マル激!メールマガジン

新藤宗幸氏:原子力規制委の安全基準は信頼できるのか

2018/03/14 23:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2018年3月14日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第883回(2018年3月10日)
原子力規制委の安全基準は信頼できるのか
ゲスト:新藤宗幸氏(千葉大学名誉教授)
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 この3月11日、日本は原発事故から7年目を迎える。放射能漏れの報を受け、着の身着のままで自宅から緊急避難したまま、未だ故郷に戻れない人の数は7万人を超え、福島第一原発の事故処理も依然として先が見えない手探りの状態が続く一方で、安倍政権は原発を貴重なベースロード電源と位置づけた上で、再稼働を着々と進めている。
 福島第一の事故原因も100%究明できたとは言えない状態の中で、原発の再稼働にお墨付きを与えているのが、事故後、「独立した立場」から原発の安全性を評価するために設置された、原子力規制委員会と呼ばれる行政機関だ。
 そもそも原子力規制委員会は、事故前の原発の安全性が「原子力安全・保安院」と呼ばれる経済産業省の一部局によって審査されていたことの反省の上に設立され、国家行政組織法3条に基づく3条委員会として一定の独立性と中立性が担保されているという触れ込みで発足した。しかし、5人の委員から成る委員会の委員の人選において、原子力産業の受益者は本来、委員になる資格がないことが法律に明記されているにもかかわらず、当時の野田政権は別途ガイドラインなるものを作成し、5人のうち3人の委員について、原子力業界に深く関連した組織に所属していた人物を採用してしまった。
 しかも、野田政権を引き継いだ安倍政権は、原子力産業と縁の薄い残る2人の委員を僅か2年で交代させ、代わりに原子力産業の重鎮を新たに委員に任命するなど、委員会は当初の「独立」や「中立性」とはほど遠いものへと変質していってしまった。
 行政学が専門の新藤宗幸千葉大名誉教授は、原子力規制委員会の独立性は名ばかりで、実際は政府の原発継続にお墨付きを与えるだけの御用委員会になっていると指摘する。
 実際、安倍政権が掲げる、2030年のエネルギーの20~22%を原発で賄う計画を実現するためには、原発30基の再稼働が不可欠となる上、12基程度の原発は、規制委が自ら設定した40年の耐用年数を60年に延長しなければ実現ができない。
 新藤氏は、規制委は一見、中立的な立場から技術論を展開しているように見えるが、最初から結論ありきの議論をしているに過ぎないと考えるべきだと語る。
 現在の安全基準の中に避難計画の評価が含まれていないことも、免震重要棟など今回の事故で重要性が明らかになった施設の設置については5年間の猶予を与えたことも、いずれも「最初から結論ありき」から来ているものだと言う。そうしなければ、原発の再稼働はできないし、20~22%のベースロードも実現が不可能になるからだ。
 なぜ日本は政治から真に「中立」で「独立」したチェック機能を持った独立行政委員会を作ることができないのか。どうすれば、日本でも国民の信頼に足る規制機関を作ることができるのか。政府から独立、中立的とは言えない原子力規制委員会がお墨付きを与えた原発の再稼働を、われわれはどう受け止めるべきか。行政のあり方に厳しい意見を投げかけ続けてきた新藤氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・行政官僚制の劣化――いつまでこんな議論を続けるのか
・結論から逆算される「人事」
・日本で独立規制委員会が作れない理由
・内集団に向いた「滅私奉公」ではなく、本当の公共心を持て
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■行政官僚制の劣化――いつまでこんな議論を続けるのか

神保: 3.11から7年目を迎え、この時期になると多くのメディアがそういう企画をやっていると思いますが、われわれとしてはこの時期だからこそもう一度、見てみる意味があると考え、「原子力規制委員会は本当に機能しているのか」というテーマを設定しました。本当にそこが安全だと言ったものを信用していいのか、信頼に足るような仕組みになっているのか。そう言われ続けながら、再稼働が進んでいる状況です。常に注意して見ていなければならないのだけれど、この問題をきちんと検証した本なども、実は意外とありません。

宮台: 避難政策――すでに帰還政策になってしまいましたが、当初は避難したままの選択をする人、帰還するという選択をする人の間に差別をつけないという話だったのが、いつの間にか帰還しない人は支援を打ち切る、という図式に決まってしまっています。細かい話は別にしても、この2~3年、行政省庁がどうも様子がおかしいなと。厚生労働省のデタラメデータ捏造事件でも、モリカケ問題での文科省の動きにしても、みなさんそう思っていらっしゃるでしょう。日本の行政官僚制全体に、ものすごい勢いで劣化が進んでいるということです。内閣人事局の問題、官僚が誰を向いて仕事をするかが変わってしまった、という話はマル激でもしてきましたが、ここまでデタラメが放置された状態になるというのは、誰も想像しなかったと思います。

神保: 例の“一強”問題が表面化するとここまでデタラメになってしまう、ということでしょうか。しかし、厚労省のデータ問題を見ると、小学生レベルですよね。一強問題と劣化問題がどう結びつくのかというのは、今日の重要なテーマの一つになるかもしれない。

宮台: 大事なポイントです。おっしゃるとおり、次期次官と目される人間がデータの隠ぺいや捏造を指示したという話もありますが、だとしたら、こんなにずさんなデタラメを命じたり、容認する人間が重要なポストに就く可能性があるということで、本当に恐ろしい。
 細かいことを抜きにすると、マックス・ウェーバーはある条件のもと、行政官僚制がこのように暴走するということを予言しています。これは政治がコントロールする必要がある。行政官僚制というのは予算と人事の最適化を巡って動く。ウェーバーは「入れ替え可能な没人格」と言いますが、自動機械なんです。それを政治が放置しているどころか、暴走をむしろ加速させている、支援しているという感じです。これは、今回の議論に直接関係してくる問題ですね。

神保: そういう事も含めて、7年目の今日、しっかりと考えたいと思います。 

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