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ダンジョンズ&ドラゴンズ 『ネヴァーウィンターの失われし王冠』リプレイ -第8回-

2014/01/21 17:03 投稿

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  • ダンジョンズ&ドラゴンズ
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  • TRPG

巣穴にて
 ――ああ、ここは本当にあいつらの“巣”だな。
 生前の記憶はところどころ失われているが、匂いの記憶は魂の深いところに巣くい、黄泉還りの時にも消え失せはしなかったようだ。馴染み深い匂いにセイヴは知らず笑みを浮かべる。
「嬢ちゃん、足下は大丈夫か?」
「“ライト/明かり”があるから大丈夫」
 病み上がりのミシュナが杖を掲げる。ある意味この地下道にふさわしい鬼火が、壊れた石組みを照らし出していた。
 ――一人だったら、もっと楽な方法があったんだがな。
 やがて二人は先行する仲間達に追いつく。
「アニキ! 来てくれたンすか?」
「ああ、待たせたな。嬢ちゃんも一緒だ」
 そこには先に死鼠団のアジトに赴いたジェイドやヘプタがいた。タランがいないのは、おそらくまた主の身代わりになって妖精境に戻ったのだろう。
「あのエラドリンの兄ちゃんはどうした?」
「身内の恥を雪ぎに、裏切り者を連れて地上に戻ったわ」とエイロヌイ。
「アニキが来てくれれば百人力ッす!」
 ヘプタの言葉の通りだった。
 セイヴにとってこの地下道は「来たことはないが、馴染み深いあなぐら」である。死鼠団の一員としてヤツらが使う通路、隠れ家が手に取るようにわかった。
「ここから先は俺が先導する」

ミシュナ:このパーティは明かりが必要ですね。初級呪文の“ライト/明かり”を使います。
サブマス/ジェイド:光源は複数あった方が良いから、陽光棒を取り出して、背負い袋に刺しておきまーす。
DM:ではセイヴの受動〈知覚〉を。
セイヴ:受動〈知覚〉は19。
DM:あー、ならすぐに見つけられますね。死鼠団は自分達の巣穴というか本拠地のあちこちに武器や宝物の保管場所を作っておくんですが、セイヴはそういう隠し部屋を一つ見つけます。
 中には罠の仕掛けられた宝箱が三つ。太陽と月と星の印がそれぞれついています。で、内一つには罠がかかっていること、他二つには宝物が入っていることまでがわかります。
 これは死鼠団の良くやる遊び……ということにして、新春の運試しです!
サブマス/ジェイド:ここでアンケートですか(笑)
エイロヌイ:コメントで『こんなときにタランがいたらなあ』だって(笑)

 マジメなダンジョン・クロールならばいろいろと罠避けなど考えるところだが、新年一発目(配信は1/8だったのです)のご祝儀というかお年玉と言うことで、全部を視聴者に任せることに。

DM:ここしばらく、ハードで重い選択肢が続いたんで、ここらでちょっと軽めのアンケートと思いまして。
ミシュナ:無事に開けようとするなら“メイジ・ハンド/魔道士の手”とかもあるけれど……。
セイヴ:ま、ここは楽しもう。
エイロヌイ:中身はチーズだったりしてね♪

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このシーンのうらがわ
 今回のアンケートはこれまでとは趣を変えて、特に手がかりや情報もないおみくじ的な3択。このうちペナルティがあるのは一つだけだからだいぶ気楽である。
 とはいえ、太陽、月、星の三つの印には意味が添えてあるとか。
「ワーラットだから、月が“あたり”かなぁ」「いや、三つの中で太陽だけが昼に出るから……」などと参加者は視聴者向けにいろいろと想像を語るが……。
 
問い:紋章が刻まれた宝箱が三つある。どの宝箱を開けるか?

1):太陽
2):月
3):星



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DM:あたりです! 中には魔法のアイテムが人数分!!
全員:やった!

 中に入っていたアイテムは元のシナリオに用意されている表を振って決める。結果、“ベルト・オヴ・ヴィゴー/強壮のベルト”が2つ、マジック・スタッフ+1が1つ、“シルヴァン・アーマー+1/森の鎧+1”と“マジック・アーマー+1/魔法の鎧+1”が1つずつとなった。ベルト二つは防衛役のエイロヌイとジェイドが、スタッフはミシュナが、シルヴァン・アーマーはセイヴが使うことに。すでに全員が魔法の鎧を手に入れていたので、一つ余った鎧は(今はいない)タランに着せることになった。


このシーンのうらがわ
DM:なお、罠の場合にはこの部屋全体が落とし穴となって落下します(全員:うわー)で、落とし穴の底には門松があるので、これが刺さって大ダメージを(爆)
セイヴ:まァ、お正月だしね。
DM:で、罠だけだと寂しいからそこに銅貨を10000枚ほど……。
サブマス/ジェイド:むしろ厭がらせだよ!
DM:死鼠団だって、お正月はめでたい。
全員:いやいやいや。



 とはいえ、お正月気分はここまで。引き続きセイヴが先行して死鼠団の本拠に冒険者たちは進んで行く。


息子たちの真意
 やがて下水道は込み入った狭い空間になって行く。
「ぞろぞろ歩いていくのも、ここらが現界だな」先導していたセイヴがそう呟いた。「この先はヤツらの見張りがうろうろしてる。先行するから、ここで待っててくれ。」
「アニキ一人で行くのは危ないッす」
「お前達には、死鼠団のことを話したこと無かったな」蒼白の顔に薄い笑みが浮かぶ。「死鼠団の連中は、忍び込むときにはネズミの姿になるのさ。こんな風にな」
 一瞬、セイヴは屈んだように見えた。揺らめく魔法の明かりの中で、闇にその輪郭が溶け込むように、にじむ。
 驚いてもう一度目を見張ったときには、そこにはセイヴの姿は無い。消えていた。

ヘプタ:「ア、アニキ?」
セイヴ:ここだよ、と足下を囓ろう(笑)ネズミのままじゃ話せないんでしたっけ。
DM:ですねえ、けど無限回パワーですから元に戻れば大丈夫です。
ヘプタ:「あ! アニキがまた現れた。どこに行ってたんですかアニキ?」
セイヴ:「お前の足下でネズミになってたんだよ!」
ヘプタ:「いやまさか人間がネズミになるだなんて~」あり得ないあり得ない(笑)
エイロヌイ:ではこちらは「とうとう正体を現したわね!」とレイピアを突きつけて……。
全員:待て待てまてッ!

「俺はもともと連中と同じく死鼠団にいたんだ。今はもう連中とは縁を切ったが、昔取った杵柄ってヤツで今もこんなことができる」
 ダンジョンも、下水道も、そしてもちろん街にある屋敷も。
 基本は人間の侵入を防ぐためにその守りが用意されている。だが、ネズミ、しかも人間と同じ知恵、知識に判断力を備えたネズミを食い止める手段などほとんどない。
 死鼠団のメンバーはその能力ゆえに、狭い空間を通り抜けたり、壁を登って移動することができ、息をひそめて物陰に隠れればたいていの敵をやり過ごすことができる。彼らが恐れられた理由はまさにそこにあるのだ。
 セイヴは下水を駆ける。

DM:敵の目を引かずに済むか、〈隠密〉で判定お願いします。難易度は18!
セイヴ:ネズミになって+4されるから、+12スタートか。っっと、出目が低い、6!
ミシュナ:あっぶな!
ヘプタ/死鼠団:「なあ、いま何か物音がしなかったか?」
セイヴ/ネズミなう:「チュウチュウ」(笑)
サブマス/死鼠団:「なんだネズミか」
DM:ネズミになってなかったら見つかってましたね。かなりの警戒ぶりだというのがわかります。けれどあなたは見事それをくぐり抜けて死鼠団の本拠に。と、そこからはなにやら会話が聞こえて来ます。明かりを持った人間が3人ばかり、それを取り囲むようにワーラットが何匹も。

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 明かりを手にした人間達の表情はこわばっていた。獣人どもはなめ回すように、そして嘲笑うように彼らを睨め付けている。
「(あれは、“アラゴンダーの息子たち”。しかも頭領じゃねえか)」ネズミの姿のままセイヴは驚く。確かに、中央にいるふてぶてしい片目のワーラットに対峙しているのは、あの市場で市民に呼びかけていた男、アーロン・ブレイドシェイパーであった。

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「今、なんと言ったのかな」スンスンと長い鼻面をひくつかせ、片目のワーラットは言った。
「お前達とは手を切る、そう言ったんだ」決然と男は答える。
「死鼠の力、この“片目のルソルク”の手助けなくして、この戦いを勝てるとでも?」言葉には嘲りの響きがある。
「ブラックレイク地区の人々は仲間になってくれた。もはや、ゲリラをする必要は無い」
「しかしネヴァーウィンター仮面、レジスタンスのリーダーその人が死鼠団に工作しろと命じたのでは?」
「“アラゴンダーの息子たち”のリーダーはこの俺だ! ネヴァーウィンター仮面じゃない!」
 怒りの声を冷やかすように、周囲を取り囲むネズミたちが笑う。

セイヴ:楽しそうだから、みんなを連れてきたいなぁ……。今、自分がネズミの姿で探して辿ってきた通路って、人間の大きさの仲間達が通れますか?
DM:そうですね……。通れることにしましょう。
エイロヌイ:とりあえず、もう少し話を聞いてみても良いんじゃないかな。

「そうだ、レジスタンスのリーダーはこの俺なんだ。そして俺は、サーイに死体を売ったり、ダークエルフと手を組むような連中とは、金輪際手を組まないと決めたんだ!」
「しかしねえ。あなたが仲間という“人々”とやらが、真のリーダーと考えているのはネヴァーウィンター仮面なのではないですかね?」
 もはや嘲りを隠そうともしていない。さざ波のようにネズミたちの嘲笑の声が下水に広まった。
「そして、自分のことをリーダーと思い込んでいる男が戦いのさなかに行方不明になったとしても大勢に影響は、ない」

ヘプタ/死鼠団:「ちゅーっちゅっちゅっちゅ(笑)」
セイヴ:なんだ、アーロンは良いヤツじゃないか。
サブマス/ジェイド:死鼠団との連携はネヴァーウィンター仮面の指示か……。
DM:そして、笑い声が止むとそのとたん、アーロンの背後に立っていた二人の護衛の膝が崩れ落ちます。
全員:『あ』
DM:彼らは、すでに事切れている。「何! いつの間に?!」とアーロンの顔色がかわる。だがその時、ルソルクが鼻を鳴らす。「なんだ? 臭うぞ、ラスカンのネズミか?」
セイヴ:ではそこで、姿を人間に戻します。「これが、連中のやり方だよ。見たかい?」とアーロンに。
DM/アーロン:「アンタはあの時戦ってくれた!」
セイヴ:「まあ、その後はあんた達のおかげで終われることになったんだがな」
DM:「貴様、ラスカンから来た使いか?」とワーラット。
セイヴ:「おまえら風情と一緒にされちゃ困るな……」と答えてから仲間を呼ぶ。「みんな、来てくれ。お呼びだよ」


このシーンのうらがわ
セイヴ:「おまえら風情と一緒にされちゃ困るな……」と答えて……。どうしたらカッコ良いかな? よし、後の方に叫ぶ「お呼びだよ、みんな!」
エイロヌイ:え? なにか段取りがあって姿を現したんじゃないの!?
サブマス/ジェイド:い、いそいで追いかけよう。なにかヤバいような気がする(笑)
ミシュナ:呼んでるような気がする(笑)
エイロヌイ:「この展開は意外だわー」(笑)
ヘプタ:間に合うっすかね?
DM:ええと、大丈夫です。しばらく後につきます。連中はまだセイヴのことを味方だと思ってるし、彼が来たと思っているラスカンは死鼠団の本家で恐れているので、仲間のあなたたちのことも遠巻きにしてます。

 ルソルクは値踏みするような目で死人のような顔色の男を見つめる。ネヴァーウィンターの死鼠でないならば、ラスカンの“キング・トイ”の使いか? だが、このような男がラスカンにいたか? そもそも、かぎ爪を持ち、真っ白な顔色のこの男は人間なのか?
「お前は一体誰だ?」根本の疑問を問いかける。
「名乗るようなもんじゃないよ」ヤツははぐらかそうとする。考える、ラスカンから使いが来るとしたら、たった一つ心当たりがあった。“キング・トイ”に進言したあの一件である。
「てっきり、あの鬱陶しいエースを始末したって話を持ってきたのかと思ったんだが」
しばしの沈黙の後、そいつは答えた。
「そんなヤツもいたな」
「ってことは、……死ンだんだな」

DM:と、ルソルクはエースが死んだことを聞いて喜ぶ。
サブマス/ジェイド:あ、そうか。エースは死んでレヴナントのセイヴになっているから外見が変わってて、それでルソルクはセイヴがじつはエースだったってわからないのか。セイヴ:口調も違うしね。

「親分はな、ネヴァーウィンターの連中がアガリをロクに納めないっておかんむりだ」エースのことなど取るに足らぬことのように、目の前の男は言葉を続ける。
「そ、そんなことはない。送ってるさ。……まさかアンタ、監査に?」ひくひくと神経質に髭が動く。
「ネヴァーウィンター仮面、とやらと組んでるようだが、そのことは聞いてない。隠し事があるようだが?」
「ま、待ってくれよ。この街はひどく込み入ってるんだ。俺たちも思うとおりには稼げないんだよ」
「親分が言ってるのは、『金を出せ』ってコトだけだぜ」

DM:ではここで〈はったり〉をお願いします。
セイヴ:無いんだよね……一応難易度18まで成功。
DM:いまのところ、死鼠団の他の連中も真偽を図りかねてか遠巻きにして攻撃は仕掛けてこない。「……あんたさんは、いったい何ものなんだ? 名前くらいは聞かせてもらえないかね」
セイヴ:えーと、「名乗るような名は無い、お前達も知らないだろうしな」と……。
エイロヌイ:……ここでさー、名前呼んで出てったらダメかなー。
ヘプタ:「セイヴのアニキー!助けに来たッすよー!」(すたすた)
ミシュナ:(爆笑)
セイヴ:今、語る名はないって言ったのにっ!
DM/ルソルク:「!? そんな名前の奴は聞いた覚えがねえぞ? テメエ、ラスカンの死鼠じゃねえな。殺ッちまえ」
セイヴ:「へッ。アラゴンダーの息子たちだけじゃ済まなくて、同族もやるってのか?」武器を抜いて、構えを取る。
DM/ルソルク:「そ、その構えは!?」というわけで、イニシアチブどうぞ!


ネズミ退治
セイヴ:けどさー、これ実際どんなもんでしょうね。カッコいいから前に出たけどイニシアチブ次第じゃフルボッコですよ。

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 先行したセイヴは赤のベースのミニチュア。仲間達は手前にいる。完全な分断状況である。
 セイヴのかたわらにはアーロンがいるが能動的には戦闘に参加しないとのこと。それでもPC側としてはアーロンが巻き添えになって殺されたりすることは避けたい。
 敵はルソルク(ワーラットの強盗)、配下の“走り回るワーラット”が2体、そして雑魚のジャイアント・ラットが9体。
 セイヴの危惧通り、イニシアチブを取られた上で先行するセイヴに攻撃を集中されるとだいぶ厳しくなるだろう。
 ワーラットのルソルクは毒を塗ったモーニングスターもさることながら、噛みつきによる継続ダメージ+減速、そして病気がイヤらしい。さらに、

サブマス/ジェイド:再生5! 止められるのは銀の武器!? 銀の武器なんて久しぶりに聞いたよ、持ってないよ!
エイロヌイ:あったねえ! 銀の武器。

 古い版からの二人が気づいて頭を抱える。獣に変身するライカンスロープに有効な打撃を与えられるのは銀の武器というのはD&Dの基本なのだが、すっかり忘れていたのである。
 イニシアチブ順が確定する。
 ジャイアント・ラット、走り回るワーラット、ミシュナ、ジェイド、ヘプタ、セイヴ、ルソルク、エイロヌイ。ルソルクの前にセイヴが動けるのは救いである。

セイヴ:大丈夫、再生する前に削りきる!

 戦端を開いたのはジャイアント・ラット。文字通り四方八方から冒険者たちに襲いかかる。雑魚は数を出してナンボですよ! と開眼したDM岡田によってミシュナ以外のPC達に平均2体が飛び込み、噛みつく。そして、配下のワーラットが下水道を駆け抜け、まだ準備の整わない前線の隙間を抜けた。

DM:「俺たちはこのかよわい女とNPCを狙うぜ!」。

 片方はセイヴのいる方へ、もう片方は足止めにと後発集団に向かう。ミシュナには外れたが、アーロンにはヒット。

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DM:「死鼠団がこんなに卑劣な連中だったなんて!」
全員:『最初から気づけよ!』
DM:で、ミシュナの手番ですが?
エイロヌイ:どうする? ヘプタの後まで遅らせれば、射界からどいてくれると思うが?
ミシュナ:いえ、一歩下がれば“噴射5”に敵を納められます。
DM:しまった、みすみすと理想的な状況に雑魚送りこんだ!?
ミシュナ:「ほのかに燦めく色さまざまな糸が敵の心にからみつき、操る!」“ビガイリング・ストランズ/惑わしの網”!

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 ダメージこそ低いが、敵味方を識別する噴射5の範囲魔法は雑魚掃討としてこの上ないパワーである。果たして、ミシュナは集まった雑魚ネズミの半数を墜とした。
 群がる雑魚がすでに脅威でなくなったと判断したジェイド、次に考えるのは前方で孤立するセイヴのフォローである。仲間を任せられるか? もう一人の防衛役エイロヌイとのアイコンタクト。

エイロヌイ:「そっちは私が行きましょう」

 ならば自分が討つのはミシュナを狙ったワーラット。“ディフェンダー・オーラ/防衛のオーラ”を起動して牽制しロングソードを振るえば――

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 クリティカル・ヒットである。パワーストライクも併用して一気に重傷へと追い込む。流れは我にあり。今こそ好機とアクション・ポイントを使用して畳みかける――!

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 『さすがだよな、俺ら』温かいコメントが流れる中、ヘプタが行動を開始する。
 かたわらのエイロヌイを連れて“ステップ・トゥギャザー/一緒に一跳び”。セイヴのフォローに動きつつ、ジェイドの前を塞ぐ雑魚をクロスボウで始末する。
「死鼠だった俺に、死鼠の殲滅依頼がくるとはな!」下水の流れの中にいたセイヴは注意深く雑魚を一撃、アクション・ポイントでさらに一撃して。包囲を切って水場を出る。。

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DM/ルソルク:「馬鹿な! 九体いるジャイアント・ラットがすでに七体もやられただと! 6秒も経たずにか!?」

 古いセリフでD&Dユーザのおっさん度数を確認してから、ルソルクは動く。
 一匹残ったワーラットとセイヴを挟撃し、その牙で無茶苦茶に噛みついてくる。“レンディング・バイト/引き裂く噛みつき”の技である。果たして、セイヴは12点のダメージを受けた上に動脈を噛み裂かれて継続ダメージ5、減速状態となった。

DM:このセーヴに失敗すると、問答無用で汚穢熱にかかります!
セイヴ:死人なのに病気になるなんて(笑)

 ここでセイヴのフォローを引受けたエイロヌイが技を見せる。ヘプタのステップ・トゥギャザーで出現した位置から、まずはワーラットに“ディヴァイン・チャレンジ/信仰の標的”、さらに“ダズリング・フレア/目眩む閃光”。閃光が目を灼く。
 そう、信仰の防衛役エイロヌイは隣接することなく敵をマークし、報いをぶつけることができるのだ。

エイロヌイ:アクション・ポイントを使って突撃。ヒットして6点。で、ワーラットに向かって「にゃあ♪」とサービス。

 第二ラウンド。
 岡田DMの出目は走らず、雑魚はヒットするが大勢に影響なくワーラットの攻撃は空を切る。ミシュナは再度ビガイリング・ストランズで雑魚とワーラットに命中させる。続くジェイド、ヘプタも順調に攻撃を後列のワーラットに集中させる。結果、こちらのワーラットも沈んで残りは雑魚少々とルソルク、ワーラット一体。
 セイヴは継続ダメージを鑑みて、新パワー“オーク・スキン/樫の肌”を披露。その肌が立木のように硬くなり、流れる血も樹液に変わる。ダメージ減少3を獲得し集中攻撃や継続ダメージに対抗するという寸法だ。自身を挟撃するワーラットへの攻撃は失敗したが、ターン終了時のセーヴィング・スローには成功、出血が止まる。
 怒り心頭のルソルク、もう一度噛み裂いてやるとセイヴにレンディング・バイトを試みるが痛恨のミス。

DM:ああああ! 人間だったら“ヒロイック・エフォート/英雄的奮闘”できるのにッ!

 最後のワーラットはエイロヌイが始末。ルソルクにディヴァイン・チャレンジ。戦況はだいぶこちらに傾く。ミシュナが、ヘプタが雑魚を始末する。ジェイドは狙われているセイヴに“テイク・ハート、フレンド!/勇気持て、友よ!”。

サブマス/ジェイド:ようやくへプタやタラン以外にフラグ立てたぞ!

 しかし視聴者コメントは『だが男だ』と総ツッコミ。
 そしてついに因縁のセイヴが本気を見せる。

セイヴ:ロングソードがヒットして12点、左手のショートソードで追い討ちしてさらに7点!
DM:く! では、ルソルクのターン。マイナー・アクションで“チェンジ・シェイプ/形態変化”、ネズミになって疾走、ここを離脱します。
全員:!
エイロヌイ:機会攻撃はあたって10点だけど……。
DM:落ちない! ヤツはそのまま下水の石組みの隙間を抜けて逃げていきます。人間のままでは追いかけることはできません。そしてさらに声が聞こえて来る!

「おっと、置き土産を忘れたぜ!」
 どこか、地下道の向こうから、人の姿に戻ったルソルクの声が響く。続いてなにか機械仕掛けが作動する音と、微かな地響き。
「気を付けろ!」
 セイヴが叫んだときには遅かった。
 奥から黒い水が吹き出してきて、その場にあったもの、ネズミの死体やゴミ、そしてもちろん冒険者たちを一気に押し流していく。
 トンネル全体を押し流す濁流に、抗うことなどできようはずもない。
 黒い汚水に翻弄されて、冒険者たちは意識を失っていったのである。

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幕間:ネヴァーウィンターに潜む闇
 そこがこの土地のどこにある場所なのか。
 地の底(アンダーダーク)にある大空間なのか。
 それともネヴァー城の奥深くにある広間なのか。
 高く広い円蓋には青緑の光が燦めき、生き物とは思えぬ和声が谺している。
 床には敷石が円陣を描いているが、刻まれたルーンはおよそこの世界のものとは思えぬほどに歪つで禍々しいものであった。
 円周を4つに割って、4つの影があった。三つまでは人影、もう一つは異形。

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 一人は赤い衣をまとったエラドリン。
 その四肢はミイラの如く痩せて骨が浮き上がり、その骨に貼付くようにして残る肌は命無きなめし革のよう。赤い衣は彼女がサーイの魔術師であることを示し、ミイラの如き四肢は彼女がすでに暖かな血を失って久しいことを示している。

 一人は伊達な衣装を着こなしたドラウ。
 頭には羽根を添えたつば広の帽子。眼帯で覆われていない方の目には剣呑な輝き。革の鞭を束ねたような肢体はこの剣客の腕を物語る。

 もう一人はヴェールを被った女性。
 質素だが手入れの行き届いた衣は、この場所には似つかわしくない。あるべき場所は療養所、修道院。ヴェールの影から覗くのは麗しき微笑み。神々しいとすら言えただろうその慈愛の笑みは、この魔境にあってはむしろ淫蕩めいて禍々しい。

 そして、異形。
 おそらくは実像ではなく、この場に投影された映像であろう。燐光を放つ粘液の上に浮かぶのは、知るべきでない知識、得るべきでない力でぶよぶよと膨れあがった器官であった。それを脳髄に似ていると形容するのは生けるものとその知識への冒涜に他ならない。

 息を荒げてこの広間に駆け込んできた者がいる。
「邪魔者は始末しました!」ところどころ発音が不明瞭なのは、ネズミの鼻面が人の言葉を発するには適していないからだろう。片目のルソルクである。
「死体は見たのか?」
「は?」
「い、いえ。しかしこの下水に流されまして……」
「死体は見たのか、と聞いたんだ」
 くく、と尋ねたドラウは笑い、芝居がかった仕草でつば広の帽子を取った。綺麗に剃り上げた黒い頭皮に青い光が照り返す。
「……申し訳ございません」ルソルクは答える。じわじわと汗が流れるのを感じる。
 掠れた声で感情を伺わせず、サーイのエラドリンが呟く。
「温かい血を流す連中はどうにも詰めが甘い。命というものは息吹、鼓動が止むまではなんとも油断のならぬ、ままならぬものだと言うのに」
『ショセンハ、ねずみトイウコトダ。オロカナぶかヲモツトクロウスル』
 その同意は喉を使って話された言葉ではない。この場にいるものの脳裏に明確な指向性を持って放たれた思考であった。発声器官など、この異形は必要としないのである。
「とはいえ、この男もネヴァーウィンターの下水道を知り尽くし、そして支配するもの。その言葉は信じましょう」
 助け船を出したのは慈愛深きヴェールの女性。安堵して顔を上げたルソルクは、まばたきもせずに自分を見つめるヴェール越しの眼差しに総毛立つ。彼女の瞳の奥にあるのは紛うことなく狂気。この世にありてこの世ならざるものを見つめそれを奉じる狂気である。
 ヴェールの女は言葉を続ける。
「いよいよ、この地にて“宴”が始まるのです。今は行く末を見守りましょう」
「さてさて、そううまく行くかどうか」ドラウは沸き立つ心を隠そうともしていない。「あの呪痕使いの仮面騎士、なかなか手強いぞ」
「仮面の偽騎士は呪いの王冠の力に取り込まれつつある。殺人衝動に屈するのも時間の問題だろう、新たに得られた戦士の死体は我らが頂く」答えたのはサーイのエラドリン。やはり言葉は素っ気ないが、僅かに抑揚があるようなのは、彼女もまた“宴”に心を躍らせているからか。
「さすれば、新たな呪文荒廃が街に吹き荒れるでしょう……。蒼い炎が街の民を焼き、ひき歪めてゆくのです!」言葉を続けるヴェールの女、その貌は陶然として宗教的な法悦すら浮かんでいる。
『じゅもんこうはいヲイキノビタものハ、ワレラノどれいトナル』
「皆々様への伝令役は、この死鼠団、片目のルソルクにお任せを!」

 闇に集うものどもが、一同心得てうなずけば、異形なるものの和声がさらに天蓋へと谺する。
 嗚呼、ネヴァーウィンター。
 この街の闇は、冒険者たちの想像を超えてなお、深い。

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