マル激!メールマガジン 2015年9月16日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第753回(2015年9月12日)
マイナンバーで最悪のシナリオを避けるために
ゲスト:宮下紘氏(中央大学総合政策学部准教授)
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 いよいよ日本で、マイナンバー制度がスタートする。今年の10月1日から郵便による全国民への番号の通知が始まり、2016年1月から本格的に稼働することが法律で決まっている。
 マイナンバー制度は、国民一人一人に12桁の番号を割り当てて、税の徴収や社会保障の運用などに活用しようというもので、正式には税・社会番号制度と呼ばれる。基本的には国民一人ひとりの所得を正確に把握し、それを公正な税の徴収や社会保障の給付につなげることを目的としている。そのため、さしあたり制度開始にあたっては、行政がマイナンバーを活用できる分野は税と社会保障と災害対策に限定されることになっている。
 そう聞くと、マイナンバーが導入されてもそれほど大きな変化はないように感じるかもしれないが、実際には新たに割り振られる番号には、行政機関がすでに把握している個人情報がすべて統合され、その中には、住民票コードや基礎年金番号、運転免許証番号やパスポート番号などが含まれる。
 第一義的には集積された個人情報が漏えいするリスクがある。これは行政の担当者や作業を委託された事業者によって悪意を持って持ち出される場合もあるかもしれないし、ミスや外部からのハッキングによるものの場合もあるかもしれない。
 しかし、この制度にはもう一つ別のリスクがある。それは法律自体が、今後、マイナンバーの使途を拡大していくことを計画していることだ。表現の自由やプライバシー問題に詳しい中央大学総合政策学部の宮下紘准教授によると、今回可決したマイナンバー法には附則があり、3年後には対象となる使用目的を増やしていくことが検討されることになっているのだという。検討対象の中には、個人情報に医療情報や金融情報を含めるかどうかや、集めた情報を民間に開放するかどうかが含まれているといい、宮下氏は特に個人情報の中に病歴などの医療情報を含めることと、民間に個人情報へのアクセスを認めることはリスクが大きいと指摘する。
 10月から始まるマイナンバー制度の仕組みやその問題点、最悪のシナリオを避けるために、今、われわれに何ができるのかなどついて、ゲストの宮下紘氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・知っておくべきマイナンバーと個人情報の関係
・マイナンバーの利用範囲と、そのリスクとは
・期待される第三者機関によるチェック体制と、海外事例
・プライバシーに対する日本なりの哲学を構築せよ
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■知っておくべきマイナンバーと個人情報の関係

神保: 9月3日に改正マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)が成立しました。実際に10月から郵送による番号の通知が始まり、2016年1月からは制度の運用が始まります。ただ、9月3日発表の内閣府の広報室によるマイナンバーの認知度調査というものがあり、そこでは「マイナンバーの内容まで知っていた」という人は42.5%でまだ半数を割っている。「カードを希望する人」が24.3%、「希望しない人」が25.8%。そして、「未定の人」が47.3%という結果が出ています。

宮台: 変なデータですね。「マイナンバーについて知っている」というのは、一体何を知っているということなのでしょうか。こういう調査にはあまり意味がありません。

神保: 「知っている」という方もぜひ、今回の議論からもう少し、これが本当にどういうものなのかというところを見極めていただきたいと思います。
 マイナンバーというのは、文字通り「私の番号」です。法人番号というのも今年の10月から国税庁が13桁の番号を法人へ通知しますが、それについては「知らなかった」という人が76.4%だということです。「社会保障・税番号」が正式な名称で、本当は社会保障と税の共通番号なのですが、この間の年金情報の流出を受けて、とりあえず社会保障データの方は番号につながないということになりました。つまり、単純に納税者番号のようなものとしてスタートするようです。