マル激!メールマガジン 2022年7月27日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1111回)
政治と宗教の関係は今のままでいいのか
ゲスト:島薗進氏(東京大学名誉教授・宗教学者)
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安倍元首相の銃撃事件は、統一教会に対する個人的な恨みがその背景にあったことが明らかになったことで、統一教会の存在がにわかにクローズアップされることとなった。
かつて統一教会(正式には世界基督教統一神霊協会。2015年に名称を世界平和統一家庭連合に変更)が霊感商法と言われる手法で多くの被害者を出し、それが社会問題化していたことは周知の事実だ。今はかつてのような強引な資金集めは行っていないと教会幹部は主張するが、その一方で統一教会がその関連団体などを通じ、政治権力、とりわけ自民党に深く浸透していたことが、今回の事件によって期せずして明らかになった。
韓国発祥の新興宗教である統一教会は、今やアメリカを始め世界各国に支部を持つ大組織になっているが、その活動資金の大半が日本で集められたものであることが、米紙ワシントンポストなどによって報じられている。日本が食い物にされていたのは明らかだ。主に日本で築いた強大な資金力を元に、統一教会は世界進出を果たすと同時に、日本の政界にも深く食い込むことに成功していた。
研究論文などによると、統一教会と自民党の関係は古く、統一教会が韓国で発足して間もなく、教祖の文鮮明氏は日本で岸信介元首相や岸氏と同じく元戦犯で右翼の大物だった笹川良一などの庇護を受けて、日本での布教活動を活発化させていたとされている。笹川氏は文鮮明氏が1968年に設立した国際勝共連合の初代名誉会長に就いている。
その後も、多くの自民党議員が、選挙などで統一教会の支援を受けていたことが明らかになっている。今回安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者も、統一教会系の団体の集会に安倍氏がビデオメッセージを寄せていたことを知り、教団に対する怒りの矛先を安倍氏に向けることになったと供述しているようだ。
言うまでもなく日本国憲法は信教の自由を保障している。だから日本ではいかなる宗派でも、自由に宗教活動ができる。これは大切なことだ。しかし、その一方で憲法はその第20条で「いかなる宗教団体も(中略)、政治上の権力を行使してはならない」ことを明記している。例えば、巨大な宗教団体の教祖が信者に号令を出すことでその投票行動を左右すれば、民主的な政治が損なわれる恐れも出てくる。また、政治献金や信者の投票行動、信者による選挙活動の支援などで政治家が宗教団体に依存するようになれば、特定の宗教が権力の庇護を受けたり、霊感商法のような布教の名を借りた違法行為の取り締まりが緩くなるなど、多くの弊害が起き得る。
更に、日本には創価学会という公称800万世帯を超える信者を持つ巨大な宗教団体があるが、事実上その支援によって成り立っている公明党は今や自民党と連立を組む政権与党の地位にあり、選挙ばかりか政治に直接大きな影響力を及ぼす立場にある。日本が外国の宗教である統一教会にいいようにカモられてきたことも大きな問題だが、巨大な宗教団体に政治が左右されることを日本国憲法が是認しているとは到底思えない。
しかし、日本では宗教団体の政治活動を禁止していると読める上記の憲法20条が歴代内閣によって極端に狭く解釈されてきた。そこに明記されている「政治上の権力」が立法権、裁判権、課税権などを行使する行為と定義されている。選挙の支援や政治献金などの政治活動は基本的にすべて憲法が定めるところの「政治上の権力」行使には当たらないというのが、現在の日本における憲法解釈なのだ。だから日本では特定の宗教団体が政権与党の後ろ盾になるもよし、警察の取り締まりを緩くさせる意図を持って、元国家公安委員長や警察出身議員など、警察に対して影響力のある議員に集中的に献金をしたり支援をするのもよし、放送局の批判の矛先を緩める意図を持って、総務大臣経験者など放送局を所管する総務行政に影響力のある議員に集中的に献金するもよし、要するに何でもアリなのだ。
信教の自由は十分に尊重されなければならないが、宗教団体がその信者や、宗教活動によって集めた非課税のおカネを使って政治的な影響力を自由に行使できる今の日本の状態は民主主義のあり方として妥当なのか。宗教学の第一人者の島薗進名誉教授と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・日本を食い物にしてきた統一教会
・新宗教はなぜ、右側に寄っていくのか
・政府の公式見解から読む、政教分離の実際
・共通善を前提とした、宗教団体の価値の発信は歓迎
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■日本を食い物にしてきた統一教会
神保: 選挙の前にあのような事件があり、国葬がどうだという話になっています。佐藤栄作さんも国葬ではなく、基準がよくわからないなかで、なし崩しなことは気になりますね。
宮台: 少なくとも国会審議を経ることが必要です。その上で、与野党が合意したのであればいいのではないでしょうか。しかし、内閣は国会審議が馴染まないと言っているのでしょう。こういうものを僕は統一教会論法と呼んでいます。
神保: 道理を曲げてまで押し切ろうとするのが安倍政治の問題だったとも言われており、葬儀に至るまでそのやり方だということが、ある意味で象徴的で、残念なことでもあります。
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