マル激!メールマガジン 2018年3月7日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第882回(2018年3月3日)
あの大惨事の教訓はどこへ行ったのか
ゲスト:柳田邦男氏(ノンフィクション作家)
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7年前の東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウン事故は、放射能汚染によって多くの住民から故郷を奪った。避難指示区域は当初よりは縮小されたが、依然として帰還困難地域も多く残されている。また、除染が進んだことなどを理由に避難指示が解除された地域でも、政府が帰還を推進するのとは裏腹に、十分な社会インフラが回復していないなどの理由から、いまだに避難生活を余儀なくされている人も多い。事故から7年が経った今も、以前の姿に戻ったとはとてもいい難い状況が続いている。
ノンフィクション作家で震災後、繰り返し被災地に足を運んでいる柳田邦男氏は、102歳で自ら命を絶った福島県飯舘村の男性を例に、生活の基盤を奪われた住民一人ひとりの人生に思いをいたすことの大切さを強調する。災害はとかく被害の規模が数値化されがちだが、その背後には数字だけでは測りしれない一人ひとりの物語がある。
政府の「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の委員もつとめた柳田氏は、その最終報告にある9つの論点のほとんどが、事故から7年が経った今も、積み残しになったままだと指摘する。特に「被害者の視点からの欠陥分析」の重要性が忘れられており、原発の安全基準でも専門家による技術的なことに重点がおかれたまま再稼働が認められていることに強い危惧を感じているという。数値化されるものしか考慮しなかった“想定外”ということ自体が誤りであったことを教訓としなくてはならないはずなのだ。
原発事故が実際どれだけ多くの人に「人間の被害」を引き起こしたのか、その全容はいまだに明らかになっていない。事故当時小学校1年生だった子供は、仮設住宅からバスで1時間もかけて遠くの小学校に通い続け、そのまま卒業した。慣れ親しんだ自然豊かな故郷から切り離された子供時代を送らなければならなかったこの子供の受けた被害は無論、被害者の統計上の数値には反映されていない。
あの悲惨な事故の教訓をわれわれは活かせているのか。事故の教訓を風化させないために今、われわれは何を考えなければならないのか。これまで多くの事故や災害の取材・検証に携わってきた柳田氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・過去だけでなく、未来をも奪う原発事故
・被害者視点の欠如と、「想定外」という欺瞞
・無視される「全容解明」の要請と、変わりつつある司法判断
・「人間の被害」を明らかにせよ
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■過去だけでなく、未来をも奪う原発事故
迫田: 東日本大震災から7年。今回から2週にわたり、マル激では特に原発事故について取り上げたいと考えています。先に現状を確認しておくと、7年経ったいまも全国47都道府県、1,054市区町村で約7万3,349人の方が避難していらっしゃいます。しかも、うち仮設住宅、みなし住宅に、約5万3,446人を超える人たちが生活しているという現状です。
宮台: 自主避難を数えなくなっていますから、それを合わせるともう少し増えますね。
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