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小林良彰氏:参院選で示された民意は正しく理解されているか

2022/07/20 21:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2022年7月20日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1110回)
参院選で示された民意は正しく理解されているか
ゲスト:小林良彰氏(慶應義塾大学名誉教授)
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自民党の圧勝と野党の惨敗。先の参院選を一言でまとめると、そんな感じになるだろう。そして選挙結果の詳細な分析も済まないうちに、メディアは秋にも予定される内閣改造だの、安倍元首相亡きあとの党内政局に関心が移ってしまっているようだ。しかし、この選挙で有権者が示した民意は、本当に正しく理解されていると言えるだろうか。
 そもそも投票結果以前の問題として、今回の参院選の投票率も52.05%と低いものだった。投開票日の2日前に安倍元首相が銃撃されるというショッキングな事件の影響もあって、3年前の参院選よりは3.25ポイント増えているが、先進国の国政選挙としては最低水準にとどまる。そもそも有権者の半数しか投票していないことに加え、1人区が多い参院選は死票が多く、しかも一票の投票価値にも3倍以上の開きがあるたため、投票行動と獲得議席数の間に大きな乖離が生じやすい。現に、獲得議席数では与党の圧勝が報じられているが、実際には自公合わせた得票率は比例区で2.3ポイント、選挙区でも2ポイント、3年前の参院選より下がっている。
 マル激では今回も、小林良彰慶應義塾大学名誉教授に、独自の調査に基づく投票行動の分析を聞いた。今回の調査も、全国のあらゆる階層から選ばれた4,149のサンプルを対象に、100項目に及ぶ質問への回答を性別、年代別、地域別に分析したもので、質問内容も多岐にわたる。
 小林氏の調査によれば、有権者の7割近くが将来の生活に不安を抱いており、その多くは政府の物価対策を評価していない。しかし、野党側が物価対策として主張した消費税の引き下げは、野党への投票行動にはつながらなかった。結果的に、政府の物価対策を評価しない人の多くが棄権に回ってしまった。これでは投票率があがらず、政治への期待が失われていくのは当然だ。
 結局、現在の政権与党に不満を持つ層はそれなりに大きいが、野党がその不満の受け皿になれていないところに、低投票率の理由もあり、また相対的に政権与党の獲得議席数が増える原因があったということのようだ。
 野党陣営内では立憲民主党と国民民主党の旧民主党勢力の苦戦が目立った。前回の参院選と同じ党に投票する意思を示した有権者が、自民・公明・維新・共産ではそれぞれ65%程度あったのに対し、立憲民主と国民民主ではそれが50%を割っていた。前回は民進党という一つの塊で選挙戦に臨んだ旧民主の2政党は、前回の選挙で支持してくれた有権者の半分の支持を失っていた。
 旧民主党勢力が広く有権者の支持を得られなかった理由の一端が、両党の比例代表の当選者リストに表れている。今回立憲、国民民主両党で比例区での当選者は労働組合の関係者で占められ、それ以外の候補者はほぼ全滅状態にある。これは、この2党が広く国民の支持を得ることができず、結局組合への依存体質を強めていることを如実に物語っている。これでは自民党に不満を持つ非正規で働く人々や若者の現状に対する不安や不満の受け皿になどなれるはずがない。結果的に、反自民票の多くが、維新やれいわ、参政党などに流れたと見られている。
 選挙で示された民意を政策に移すためには、まず何よりも、その民意を正しく理解することが不可欠だ。この選挙で示された民意とはどのようなものだったのか。投票行動分析における第一人者の小林氏と、此度の選挙における投票行動を分析した上で、そこからどのような民意が読み取れるのかなどについて、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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今週の論点
・「与党か野党か」ではなく「与党か棄権か」
・30代、40代の支持が下がっている自民党
・経済問題と外交政策にあらわれる野党の弱み
・女性の社会進出からデジタル化まで、ダメな日本
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■「与党か野党か」ではなく「与党か棄権か」

迫田: 今日は2022年7月15日の金曜日です。参議院選挙後最初の放送ということで、慶應義塾大学名誉教授の小林良彰先生にお越しいただきました。まず、安倍元総理銃撃事件についてさまざまなことが明らかになってきましたが、宮台さんはどうご覧になっていますか。

宮台: 旧統一教会の名前が出たことは自民党にとって極めて不都合な真実なので、それが表に出されたということは、おそらく警察のリーク報道はある程度、真実だという前提で話していいだろうと思います。その上で短く言うと、これは宗教の問題というより、国際的に比較するともっと広い文脈で考えた方がいい。端的に言うとホッブズ問題です。17世紀半ばにホッブズが『リヴァイアサン』という本を書きました。学校では自然権、自力救済権を放棄することで統治権力と呼ばれる権力・暴力の集合体を作り、それを信頼することで取り引きをするという話になっていますが、裏を返すと、統治権力の適切な暴力を信頼できなくなったときに、また自力救済に戻るしかないというロジックなんです。思えば世界中で無差別殺傷事件が起こっており、これは「誰でもよかった」という孤独による暴走だと理解されていますが、深く背景を探ると、やはり統治権力への不信が非常に大きい。いまはスペイン・バルセロナから出てきているようなミュニシパリズム、共同体自治という考え方か、自力救済かという、二つの方向性が出てきており、さて日本はどちらか、という話です。

迫田: 政治への信頼という意味では、選挙が重要になると思います。
 

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