マル激!メールマガジン 2015年2月18日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第723回(2015年2月14日)
貧困なる貧困対策から脱するために
ゲスト:岩田正美氏(日本女子大学人間社会学部教授)
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安倍政権が2月12日に提出した2015年度予算案では、一般会計の総額は過去最高の96兆3420億円にのぼり、社会保障費も31兆円台にまで膨らんでいる。しかし、世界で有数の格差大国となっている日本にとって最優先課題であるはずの貧困対策は減額されている。
日本における貧困対策の大半を占める生活保護費は受給者が216万人まで増加しているのに対し、歳出額の方は前年から180億円も減額されている。これは厚生労働省が給付基準を見直して、住居費と冬期の暖房費の支給基準を引き下げたことによるものだが、社会保障費を削減するための象徴として生活保護費をカットしようとの財政当局の思惑が見え隠れし、貧困対策の本来の目的が損なわれているのではないかと、社会保障問題や貧困対策に詳しい日本女子大学教授の岩田正美氏は懸念を表明する。
実際に住宅費や暖房費分が削られた今年度の生活保護の支給基準についても、岩田氏が副座長を務める厚生労働省の社会保障審議会生活保護基準部会での議論の内容が正確に反映されないまま、政府の独断で変更されていると岩田氏は言う。
どうも、安倍政権は財政再建を掲げながら必要性が疑わしい公共事業や防衛費の方は増額する一方で、貧困対策、とりわけ生活保護をスケープゴート化しているように見えてならない。
現行の生活保護費の給付基準が、最低限の生活を保障していると言えるかどうかについても疑問が残るところに、捕捉率は2割にとどまるという世界でも類を見ないほどの貧困者切り捨て政策をとっていながら、政府はさらなる生活保護の削減に躍起になっている。一番困っている人たちの給付でさえ削られていることを見せられれば、他の社会保障を削ることが正当化しやすくなるからだ。
先進国でもっとも格差が大きな国になりつつある一方で、財政が次第に危機的な状況を迎えつつある日本において、われわれは社会のセーフティネットをどう構築していくべきなのか。日本人として保障されるべき最低限の生活とはどんなものなのか、それを実現するために今、われわれには何が必要なのか。日本の貧困対策の現状と課題について、ゲストの岩田正美氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・日本の社会保障給付が先進国で最低水準なのはなぜか
・貧困対策が生活保護しかない日本の現状
・男女差、地域差のある貧困対策への考え方
・社会保障を「守る」のではなく、「作る」ために
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