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ダンジョンズ&ドラゴンズ 『ネヴァーウィンターの失われし王冠』リプレイ -第5回-

2014/01/07 17:33 投稿

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荒廃のドラゴン、王冠の力
 翼ある大蛇は冒険者の前に舞い降りた。
 真珠のような鱗は、血と青い炎とでぎらついている。着地の衝撃で、冒険者たちは思わず後ずさる。ドラゴンの目には青い炎と残忍な飢えが宿っている。そいつは順々に立ちふさがる者を見まわすと、冠を戴いた戦士を睨みつけた。
 しかし彼はびくともせずに仁王立ちし、剣を掲げ、言った。
「我が都より失せろ!」

全員:言い切った!
エリオン:自分の都だって、断言しちゃった。
DM:するとドラゴンの方が気圧されたかのように一瞬びくりと震える。

 この貴重な時間のうちに、冒険者たちは息を整え戦いに備える。シーンとしては前回のセッションからつながりので小休憩は挟めないが、[遭遇毎]パワーを1つ回復でき、さらに戦闘開始時の位置を再配置できるのである。
 さらに冒険者たちは目の前の竜について、それぞれの記憶をさぐる。

ミシュナ:あー、〈魔法学〉判定は12……。「こんなの学校で習わなかったよー」
エリオン:ミシュナンガイドが落丁! あ、エリオンは20ですが?
DM:パワーまではわかりませんね。ちょっとヤバイかも。
セイヴ:ドキドキだね!

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 明かされたのはこの竜が3レベルの暴れ役、単独クリーチャーであると言うこと。サイズこそ巨大となっているがこれは荒廃クリーチャーの魔力によるもので、データそのものは大型クリーチャーとして扱うということだった。
 ネヴァーウィンター仮面はこのドラゴンを頭に頂く王冠の魔力で従えようとしている。しかし、その試みは成功しそうにない。魔力の流量を見て、ミシュナはそう判断する。
 
 一方、ヘプタは路地裏で生き抜いてきた観察眼、つまり〈看破〉でこの“ネヴァーウィンター仮面”の真意を見抜く。
 仮面の男は真剣だ、この街を守ろうと、その身も心も捧げるだろう。剣の腕も魔法の才もその自負を支えるに足る。

 竜を恐れて後ずさる群衆達は、仮面のかたわらにいる冒険者たちに望みを託す。

DM:民衆達は君達の行動を見ているよ、ジェイドが物陰にいるのもね!
ジェイド:ああ、わかったよ! 前に出るさ、出てやるさ(ヤケ)
エリオン:ジェイドさんカッコイー。
エイロヌイ:ちょっとォ、5マス以内に来ないでよー。ブレス巻き込まれるから。
ジェイド:アッハイ。
エリオン:あれ、このミニチュアは?
DM:ジャーヴィです。「これはスゴいぞ! 見ておかないと!」
全員:逃げろよ!
ジェイド:ううう、結局主人公なのに一番うしろ……。
セイヴ:つまり、敵を惹きつけようとしているんですよ!
DM:なるほどね、それにジェイドはいずれ正体を明かすときが来るかも知れないのだから、みんなの見てる前でイイトコロ見せましょう!
ジェイド:わあい、俺カッコイー(涙)

 突如、仮面の騎士がよろめいた。
 竜と仮面とをつないでいた魔力のつながりが途切れ、兜の下、仮面の隙間からたらりと血が流れ出してくる。
「く、しくじった」
 退いたのは騎士であった。竜の双眸に怒りが燃えあがる。


大乱戦
 ネヴァーウィンター仮面は頭を振って立ち直り、ドラゴンを正面から睨め付ける。今はまだ間合いの外だ。武器が届く位置に来るまで、待つ。

 果たして白いドラゴンは動いた。

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 本能に突き動かされた突進、“本能的大暴れ/インスティンクティヴ・ランペイジ”である。しかし本能的な動きであるがゆえに竜は、恐るべき相手すなわちネヴァーウィンター仮面を避けた。狙うのは妖精騎士エイロヌイとその侍従である。
 エイロヌイは顔色一つ変えはしない。それどころか、地上へと舞い降りようと不用意に動いた竜のその鼻面に光芒放つ突きを放つ。鮮血が一筋。しかし竜の怒りの前にはかすり傷に過ぎない。
 返礼とばかりに爪が振り下ろされる、突きを放ったエイロヌイの背は剥き出しのまま。その爪と主の間に侍従のタランが身を躍らせる。
「うあ、マジ痛ぇっス。死ぬかも」
 緊張感のない苦痛の声を上げ、侍従はふっと消え失せた。残すべき死体も何もそこにはない。
『タラン!』
 主以外、その場にいた全員が悲鳴を上げた。
 いや、もう一人。冷静に動く男がいる。既に死の世界に身を預けているがゆえ、彼は死に冷静に対処できるのだ。
 大地に降り立ち、周囲を睥睨する白竜に死人、セイヴの影が猛進した。
「的がデカイのはありがたい、外しっこない!」
 その身に帯びるのは“雄羊の相/アスペクト・オヴ・ラム”、力を込めた長剣が深々と竜の足を切裂く、流れるように小剣が更に深く傷を切裂けば、竜の巨体がバランスを崩してたたらを踏む。
「先陣は切ったぜ、後は任せた!」

 仮面の騎士は歯噛みしていた。竜が近づくのを待ってバルコニーの上にいたが、その竜が王冠の力を恐れて地上に降り立ってしまった。幸い冒険者たちが食い止めてくれているが、このままでは市民に被害が出てしまう。
 建物の中の階段を下りるか? いや、それは遅い。バルコニーから飛び降りたほうが早い。しかし、着地に失敗すれば……。
 焦るネヴァーウィンター仮面の耳に涼やかな音が聞こえた。
 衣擦れと留め具や鎖の鳴る音が、優美な歩みと動きによって軽やかな楽の音となっているのだ。振り返るとそこには一人のサン・エルフがいた。
「我が弟、ディロンが告げた。私の助けを必要とする者、鎧に包まれたか弱き炎がここにいると」
 エリオンはそう言って、ネヴァーウィンター仮面の肩に手をかけ、そして異界に渡る。現界した場所は白竜の足下である。
「詳しい話は後だ」
 剣を抜き放ち、エリオンは魔剣の一撃を見舞う。閃く剣から放たれた陽光は倒れた竜の目を眩ませる。ブレードシンガーの基礎、剣術呪文“ダズリング・サンレイ/灼眼陽光剣”だ。
「ありがとう、サン・エルフよ!」
 仮面の騎士は援軍に答えると、胸を張り大きく叫んだ。
「民よ! ネヴァーウィンターのともがらよ! ともに戦おう! 」そして、炎と冷気を帯びた剣を竜に突き立てる。
 わあっ、と群衆が応え、手に手に雑多な武器を取った。そして、地下道から出現していた、人のなれの果てやドレイク達に立ち向かう。

「よくもタランをやってくれたわね。これは高くつくわよ」
 すう、と唇を笑みの形に歪めドライアドは囁いた。そして、

エイロヌイ:まず“ディヴァイン・チャレンジ/信仰の標的”でマーク、次にマイナー・アクションで「タラン!」と手を叩いてタランを召喚。
全員:ええええええ!
DM:さっき死んだんじゃなかったの!?
エリオン/タラン:「二秒ぶりッス!」
エイロヌイ/タラン:「いや、自分多分二人目ッスから」。というわけで今日の分の“サモン・シー・アライ/シーの味方の召喚”でタランを挟撃位置に召喚した。それから“エンフィーブリング・ストライク/腕痺れさす打撃”。クリティカルして13ダメージ! 命中に-2させてもらう。
DM:挟撃位置で殴られたなら割込で反撃! 尻尾で殴ってエイロヌイに5点と5マス押しやり!
エイロヌイ:「好都合ね」と笑う。次に私以外を殴る時にはさらに命中-4、そしてダメージ。しかも、もうあなたの間合いの外にいるから移動しないと攻撃できない。

 物陰に隠れてがたがたと震えていたヘプタだが、光る聖印に導かれシックルでドラゴンに斬りつける。鎌の刃は倒れた相手の鱗を切裂き、コアロンの裁きが刻まれる。
 だが、ドラゴンはやはりドラゴンであった。
 竜は立ち上がり、極寒の冷気を足下のヘプタとセイヴに吐きかける。目を灼く陽光と、信仰の力。そして力を奪うエイロヌイの打撃により、その攻撃には多大なペナルティ(具体的にはダズリング・サンレイで-2、エンフィーブリング・ストライクで-2、そしてディヴァイン・チャレンジで-2の計-6)が課せられていたが、それでもヘプタはまともに冷気を受けて悲鳴を上げることになった。見れば足首から先が氷に埋もれている。減速状態である。
「報いを受けよ!」
 エイロヌイが裁きの言葉を口にする。彼女の神、すなわち自然神シルヴァヌスの庇護にあるものを傷つけたがゆえに、神威がドラゴンを打ち据える。ますます怒りに火がついたドラゴンは、その怒りに任せてアクション・ポイントを消費。追い討ちをとへプタへ左右の爪を振り下ろす。だが、-6のペナルティは大きい。

ヘプタ:「助かったッす!」

 ミシュナは冷静に状況を観察している。
 この竜の戦術で一番手に負えないのは、飛行してのブレス攻撃。手の届かぬ上空から冷気を吐きかけられては、空を飛べぬものになすすべはない。
 ゆえに、その翼を奪うことにした。
 彼女は杖を振りかざし、正確無比な呪文詠唱を行なう。一声、竜の平衡感覚に揺らぎが生じる。

 竜は突然のめまいに頭をもたげ、戸惑いの声を上げる。天と地が逆転し、再び地面へと倒れ伏す。いや、違う。大地に開いた裂け目へと飲み込まれつつあるのだ。
 ごおう、と唸り四肢を踏ん張るが、上半身を起こすので精一杯であった。無意識が裂け目へ落下し続ける体を知覚する限り、その場から動くことは叶わない。
 幻影の技、“ファントム・カズム/幻の地割れ”の術である。
 そして、魔術師は畳みかける。アクション・ポイントからの“エンパワーリング・ライトニング/霊力付与の雷光”。時宜を得た豪雷が竜を貫いた。

 電火が肉を灼く。その衝撃が竜の生存本能を起動させる。ヒット・ポイントが半減して重傷に突入、生命の危機を感じた竜のドラゴン袋に元素の力が満ちる。そして呪文荒廃の青き魔力も。
 青き炎が炸裂し、広場を薙ぎ払った。
 既に吹き飛ばされていたエイロヌイ、距離を取っていたジェイド以外が炎に巻き込まれる。
 冷気と炎が英雄達の肌を焼き、肺を凍らせ、吹き飛ばす。

「大丈夫だ! 戦えるぞ。俺はあんたを信じている!」
 朦々たる凍気を裂いて、ジェイドの声、“テイク・ハート、フレンド!/勇気持て、友よ!”が届く。がたがたと震えるヘプタの足にその声は染み渡り、一本の芯が通った。
 ――立てる!
 顔を上げたヘプタの目に、ドラゴンへと突撃するジェイドの姿が映った。斬りつけた尾が反射的にジェイドを薙ぎ払おうとするが、彼はそれを正面から盾で受け止め、持ちこたえた。
 重傷となった竜の目が真っ赤に血走る。“サヴェジ・ブラッド/血の暴虐”の予感に冒険者たちは総毛だった。17以上の出目でクリティカル、それは剣呑この上ない


幕間:正義無き館にて
 同時刻。守護卿区の正義の館にある浴場。
 ネヴァーウィンターにあって、唯一ネヴァレンバーが己に蕩尽を許したのがこの大浴場であった。
 広い浴槽には香草が散らされ、温浴室からは香油が香る。
 温水の中に長々と足を伸ばし、ネヴァレンバー卿はその頭を薄衣一枚まとっただけの美女の膝に預けていた。美女は慣れた手つきでゆっくりと彼の髭をあたっている。
 そのくつろぎの時間を、緊迫した声が破る。
「守護卿殿下!」
 女が剃刀を外した。ネヴァレンバーは眉をしかめる。
「何事か、風呂に入っている間は、我を煩わせるなと言っておいたはずだ!」
「で、ですが、城下にドラゴンが!」
「ドラゴンだと? お前は一体何を……」思わず立ち上がる。
「ブラックレイク地区にございます。港湾部にドラゴンが襲来し、町を破壊しています。報告では鱗の色は白」
「ふむ……」守護卿は報告を反芻し、再び浴槽に身を沈めた。
「ブラックレイク地区ならば、あそこを拠点とする反乱軍どもが戦うだろう、うまく行けば共倒れが狙えるか。兵を出すにしても、一歩待つのは手だな」
「そ、それが。確かに現地にて立ち向かうものがいるようなのですが、そやつ、仮面の騎士ネヴァーウィンター仮面が、ネヴァーウィンターの王冠を戴いているというのです!」
「なんだと!」ざばりと湯を蹴立ててふたたび立ち上がるネヴァレンバー。湯けむりがあれこれを隠す。
「失われし王冠が……、現れただと? く、すぐにセイバイン将軍を向かわせろ! その王冠とふざけた仮面の正体を探らせるのだ!」
 命を受けて、兵士は飛び出して行く。
 湯船にもう一度肩まで浸かり、守護卿は呟いた。
「ネヴァーウィンター仮面、いったい何ものなのだ……」


戦いの行方
 竜が幻影に戸惑う今こそが、英雄達の勝機だった。
 冷気と炎の炸裂に吹き飛んでいたセイヴが再び突撃する。が、体が凍気に痺れたのか後一歩、踏み込みが浅い。具体的には、

セイヴ:あー、1が出た! 絶対外れだ……。
ヘプタ:「アニキ、違う、今ッす!」さっき当てた“レヴィ・オヴ・ジャッジメント/裁きの宣告”の効果を使用します。もう一度その攻撃を振り直し!

 シックルの刃先が刻んだコアロンの裁きが輝き、セイヴの刃を導く。

セイヴ:デュアル・ウェポン・ストライクもヒットして、計20ダメージ!
エリオン:さっき吹き飛ばされたからちょっと遠いんですよね……では、さっきの氷のかけらを拭って言います。「どうやら、私を本気にさせてしまったようだな」
全員:おおー!
エリオン:「我が魔剣の鎮魂歌(ブレードソング)を聞くが良い!」で、ブレードソングを発動し、それから“レイ・オヴ・エンフィーブルメント/衰弱光線”を撃ちます。えっとカッコいいこと言ってから外すと何だから、当ててからカッコつける(ころころ)。
DM:それはあたらない!
エリオン:とりあえず半減ダメージ3点だけ、決めぜりふはとっておきます。今のは小手調べで、アクション・ポイントからの突撃です。あたってダメージは最大、ダズリング・サンレイ載せて21点!
DM:すごいな! 1レベルでもここまでできるのか! 尻尾の反撃は外れた。
エイロヌイ:では動きます。タランも動いて挟む位置に。機会攻撃するならどうぞ。
DM:ぐぐぐ、これでタランを殴るとディヴァイン・チャレンジでダメージ受ける……。でも頭に血が上ってるからやりますよ!タランへ爪!
エイロヌイ:そして今、ドラゴンは命中に-8のペナルティです(DM:悲鳴)。外れたなら8点の[光輝]ダメージ♪

 自然の輝きが、魔力が竜を討つ。妖精騎士は言った。
「あなたには自然の厳しさを知って貰わねばなりません」その瞬間、豪奢な髪が風に揺れ、神々しいばかりの美しさ、“ハマドライアド・アスペクツ/ハマドライアドの諸相”がその場にいる敵すべての目を奪い、戦術的優位を与えた。もちろんドラゴンも例外ではない。
 そして、彼女の美貌と信仰の心から放たれる光の奔流“レイディアント・デリリウム/惑乱の煌めき”がドラゴンを飲み込んだ。
 そして、さらにアクション・ポイント。胸の聖印、常磐なるオーク樹の葉からさらなる光流“ダズリング・フレア/目眩む閃光”が放たれる。
 光の奔流の中、ドラゴンの断末魔が空に飲み込まれていった。

 竜の頭ががくりと力を失った。

エリオン:「我ら、フェイワイルドの力を持ってすれば、自然に反したドラゴンなど恐るるに足らん!」
DM:そこで! ドラゴンは大地にうずくまり、苦痛にうめく。
全員:!

 その瞬間、冠を戴く騎士は鋭い一声と共にドラゴンを指さし、魔法を唱えた。
 冒険者たちの目の前でドラゴンの体を覆っていた蒼い炎は消え失せ、動きが緩慢になってゆく。鱗の色が真珠の白から色褪せた灰色へと変わって行く。
 ドラゴンの唸りが、憐れみを催させる喘鳴となる。必至でもがくものの、それはなんの役にも立たない。
 呼吸を二つほどする間に、ドラゴンは広場の真ん中で動かなくなり、石像と化した。

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全員:おおー!
ヘプタ:新名物誕生ッすね。
ミシュナ:それはネヴァーウィンター仮面の魔法の力ですか?
DM:そのようです。
エリオン:あとは、湧き出している荒廃クリーチャーたちを!
DM:そちらですが、ネヴァーウィンター仮面に勇気づけられた民衆達だけでなく、新たに武装した集団が現れて、荒廃クリーチャーを打ち倒していきます。
セイヴ:ミンターンの傭兵か?
DM:いや、違います。
 
 彼らの鎧は貧相だったが、武器はまともなものだった。少ない金で武器を優先したのだろう。その中から一人、槍にネヴァーウィンターの旗を結びつけた男が木箱の上によじ登り、民衆に呼びかけた。

セイヴ:レジスタンス、アラゴンダーの息子たちか!
DM:その通り! 彼は言います「自称、守護卿に虐げ続けられてきた街の人々よ! わかっただろう、ネヴァーウィンター仮面は俺たちの味方だ!」

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もう一度の選択
 あなたの目の前で、木箱に立つ男は更に声を張り上げた。

「俺はナシャー・アラゴンダー王にかつて仕えていたネヴァーウィンター九勇士の末裔、アーロン・ブレイドシェイパーだ! 俺たち、“アラゴンダーの息子たち”がこの街に平和を取り戻すときがついに来たんだ!」
「こうやって、味方を作ってくってわけだな」
 隣でぼそりとセイヴが呟く。アーロン・ブレイドシェイパーとネヴァーウィンター仮面は顔見知りのようで、互いに肩を並べ民衆に応えている。
 ネヴァレンバーのいう“復興”は裕福な商人などが住む守護卿区を優先して行なわれていた。さらにそのために動員されたミンターン島の傭兵達と、もとの住人達との間には摩擦が絶えなかった。この街にやってきたとき、ヘプタやセイヴがどんな目にあっていたかをあなたは思い出す。ましてやここは復興からも取り残されたブラックレイク地区。ネヴァレンバーのことは皆、守護卿を自称する王位の簒奪者に過ぎないと見ているのだ。
 民衆達の声はますます高く、強くなって行く。
「自称“守護卿”とやらが俺たちに与えたものは何だ? 重い税と剣の切っ先だけだ! ヤツらが下水迷宮や川岸地区の化け物を駆逐してくれたって言うのか?
 街を我が物顔で歩くオークやドラウを追い払ってくれたか?
 ネヴァーデス墓地の死者に、安らかな眠りを与えてくれたか?
 俺たちは、ネヴァーウィンターの真の支配者が誰かを知っている。ネヴァー城の亡霊達もようやく浮かばれるときが来たんだ!
 戦の神テンパスよ! この戦いをご覧あれ!」
「どうもめんどくせえコトになっちまったなァ」これはセイヴ。
「俺たちここにいちゃまずいんじゃないですかね」ヘプタはおずおずとそのヘソにつけたニュー・ネヴァーウィンターのバッジを手で隠す。
「盾を掲げて、その胸元を隠しておきなさい」エイロヌイがあなたに耳打ちする。
「そして、俺たちには真の後継者たるネヴァーウィンター仮面だけじゃない。今日ここで一緒に戦った英雄達も味方になってくれるんだ!」

サブマス/ジェイド:ジェイドはあのバッジ付けているんですが、構わずにアーロンは紹介してくるんですか?
DM:はい。ここで仮面の騎士ネヴァーウィンター仮面は言います「君たちの戦いは申し分のないものだ。良ければこれを君たちに授けたい」といってアラゴンダーの息子たちのバッジを渡します。
セイヴ:つまり、ここでどこに所属するかを決めるってコトか……。

 選択肢は4つであった。ニュー・ネヴァーウィンターにつくか、“アラゴンダーの息子たち”につくか、適宜つかいわけるか、どちらにもつかず独立独歩で行くか。
 現統治者のネヴァレンバー卿は必ずしも聖人君子ではない。やり方は確かに強引なところもあるが、1/4とはいえこの街に治安をもたらしているのは彼だ。
 レジスタンスである“アラゴンダーの息子たち”は勢いに乗っている。そして王冠が本物ならば、彼らに協力しているネヴァーウィンター仮面は王家の血筋であり、レジスタンスに担ぎ出されるのも無理はない。しかし、ヘプタの話によれば指導者であるハーパーのキムリル亡き後、その行動は過激になり歯止めが効いていないという。
 バッジの使い分けというのは、両陣営からの利益を両方から得られる可能性があるが、仮にばれてしまったら双方の陣営から目の仇にされる。
 どちらにも与しないというのは、つまるところ何ら利益も得られないというやり方が。しかし、元に戻るだけ、とも言える。
 あなたは、悩む。
「昔ね、読んだ本に書いてあったんだ」君の背の後で、ミシュナがそっと助言を呟く。
「冒険者はね、結局は何にも属さない、独立した存在になるんだって。そのことがずっと心に残ってる」
「あなたは、どうするの?」

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このシーンのうらがわ
 ジェイドはこの二つの勢力から所属を示すバッジを与えられた。これをどのように使うかでこの先の展開が大きく変わる

問い:今後、どのバッジを付けるか

1):ネヴァレンバー卿、すなわち現政府の“ニュー・ネヴァーウィンター”
2):ネヴァーウィンター仮面、すなわちレジスタンスの“アラゴンダーの息子たち”
3):状況によって使い分ける
4):どちらもつけない



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 あなたは胸のニュー・ネヴァーウィンターのバッジを外し、ヘプタとミシュナからもバッジを受け取る。
「私は――」
 バイザー越しにネヴァーウィンター仮面の鋭い視線を感じつつ、あなたは一言ずつ言葉を口にした。

「私はこの街に来て、何もわからぬままにこのバッジを受け取った。そして今もまた新たなバッジが目の前にある。
 今は確かに選択の時だが、私自身が何かを決めるには物事を知らなさすぎる。この街で何が起こっているのかを私はこの目で見聞きする必要がある。
 だから、今は受け取れない」
 そしてあなたはニュー・ネヴァーウィンターのバッジを三つ、石像となったドラゴンの足下に並べると広場の民に告げた。
「セイバイン将軍にお伝え頂きたい。私は、ただの冒険者に戻ると」
「もったいないッす(涙)」

「お前の選択は聞いた」兜の奥から、あのしゃがれた声が答えた。その時にはすでにネヴァーウィンター仮面は剣を振り上げていた。
 一閃。
 王冠の魔力が燦めく、渾身の力で振り下ろされた剣の切っ先はあなたの眉間でぴたりと止まった。
 あなたもまた、動かない。
「お戯れを」と、どうにか答える。試されているのだと思った。
 ネヴァーウィンター仮面は、ゆっくり剣を納めるとあなたたちに背を向けた。
 空中から蹄の音が聞こえてくる。炎のたてがみ持つ魔の馬、ナイトメアであった。
「いずれまた、会うこともあろう」仮面はナイトメアに跨り、別れを告げた。

 ぐるりと、大きな回り道だったのかも知れない。
 結局あなたは、いずれの陣営にも属さず、支援も受けずネヴァーウィンターの街で生きて行くことにした。
 まだだ。
 まだ、わからないことが多すぎるのだ。
 たとえば、誰があの日家族を襲ったのか。
 信じるべき相手は、陣営はどちらなのか。
 行動を共にしている仲間達の素性すらも。

 ――もう、流されるのはお終いだな。
 
 あなたは、そう、思いを新たにした。


ジェイドの決断まとめ

初回:
 問い:成人の誓いはどの神に誓う?
 決断:“幸運の女王”タイモラに誓う。「身寄りのない自分が己の運命を切り開くのに必要」属性は善となる。

二回目
 問い:衛兵に絡まれているヘプタとセイヴ、あなたはどのように振舞う?
 決断:「兵士は横暴だ。あの二人に言い分がある。力ずくで助ける」

三回目
 問い:王権を証し立てるネヴァーウィンターの失われた王冠。これを前に、あなたはどうする?
 決断:「まだ正体を明かすべきではない」王冠は被らない。

四回目その一
 問い:あなたは自分がネヴァーウィンター王家の血を引くことを仲間に、明かすか?
 決断:まだその時ではない。明かさない。

四回目その二
 問い:あなたがネヴァレンバー卿の元に連れて行く、信頼できる仲間は誰か?
 決断:ネヴァーウィンターをよく知るヘプタ。ネヴァーデス墓地での事件の当事者であるミシュナ。

五回目
 問い:あなたは今後、どの陣営に協力するか
 決断:まだわからないことが多すぎる、どちらの陣営にも属さない。

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