かな先進国の一員である日本は、このような人道上の緊急事態を、明らかに対岸の火事として傍観する姿勢しか見せていない。現在、日本には400人以上のシリア人が暮らしており、このうち60人以上が難民申請を行っているが、難民として認定されたシリア人はなんと3人にとどまっている。
とにかく日本は難民に冷たい。日本もドイツやフランスと同様に、1951年に合意された「難民の地位に関する条約」の加盟国だが、日本では2014年に5千件の難民申請があったのに対し、認定されたのは11人に過ぎない。
難民申請者を支援している弁護士の渡邉彰悟氏は、日本の難民政策の現状を「難民鎖国の状態」と厳しく批判する。日本では難民が「保護しなければならない対象」と見られていないところに、根本的な原因があると渡邉氏は指摘する。難民条約には難民の定義が示されており、加盟国はそれに合致する難民は保護しなければならないと定められている。しかし日本では制度的にも難民は入国管理の対象であり、人道的保護の対象になっているとは言い難い。渡邉氏は日本の難民認定制度が、申請を受ける窓口とその可否を判断する部署が別々という制度上の問題があると指摘する。
国際社会がシリア難民問題を契機に負担の分担を始めた今、日本はいつまで難民鎖国状態を続けることができるのか。日本の難民認定制度の問題について、ゲストの渡邉氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・条約における「難民」の定義と、日本の入管による判断のズレ
・深刻化するシリア難民問題 なぜ日本では対岸の火事なのか
・日本の難民認定の問題点とは
・“高潔な政治家”を生み出すための世論
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■条約における「難民」の定義と、日本の入管による判断のズレ
神保: 安保関連法案の国会審議に揺れる中で、十分な光が当たっていない重要な問題が数多くあります。そのひとつが、シリアを中心とした中東紛争国からの難民問題でしょう。一時的にニュースにはなりましたが、その後は安保法制だ、台風だという報道にかき消されてしまった感があります。「ヨーロッパで大変なことになっているらしい」ということは知っていても、翻って日本はどうだ、という議論に行き着いていない。これは決して他人事ではないし、もっと言えば、日本はイラク戦争を支持していて、それを外務省も誇っているわけだから、立派な当事者です。これはきちんと議論しなければならないということで、安保法制で揺れるさなかに、あえてこのテーマを設定しました。
ゲストは、弁護士で全国難民弁護団連絡会議の代表も務めていらっしゃる渡邉彰悟さんです。前回のご出演は2003年、12年前というと干支が一回りした“ひと昔”ですが、当時も「なぜ日本は難民を受け入れたがらないのか」というテーマでお話しいただきました。12年が過ぎ、日本は少しでも前進したのでしょうか?
渡邉: 当時、われわれは「日本は難民鎖国である」という批判を続けていたわけですが、結論から言いますと、本質的な部分は何も変わっていません。2003年にマル激に呼ばれた背景を思い返すと、北朝鮮からの脱北者が中国・瀋陽の日本国総領事館に駆け込んだが、敷地内で中国の警察部隊により取り押さえられるという問題(瀋陽総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件/2002年)があり、日本に対する国際的な批判が高まっていました。今回も世界を取り巻く難民の問題が非常に盛り上がっているなかで、日本がどのように動いていくか、ということが注目されているのだろうと思います。
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