マル激!メールマガジン

上脇博之氏、郷原信郎氏:裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない

2024/04/24 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2024年4月24日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1202回)
裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない
ゲスト:上脇博之氏(神戸学院大学法学部教授)、郷原信郎氏(弁護士、元検事)
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 政界を揺るがしてきた一連の裏金疑獄は、これから最も重要な局面を迎える。そもそも不正を引き起こした法律上、制度上の原因を探り、必要となる法改正をめぐる議論が国会で始まったからだ。
 今回の裏金問題は元々、神戸学院大学の上脇博之教授が赤旗の取材を受けた際に、自民党の各派閥が政治資金パーティの収入を正しく報告書に記載していないことを知り、自らも調査を発展させた上で刑事告発したことが全ての発端だった。東京地検特捜部が捜査に着手すると、単なる派閥によるパーティ券収入の不記載や虚偽記載にとどまらず、多額の裏金が議員に還流されていたことがわかり、一大スキャンダルに発展していった。
 その上脇氏は、現行の政治資金規正法に基づいて政治家や派閥、政党、政治団体などが提出している政治資金収支報告書は、その中身をチェックすることがとても困難なことを、自らの経験に基づいて強調する。総数にして数百万ページはあろうかという収支報告書はウェブ上で閲覧が可能になっているが、一つ一つのページがデータ化されていないPDF形式で公開されているため、検索をかけたりソート(並び替え)などができない。
驚いたことに現行制度の下では、政治資金規正法が守られているかどうかをチェックするためには、数十万から数百万ページはある報告書を一枚ずつ手繰っていくしかないのだ。
 上脇氏は膨大な時間をかけて、報道などで各派閥のパーティ券を大量に買っていそうな政治団体の支出と、パーティ券を売っている派閥の収入を突き合わせることで、辛うじて4,000万円あまりの記載漏れがあることを突き止め、これが今回の刑事告発につながった。しかし、赤旗による地道な調査報道と上脇氏による刑事告発がなければ、今も当たり前のように還流や裏金作りが粛々と行われていたことになる。実際、パーティ券の売り上げの還流による裏金作りは少なくとも2005年には始まっていたことが、共同通信によって報道されている。
 また、収支報告書は監督する権限を与えられた省庁や第三者機関が存在しないため、実際は報告内容が正確かどうかを誰もチェックしていない状態にあるというのも驚きだ。法律に基づいてどんな規制が設けられていようが、更にその規制をどれだけ強化しようが、最終的にそれが遵守されているかどうかを誰もチェックしていないし、したくてもそれが物理的に困難ということでは、そのような法律は法の体を成していないと言わざるを得ない。これは「ザル法」だとか「抜け穴」だとか以前の問題だ。
 他にも現行の政治資金規正法に基づく制度の中で、「最低でもこれだけは変えなければならない」ことを列挙したものが、上脇氏が理事を務める公益財団法人政治資金センターとビデオニュース・ドットコムの人気番組『ディスクロージャー・アンド・ディスカバリー』の司会を務める三木由希子が理事長を務める情報公開クリアリングハウスから「政治にかかわる資金の透明性確保を求める意見書」という形で公開されているが、その内容を見ると、これまで政治資金規正法がいかにザル法だったかを痛感せずにはいられない。
 その上で、政治資金の野放図な実態を熟知している上脇氏は、事実上の企業・団体献金の抜け穴となっている政治資金パーティも禁止すべきだし、政党交付金も廃止すべきだと主張する。企業・団体献金そのものには賛否両論があるが、上脇氏が問題にするのは、企業は政治資金収支報告書の提出義務がないため、受け取った派閥や政治団体側が正直にパーティ券収入を報告しない限り、その実態を知る術がないことだ。
どこかの企業が記載義務が生じる20万円以上のパーティ券を買っていても、あるいは150万円の上限を超えて購入していても、受け取った側がそれを記載せずにすべて裏金に回していても誰にもわからないことになる。
 また政党交付金については、そもそも政治資金の規律を全く守れない政党や政治家に100億円単位の交付金を渡すことは、「盗人に追い銭」であり「依存症患者に麻薬を渡すようなもの」に他ならないからだ。
 検事時代に政治家の裏金問題を捜査した経験を持つ弁護士の郷原信郎氏は、今回有権者の期待とは裏腹に裏金を貰っていた議員の摘発が3人にとどまった理由を、「政治資金規正法の真ん中に空いた大穴のため」と説明する。複数の政治団体を持っている政治家が、裏金をどの団体に入れたのかを明確にしない限り、検察は「起訴状が書けない」という刑事訴訟法上の問題が生じる。そのため政治家が政治資金の受け皿として使える団体を一つに限定するなどの法改正が必須だと指摘する。
 国会では政治資金規正法の改正案の審議が始まろうとしているが、これまで与党側が出してきた改革案はあまりにもいい加減なものばかりだ。有権者がよほどしっかりしなければ、「私たちはこれからも裏金作りに勤しみます」と宣言されているような改革案でお茶を濁されて終わってしまいかねない。
 政治資金規正法はその第一条で、政治を国民の「不断の監視と批判の下」に置くことがその目的であると宣言しているが、上脇氏や郷原氏が提唱する法律の改正案はいずれもそれを実現するためには不可欠なものばかりだ。現行の法律は不断の監視はおろか、まったく監視ができない代物になっている以上、抜本的な改正が待ったなしだ。一刻も早く「金のための政治」を終わらせ、国民のために働く政治を取り戻すためには、有権者のわれわれ一人ひとりが、まずは現行制度の問題点を知ることで、デタラメな改革案に騙されないようにすることではないか。
 今回の自民党裏金問題の発端となった告発をした上脇氏と、弁護士の郷原氏、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が、日本の政治に先進国として当たり前の透明性を持たせるために最低限必要となる施策とは何かを議論した。

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今週の論点
・裏金問題が明るみに出るまでの動き
・裏金の実態を解明しそこなった検察と大穴を埋めるつもりがない政治家
・政治資金規正法の改正すべきポイント
・政治とカネの問題は根本的な制度改革がなければ解決しない
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■ 裏金問題が明るみに出るまでの動き
神保: 今日は2024年4月19日です。岸田さんがアメリカから帰ってきてから早速、政治資金規正法をめぐる審議が始まりますが、このままだとどうしようもない改正になりそうなので、何を変えなければならないのかをきちんとやりたいと思います。
政治が官僚の上位に立てない最大のからくりがここにあり、30年変われないどころか日米合同委員会図式が変わらない理由もここにあります。本来は有権者の信認を受けている政治が上位にあるのですが、日本には官僚と報道の官報複合体があるので、リークをして記者クラブを通じてニュースを出すと国民がそちらについてしまいます。

 政治メディアは政治のドラマばかりやっていて、法案の中身を検証することが苦手です。受け手もドラマ仕立ての政治報道にひかれています。それではいけないと思うので、今回は法案の中身をしっかりやりたいと思います。

 ゲストは弁護士で元検事の郷原信郎さんと、神戸学院大学法学部教授の上脇博之さんです。 今回は上脇先生のご尽力によるパーティ券収入の不記載、裏金の告発が全ての発端だったと思うので、そもそもどういう経緯でそうなったのかということを最初に伺ってもよいでしょうか。
赤旗の記事が出たのが2022年11月6日でしたが、そこから2024年1月までにいくつも虚偽記載や不記載の告発をされています。また裏金での告発もされていて、2024年4月11日には丸川珠代氏の告発を郷原さんと一緒にされています。告発状を見せてもらいましたが、大変な労力がかかっていてすごいとしか言いようがありません。
政治資金収支報告書を調べ、告発状を書くためにどのくらい時間を費やされたんでしょうか。

上脇: 一日ではチェックしきれないのでとにかく時間を使いましたが、正確に言うと、元々は赤旗日曜版の記者さんによる、僕よりもすごい努力がなければ告発できませんでした。彼らが僕の告発以前にいかにがんばったのかということを後ほど解説したいと思います。 

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