皆様こんにちは、ニコ生D&D解説担当の塚田です。フォーゴトン・レルム世界の設定を解説するシリーズの第4回となる今回からは、今シーズンの物語の舞台となっているネヴァーウィンターの内外で陰に陽に活動しているさまざまな勢力を紹介していく予定です。そして今回は、すでに動画にも登場しており、今シーズンの物語に深く関わってきそうな、政府および反政府組織について解説します。それぞれの勢力のより詳しい情報は『ネヴァーウィンター・キャンペーン・セッティング』をご覧ください。
ニュー・ネヴァーウィンター
ニュー・ネヴァーウィンターは都市国家ネヴァーウィンターを復興させるためにダガルト・ネヴァレンバー卿が組織した集団であり、ネヴァーウィンターにおける事実上の政府と呼んでもそこまで間違いではありません(復興が完了しつつある守護卿特別区においては特にそうです)。ニュー・ネヴァーウィンターを支持しているのは、守護卿を自称するネヴァレンバー卿に雇われた作業員や傭兵、彼がウォーターディープから連れて来た商人や役人、そして守護卿を新たなネヴァーウィンターのリーダーにふさわしいと信じる地元民たちであり、単純な人口で言えば文句なしの多数派です。
しかし、1つの組織として見た場合、ニュー・ネヴァーウィンターはお世辞にも統制の取れた集団とは言えません。守護卿の部下たちのほとんどは単に金で雇われているだけで忠誠心など期待できませんし、今は守護卿に感謝している地元民たちも、彼が王座への野心を露にしたとたんに手のひらを返す可能性があります。また、ネヴァレンバー卿がウォーターディープを長らく留守にしている間に、政治的ライバルによってウォーターディープのトップの地位から追い落とされる危険も無視できません。その上、ニュー・ネヴァーウィンター内部に潜入している他の組織からのスパイは数えるのも嫌になるほどです(アラゴンダーの息子たち、死鼠団、アスモデウス教団、呪文荒廃に狂わされた地底の怪物、その他たくさん)。
DMやPCの(あるいは動画の視聴者の)立場からすると、ニュー・ネヴァーウィンターという1つの集団として捉えるのではなく、ネヴァレンバー卿とその側近、サビーヌ将軍率いるミンターン傭兵団、親守護卿の地元民というようにそれぞれ別々の勢力と考えた方が、市内の状況を把握しやすくなると思います。
アラゴンダーの息子たち
30年前に死に絶えたはずのネヴァーウィンターの旧王家の姓を冠するこの集団は、一言で言えば保守的な愛国者の集団です。彼らはネヴァレンバー卿のことを、どさくさまぎれにネヴァーウィンターを我が物にしようとする侵略者ないし厄介者とみなしているため、現在は反政府的な活動を行なっていますが、本来は善良な市民のはずなのです。
ネヴァーウィンターの北東1/4を占めるブラックレイク地区は噴火の被害が比較的少なかったため、噴火の後も市内に残った人々は主としてこの地区で暮らすことになり、今もこの地区で守護卿の干渉をはねつけながら暮らしています。ブラックレイク地区の住民のほとんどは、“アラゴンダーの息子たち”に所属していないとしても、ネヴァレンバー卿配下のミンターン傭兵団よりアラゴンダーの息子たちの肩を持つことでしょう。
そしてアラゴンダーの息子たちもまた、一枚岩ではありません。彼らに共通するのは「ネヴァレンバーがネヴァーウィンターの王になるのは気に食わない」ということのみであり、具体的にどういう行動を取るべきかについては意見が分かれています。それでも、ハーパーに属するキムリルがアラゴンダーの息子たちを率いていたころは何とかまとまっていたのですが、キムリルが謎の死を遂げた後は2つに分裂してしまいました(今シーズンのヘプタの導入シーンが、ちょうどキムリルが死ぬ場面でしたね)。
ナシャー派
分裂したアラゴンダーの息子たちのうち過激な方は、初代国王の名にあやかってナシャー派を名乗っています。彼らのほとんどは滅びる前のネヴァーウィンターを覚えていない若者たちで、親から聞かされた“北方の美しい都”の姿を信じ、将来は自分も廃墟を再建し故郷を守るために働くのだと信じていました。しかし10年前にネヴァレンバー卿が大人数を連れてやって来て以来、彼らの立場は“愛国心ある立派な若者”から、いわば“難民キャンプ育ちの哀れな少年”に落ちぶれてしまったのです。彼らの行き場のない憤りのはけ口として、アラゴンダーの息子たちという愛国的な活動はぴったりだったのでしょう。
そして現在のナシャー派は、ネヴァレンバー卿の支配体制を揺るがすための破壊工作、暗殺、暴動の扇動などを企てるテロリスト集団になりつつあります。さらに、彼らだけではネヴァレンバー卿が抱える戦力に到底かなわないため、相手をよく調べもせずに同盟を組んだり助力を受け入れたりする可能性が――そして相手のいいように操られ利用される可能性があります(ナシャー派がネヴァレンバー卿相手に派手なドンパチをやらかして、ネヴァーウィンター市内の情勢が不穏になることを喜ぶ勢力は数多く存在するでしょう)。
灰マント派
“アラゴンダーの息子たち”内の穏健派は、在りし日のネヴァーウィンター衛兵隊の制服に由来する灰マント派を名乗っています。こちらは比較的年配の人々が多いため、昔のネヴァーウィンターを美化することなく、綺麗な面も汚い面も含めたありのままの姿で記憶にとどめています。したがって彼らは、「ネヴァレンバー卿を街から追い出すのは現実的ではないし、彼の力なしに街を復興させるのは難しい」ということを理解しています。
灰マント派の現在の活動内容は、ネヴァーウィンターの伝統的な文化や風俗を守ることと、ニュー・ネヴァーウィンターの役人や衛兵を個別に味方に引き込んでいくことです。彼らは後者のために情報を収集し、買収や密約によって隠密裏に勢力を広げていって、ネヴァレバー卿が地元民の意見を無視した政策を実行できないような情勢を作り上げようとしていますが、その歩みは遅々たるものに過ぎません。
以上のように混沌としたネヴァーウィンターにおいて、旧王家の血を引く主人公J.D.の存在はどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか? それについては次回以降の配信をお楽しみに!
『水曜夜は冒険者!:マスタリングのうらがわ』
著:塚田与志也
監修:柳田真坂樹
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