以下は、1998年ごろ、とつげき東北が古き良き「ホームページ」に記載していたギャグネタです。
「なんでやねん」――関西人にはお馴染みのこの単語。関西芸人の活躍で、今や日本全国に知れ渡っているだろうが、これは単なるはやり言葉やかざり言葉ではない。日々の暮らしの中で、この単語を口走る機会は極めて多いのである。つまり、世の中は矛盾に満ちているのだ。例えば、テレビのリモコンがすぐに見つからない時や、靴下を履こうとしたら半乾きだった時、あるいは、カップラーメンの最高形式たる「チキンラーメン」が近所のコンビニに入荷されなくなった時……ああ、何たる世の矛盾! このような時こそ、我々は心を込めて「なんでやねん!」と叫ぶわけである。
この文章は、日々繰り返されるこの「なんでやねん」の心境を、読者の方々と分かち合いたいという願いから記述されるものである。私が経験した「なんでやねん」──この理不尽さ、この不条理さ。皆さんにも是非体験していただきたい。
(なお、ここに掲載する文章は、あくまでも個人的な意見であり、特定の団体や個人、製品等を非難する意図はありません)
第一なんでやねん・ウソつきのねーちゃん
私には4才年上のねーちゃんがいる。初めの「なんでやねん!」は、幼き頃のねーちゃんに対してである。
小学校低学年のころのねーちゃんは、はっきり言ってウソつきであった。それも、単にちょっとした弾みでウソをつくタイプの「守り型ウソつき」ではない。攻めてくるのである。例えば次のように。
弟(幼稚園児の私)「ねーちゃん、スズメは近づいたらすぐ逃げるのに、ハトはなかなか逃げへんねぇ」
姉「そうや。あたりまえやん」
なにが当たり前やねん。
姉「ハトにはな、2種類いるねんで」
弟「ほんま?」
姉「ハトでも、近づいてもなかなか逃げへんハトと、すぐ逃げるハトがおるやろ」
弟「うん」
姉「遅いほうをノロマバト、早いほうを急バトって言うねんで」
めっちゃウソやんけ! 「ノロマバト」は許すけど、「急バト」てなんやねん。幼心に、「これひょっとしてウソちゃうん?」とか思ったわ。
このように、何もないところからウソを体系化してくるのである。言ってみれば、「前に出るタイプのウソつき」なのである。これは凶悪である。ねーちゃんのウソに引っかかった経験をあげれば、枚挙にいとまがない。例えば、私が近所の空き地でテントウムシを見つけたときのこと。普通の「ナナホシテントウ(赤字に、黒い斑点七つ)」ではなく、子供の間で「幻」と言われていた「カメノコテントウ(カメの甲羅に似ている)」である。喜び勇んで持って帰ったら、ねーちゃんの登場である。
姉「そのテントウムシは毒を持ってるからあぶない。捨てなさい」
だまされて捨ててもうたで! しかも、後でねーちゃんの虫かご見たら、カメノコテントウ入っとるで! 昨日までそんなんおらへんかったで。
あまりにも悔しかったので母親に泣きついた。
弟「お母さん、ねーちゃんが僕のテントウムシ取った」
母「ほんまやの? ねーちゃん」
姉「ううん。道にいた」
おらんわ!!!!!
弟「ぼくのやつ~」
幼い私は泣き出し、さすがのねーちゃんも苦しくなってきた。
ここで「ねーちゃんが見つけた」と言い張るなら、凡庸な人間である。しかし、姉は極めて優秀な人間だから、言うことが違う。
姉「わかったわかった。このテントウムシ、とつにあげるわ。ねーちゃんは我慢する」
母「なんや、やっぱりとつがウソついてたん。ねーちゃんはエライね」
待てや! おかん、だまされたらあかんで。このねーちゃん、黒いで。
ねーちゃんのウソは、まだまだこれだけではない。
姉「クリスマス以外でも、寝るときに靴下置いといたらサンタさんがくる」
めっちゃ期待して、毎日靴下置きまくったわ。サンタどころか、おかんに「靴下脱ぎっぱなしにしたらあかんやろ」て、怒られただけやで!
姉「アリは甘くておいしい」
辛いだけやったで……ほんまに食ってもうたやんけ!
姉「ハチに刺されそうになったら、死んだフリをすれば刺されない」
中2ぐらいまで信じとったわ! 何回も刺されたで!
姉「うわぁ、もう四月やのに雪が降ってきたよ~」
降ってへんで~!
……何か精神的苦痛が残りそうなのでこの辺りでやめておくが、今思い出しても、この時期はまさに修羅であったと痛感する。とは言え、今となっては懐かしい思い出でもある。現在のねーちゃんは、優しくて頭の切れる、私の尊敬する人物である。
あ、そうそう、ねーちゃん。確かにウソつきは直ったけど、たまに出る信じ難いほどのオヤジセリフだけは、やめて欲しい。最近の電話で言った言葉。
姉「(略)車まで買うたら、バッチグーやで」
明らかなことだが、今時バッチグーなどという言葉を使う人間は、得てしてバッチグーではない。 (完)
「なんでやねん」――関西人にはお馴染みのこの単語。関西芸人の活躍で、今や日本全国に知れ渡っているだろうが、これは単なるはやり言葉やかざり言葉ではない。日々の暮らしの中で、この単語を口走る機会は極めて多いのである。つまり、世の中は矛盾に満ちているのだ。例えば、テレビのリモコンがすぐに見つからない時や、靴下を履こうとしたら半乾きだった時、あるいは、カップラーメンの最高形式たる「チキンラーメン」が近所のコンビニに入荷されなくなった時……ああ、何たる世の矛盾! このような時こそ、我々は心を込めて「なんでやねん!」と叫ぶわけである。
この文章は、日々繰り返されるこの「なんでやねん」の心境を、読者の方々と分かち合いたいという願いから記述されるものである。私が経験した「なんでやねん」──この理不尽さ、この不条理さ。皆さんにも是非体験していただきたい。
(なお、ここに掲載する文章は、あくまでも個人的な意見であり、特定の団体や個人、製品等を非難する意図はありません)
第一なんでやねん・ウソつきのねーちゃん
私には4才年上のねーちゃんがいる。初めの「なんでやねん!」は、幼き頃のねーちゃんに対してである。
小学校低学年のころのねーちゃんは、はっきり言ってウソつきであった。それも、単にちょっとした弾みでウソをつくタイプの「守り型ウソつき」ではない。攻めてくるのである。例えば次のように。
弟(幼稚園児の私)「ねーちゃん、スズメは近づいたらすぐ逃げるのに、ハトはなかなか逃げへんねぇ」
姉「そうや。あたりまえやん」
なにが当たり前やねん。
姉「ハトにはな、2種類いるねんで」
弟「ほんま?」
姉「ハトでも、近づいてもなかなか逃げへんハトと、すぐ逃げるハトがおるやろ」
弟「うん」
姉「遅いほうをノロマバト、早いほうを急バトって言うねんで」
めっちゃウソやんけ! 「ノロマバト」は許すけど、「急バト」てなんやねん。幼心に、「これひょっとしてウソちゃうん?」とか思ったわ。
このように、何もないところからウソを体系化してくるのである。言ってみれば、「前に出るタイプのウソつき」なのである。これは凶悪である。ねーちゃんのウソに引っかかった経験をあげれば、枚挙にいとまがない。例えば、私が近所の空き地でテントウムシを見つけたときのこと。普通の「ナナホシテントウ(赤字に、黒い斑点七つ)」ではなく、子供の間で「幻」と言われていた「カメノコテントウ(カメの甲羅に似ている)」である。喜び勇んで持って帰ったら、ねーちゃんの登場である。
姉「そのテントウムシは毒を持ってるからあぶない。捨てなさい」
だまされて捨ててもうたで! しかも、後でねーちゃんの虫かご見たら、カメノコテントウ入っとるで! 昨日までそんなんおらへんかったで。
あまりにも悔しかったので母親に泣きついた。
弟「お母さん、ねーちゃんが僕のテントウムシ取った」
母「ほんまやの? ねーちゃん」
姉「ううん。道にいた」
おらんわ!!!!!
弟「ぼくのやつ~」
幼い私は泣き出し、さすがのねーちゃんも苦しくなってきた。
ここで「ねーちゃんが見つけた」と言い張るなら、凡庸な人間である。しかし、姉は極めて優秀な人間だから、言うことが違う。
姉「わかったわかった。このテントウムシ、とつにあげるわ。ねーちゃんは我慢する」
母「なんや、やっぱりとつがウソついてたん。ねーちゃんはエライね」
待てや! おかん、だまされたらあかんで。このねーちゃん、黒いで。
ねーちゃんのウソは、まだまだこれだけではない。
姉「クリスマス以外でも、寝るときに靴下置いといたらサンタさんがくる」
めっちゃ期待して、毎日靴下置きまくったわ。サンタどころか、おかんに「靴下脱ぎっぱなしにしたらあかんやろ」て、怒られただけやで!
姉「アリは甘くておいしい」
辛いだけやったで……ほんまに食ってもうたやんけ!
姉「ハチに刺されそうになったら、死んだフリをすれば刺されない」
中2ぐらいまで信じとったわ! 何回も刺されたで!
姉「うわぁ、もう四月やのに雪が降ってきたよ~」
降ってへんで~!
……何か精神的苦痛が残りそうなのでこの辺りでやめておくが、今思い出しても、この時期はまさに修羅であったと痛感する。とは言え、今となっては懐かしい思い出でもある。現在のねーちゃんは、優しくて頭の切れる、私の尊敬する人物である。
あ、そうそう、ねーちゃん。確かにウソつきは直ったけど、たまに出る信じ難いほどのオヤジセリフだけは、やめて欲しい。最近の電話で言った言葉。
姉「(略)車まで買うたら、バッチグーやで」
明らかなことだが、今時バッチグーなどという言葉を使う人間は、得てしてバッチグーではない。 (完)
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