マル激!メールマガジン 2022年7月13日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1109回)
安倍元首相銃撃事件を乗り越えて来るべき選挙と向き合う
ゲスト:角谷浩一氏(政治ジャーナリスト)
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参議院議員選挙の投票日を2日後に控えた7月8日、安倍晋三元首相が候補者の応援で訪れていた奈良県内で演説中に銃撃され、死亡した。現職、もしくは元首相の暗殺という意味では、現職の犬養毅首相が殺害された1932年の5・15事件と、高橋是清元首相(暗殺時は蔵相)が暗殺された1936年の2・26事件以来のこととなり、戦後としては初のことだった。まさか今の日本でこのような暗殺事件が起きるとは、誰が想像しただろう。
安倍元首相は現在も与党自民党内の最大派閥を率いる日本政界の最高実力者であり、国際社会では最も著名な日本人政治家でもある。その安倍氏が選挙演説中に銃撃されるなどということは絶対にあってはならない、民主主義の根幹を揺るがす蛮行だ。同時に、そのような最高レベルのVIPが白昼、群衆の眼前で至近距離から撃たれていいはずがない。犯人の動機や背景、警備の問題点などを徹底的に洗い出し、このような悲劇が繰り返されないための万全な対応が取られることを期待したい。
いずれにしても2012年に自民党が政権を奪還して以来、歴代最長の在任期間を誇る安倍氏が凶弾に倒れるというニュースには、多くの国民が大変な衝撃を受けているに違いない。まだ、安倍氏が亡くなったという現実を受け止められない人も少なからずいるだろう。しかし、泣いても笑っても7月10日に選挙がある。安倍氏の死に哀悼の意を表し、その功績に最大限の敬意を払いつつも、われわれはこの悲劇を乗り越えて、選挙で問われている諸問題と向き合わなければならない。
ビデオニュース・ドットコムでは、この選挙で問われるべき争点として、(1)防衛費2%と敵基地攻撃能力の是非、(2)問題だらけだったコロナ対策の検証と家庭医制度の導入、(3)輸入資源に依存した現行のエネルギー政策の検証と再生可能エネルギーの推進、(4)空前の円安・物価高を許しているアベノミクスに代わる経済政策、(5)労働者全体の利益を代表せず与党に擦り寄る労働組合のあり方、(6)低い食料自給率、の6項目を挙げ、直近の番組内で具体的な議論を進めてきた。
この選挙が終われば、日本は向こう3年間は国政選挙がない、永田町で言うところの「黄金の3年間」を迎える。しかし、黄金といっても、それはあくまでその間選挙を気にせずにやりたいことができるという意味で、政治家にとっての黄金期間に過ぎない。裏を返せばわれわれはこの選挙の勝者に、事実上向こう3年の白紙委任状を手渡すことになるということだ。その時になって泣き言を言わないためにも、それぞれの有権者が粛々と自分にとっての選挙の争点をよくよく見極め、投票行動に反映させなければならない。
安倍氏の事件を選挙に影響させてしまうことこそが、日本の市民社会が凶弾に屈することを意味するのではないか。
参院選直前の収録となった今週のマル激では、長年にわたり日本の政治を取材してきたジャーナリストの角谷浩一氏をゲストに迎え、ここまで明らかになっている情報を元に、衝撃的な安倍氏の銃撃事件をわれわれはどう受け止めるべきかを考えると同時に、こうした状況下で行われる参院選が何をわれわれに問うているのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・実際の警護の状況はなぜ明らかにならないのか
・要人暗殺という、「途上国的」事件が日本で起きた意味
・それでもやってくる選挙、あらためて争点を考える
・安倍晋三氏に心からの哀悼を
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■実際の警護の状況はなぜ明らかにならないのか
神保: 本日は2022年7月9日、土曜日の収録となっています。安倍晋三元首相は、もちろん意見が違うところはあったかもしれませんが、本当に日本に大きく貢献された政治家ではあったと思いますし、敬意を表しています。明日が選挙で投票しなければならないので、後半でしっかりやりますが、このような事件が起きたときに、何事もなかったかのように番組をやるというのはあり得ないことですし、冒頭ではこの銃殺事件について話したいと思うのですが、宮台さんいかがでしょうか。
宮台: アメリカでいま、1月6日問題が話題になっていますが、ポイントはアメリカの“病状”です。従来は、政治的な対立があったとしても、立場を超えて共通に乗っかっているプラットフォーム、コモンズにはみんながコミットするという合意があった。
神保: それが壊れてしまえば、対立自体もできなくなってしまう。
宮台: その通りです。その共通のプラットフォームへの信頼を揺るがすような事態は、これまでのゲームをすべて台なしにしてしまうから、非常に恐ろしい。トランプ元大統領がそれをしたのではないかという問題ですが、残念ながら日本でも、プラットフォームの共通材としての重要さを理解している人がどれだけいるのかがよくわからない。そのなかで、これが民主主義の挑戦だ、などという、ロボットでも言えるような御託を並べているのはどういうことなのだろうと思います。
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