野田稔・伊藤真の「社会人材学舎」 VOL.2 NO.3
コンテンツ
今週のキーワード
「自己信頼」
対談VOL.2 横田響子氏 vs. 野田稔
今の日本は少しバランスが悪いそのバランスを是正することで、
日本はもっと元気になる!
第3回 成功するために必要なのは、人脈と信頼
粋に生きる
3月の主任:「柳家小春」
第3回 正解もなく、終わりもない芸の世界を自分らしく
誌上講座
テーマ2 組織を活性化するリーダーシップ
第2回:人々をコミットさせるリーダーシップの源泉とは?
連載コラム
より良く生きる術
釈 正輪
第7回 毎日を幸せに、安心して過ごすために必要な智慧
Change the Life“挑戦の軌跡”
弁護士が挑んだ政治家への道
第3回 ネット広報と自転車、お金を掛けない選挙で善戦した
NPOは社会を変えるか?
第7回 子どもたちに慰められ、生きる力を与えられた人生
政治・行政にやり甲斐はあるか?
3月のテーマ:南相馬市の任期付職員は何を見たのか
第3回 政治と住民の距離はどのように縮めることができるのか
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今週のキーワード
「自己信頼」
「自己信頼」という概念は、2000年頃に、野田稔とリクルートワークス研究所の大久保幸夫所長との雑談の中から生まれた研究課題であった。
両者は、日本人は“今”ではなく、“未来”に対して不安になっていると感じていた。これではダメだ。将来にも自信が持てるようでなくてはいけないと思った。今の豊かさを失ったら、どこまで不幸になるかわからないという予感があった。この予感は残念ながら当たってしまう。
リクルートワークス研究所で数年にわたる議論を続け、同研究所主催のシンポジウムで、自己信頼の概念を発表した。
研究の結果、自己信頼を形成するには、3つの要素が必要であるとわかった。
1つは自己の能力に対する自信。これを得るには修羅場体験が必要だ。ある修羅場を潜り抜けることで、自分の能力に対する自信が生まれる。有能感だ。これが得られると、次の修羅場でもきっと何とかなるだろうと思えるようになる。
2つ目が人脈。自分の危機に際して、誰かが救いの手を差し伸べてくれた。その経験から、多分、次にそういうことになっても、きっと誰かに手を差し伸べてもらえるだろうという人脈、あるいはストレートに仲間に対する自信が具わる。実際に今、周りを見回してみて、「あいつらはきっと助けてくれるだろう」「私は彼らに頼られている」と確認できれば、自分は今もOKであるし、将来も多分、OKであろうと信じられる。
3つ目が将来に対する希望。「私はこうなりたい」「絶対こうなる」という強い意志が、人間を強くする。
この3つがあれば、自分の将来に自信が持てるという状態になり、さまざまな動機の源泉となる。これこそが、自己信頼なのだ。
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対談VOL.2
横田響子氏 vs. 野田稔
今の日本は少しバランスが悪い
そのバランスを是正することで、
日本はもっと元気になる!
本誌の特集は、(社)社会人材学舎の代表理事である野田稔、伊藤真をホストとし、毎回多彩なゲストをお招きしてお送りする対談をベースに展開していきます。ゲストとの対談に加え、その方の生き様や、その方が率いる企業の理念などに関する記事を交え、原則として4回(すなわち一月)に分けてご紹介していきます。
第2回のゲストは、株式会社コラボラボの代表取締役社長である横田響子さんです。
横田さんは、会員数1400人以上を誇る日本最大の女性社長コミュニティサイト「女性社長.net」を運営。また、J300と名付けられた女性社長が多数集結する祭典を主催。2014年には、共催で大企業と女性社長たちを中心としたさまざまなコラボレーションを仕掛け、日本を元気にしようと奮闘しています。政府の委員も務め、APECにも出席した横田さんは、いかにして認められたのか。すべては人脈づくりから始まったようです。
第3回 成功するために必要なのは、人脈と信頼
斜めの関係の先輩を選び
自らブレーンに指名せよ!
野田:人間って、どうしても環境に流されるところがある。そんなに強い人間はいないから、周りがチャレンジングであれば、引っ張られてチャレンジングになっていくものだと思うけど、逆に皆がぶら下がっていたいと思う環境にいれば、自分も自然にぶら下がってしまうものだと思います。そうした場合に、どうすべきだと思いますか?
横田:難しいですよね。私も結構流されるタイプです。だから、自分がラッキーだったなと思うのは、常に組織を超えて、他の部署・グループ会社の人、特に斜めの関係にある優秀な先輩と接触する機会があったということです。そこは本当に恵まれていたと思います。
野田:なるほど、外部と接触することにより、刺激を受けたわけですね。多くの場合は自分の部署に閉じこもって、井の中の蛙になってしまう。
横田:そう思います。自分が所属する部署、チームだけが世界ではないわけです。大企業の良さは、企業の中に、素敵な人がたくさんいる確率が高いということです。そういう人たちに出会うだけでも元気になるし、力が湧いてきて、気持ちも前向きになるはずです。さらに言えば、いろいろなアイデアをもらえるかもしれない。課外活動でもいいでしょうし、業務に関係してくる場合もあるでしょう。社内報を情報源にしてもいいかもしれませんが、この人、光っているなと思えば、積極的に連絡を取って、3カ月に一度でもいいから、ランチをしてもらえないか、お願いをしてみればいいと思います。
野田:自分でメンターを決めて、自分ですり寄っていくというわけですね。それはいいですね。
横田:大企業であれば、100人に一人は素敵な人がきっといますから、そこで斜めの関係づくりをする。これは、その場でいい人脈ができるというだけでなくて、人脈づくりそのもののノウハウを磨く方法でもあると思います。さらに続きがあって、その次には、その人が推す人とランチしてもらう。紹介してもらえれば一番いいですし、そうでなくても、推薦する名前を聞いて、自分でアプローチをしてもいい。
野田:それは、自分が認められたかどうかのメルクマールにもなりますね。
横田:そう思います。それで、少なくとも、狭い世界のムードに流されずに済むと思います。
社外の人脈を増やすには
新聞情報と口コミに勝るものはない
野田:社内の次は、必然的に社外での人脈作りということになると思います。ところが、これは慣れないと簡単ではない。社外には社内にはいない素敵な人がたくさんいる反面、いかがわしい人間もたくさんいる。いかがわしくはなくとも、自分には合わないという人も少なくない。ぱっと見では判断できません。そうした中で、素敵な人を見つけていく横田さんなりの方法がありますか?
横田:いくつかあります。1つは新聞情報ですね。実は、リクルート出身の先輩経営者に会う場合も、ソースは新聞記事でした。新聞に掲載されているというのが、いかがわしさを排除する1つの方法なわけです。
野田:新聞ですか。
横田:リクルート時代は今ほどインターネットも発達していませんでしたし、新聞をクリッピングしていましたね。辞めるときには会ってみたい人が何人もピックアップされていたわけです。女性社長ということで、ターゲットは決まっていましたから、難しくはありません。もちろん、海外も含めて、関連する本も読み漁りました。実際には会えなくても、本では会えるわけです。
野田:そうか、新聞か。新聞をフィルターに使っていたわけですね。
横田:とはいえ、新聞で紹介されている方というのは、どなたも忙しい方なので、お時間を作ってもらうのは簡単ではないので、その方法でたくさんお会いできたわけではありませんが、そんな中で、私なりに立てたポリシーがあります。ただお会いするのではなく、客としてまずはお時間を頂戴するというものです。
たとえば当時、留学アドバイスをする会社の代表をされていた平川理恵さんにお会いするために、共通の先輩から紹介してもらいましたが、ただ会ってもらうだけだと失礼なので、有料の留学相談の予約をしました。留学したい気持ちも1%はありましたから。面談の時間は2時間なのですが、半分ほど過ぎたところで、平川さんに「あなた、留学は本気じゃないでしょう?」と見抜かれました。それで「いやいや留学も考えていないわけではないので、情報収集も兼ねて相談にまいりました」と言いました。すると、「バカね。××さんの紹介なんだから、普通に会ってあげるわよ」と笑いながら言われました(笑)。
野田:律儀ですね。
横田:あるいは、起業塾を主宰されている方がいて、起業塾には興味がなかったのですが、説明会に出かけていって懇親会で少しお話をすることができました。そんなふうに、先方に極力迷惑を掛けないように、それでいて自分が生の情報を得られるように情報収集をしまくって、会える機会をみつけていました。
野田:なるほど。次は多分……。
横田:はい、口コミですね。信頼できる先輩が「あの人はいいよ」という人が狙い目なので、複数の人が推薦する人にはアンテナを立てておいて、会える機会をウォッチしていくという方法ですね。
野田:私もその方法ですね。これは絶対にいい方法だと思っています。類は友を呼ぶというか、なんとなく似たような人が集っている、つながっているものだからです。そのうちの誰かにコンタクトが取れ、お会いして、信頼を得られれば、後は順番に紹介してもらえる。シンプルだけど、これにまさる方法はないですよね。もちろん、最初が肝心で、そこでしくじると、後がなくなりますけど(笑)。
見られていないようで、多くの人が
人知れず見ているものだから、気張るしかない
野田:今の横田さんを見たときに、APECといった国際会議にも呼ばれて、内閣府・男女共同参画連携会議議員など政府の委員もやっている。昨年は、内閣府のチャレンジ賞を受賞して、中小企業庁の案件にも数多くかかわり、行革関連で若手が集まってディスカッションを半年かけて実施する「国・行政のあり方に関する懇談会」にも参加していますよね。ものすごいなと皆思うと思うのです。私もそう思います。しかも、非常に短期間でそうしたポジションに駆け上がっていった。ご自身で振り返られて、これはなぜできたことだと思われますか?
横田:突破口になったのは、やっぱりJ300というイベントです。最初はリーマンショックの後で、「何だか、世間が暗いな~」と思っていて、こんなときに自分ができることって何だろうと考えたのですね。それで自分の今の実力を考えると、女性社長を100人集めることができると。そこをちょっとストレッチして、目標を300人にしようと……。
野田:いきなり3倍にストレッチですが。さすがリクルート出身!
横田:立ち上げはジャパンポートLLPの東園絵さんと実施して、知恵を出し合いました。私自身はそれまでに多くの女性社長にお会いして、何となく、彼女たちの習性もわかってきていました。どれだけ忙しいかもわかっていましたから、ブレストを重ねて、細かく計画を立て、打てる手を打っていきました。それで最初のJ300を成功裏に開催することができました。
野田:準備にはどのくらい掛かったのですか?
横田:J300をやろうと言い出して、実施までは9カ月です。最初の3カ月でいろいろな機関を口説きました。スポンサーはあとで集めればいいと思って、スポンサーなしでスタートしました。それで経費を抑えなければいけないので、いろいろと協力を募りました。
結果、このイベントが思っていた以上に、いろいろな方に注目していただいたのです。メディアの方もたくさん来ていただきましたし、官庁の方もお忍びで来てくださっていたのです。そのうちのお一人が、民間から内閣府に入られた方ですが、1年ほど経ってからお見えになって、日本でAPECをやる際に女性リーダーイベントを実施するので協力してほしいと頼まれたのです。それでできるお手伝いをしたのですが、それをまた認めてもらえたという経緯があります。
野田:信頼を得たわけですね。
横田:そうですね。その1年後に内閣府の委員になったらどうかとお声がけいただきました。それからAPECのサンフランシスコ開催ですけど、これは正直、簡単に行けるものではありません。後から知ったのですが、実は素敵な方が推薦してくださっていたのです。一度、テレビ出演の際にご一緒した大手企業のある幹部の方が私の名前を挙げてくださって、省への候補者リストに加えてくださったのです。また、現場の官僚の方もこれまでの縁もありお声をかけてくださいました。その時の日本の代表団は10人ほどだったと思いますが、そうした、いわば上下からの推薦で私も末席に座ることができました。
野田:なるほど、そこで実績ができて、一回、いい循環に乗ると、何か失敗をしないかぎり、うまく引き上げられていくものですね。
最初にJ300にお忍びで官僚の人が紛れていたというのは、よくわかります。私も先日、社会人材学舎の設立セミナーを行ったのですが、その時も、終了後に出席者名簿を見たら、いろいろな人が来てくれていたのだということがわかりました。人知れず出席してくれていたマスコミ関係者も多かった。官僚の人もそうです。彼らはしっかりとアンテナを張っているのですよね。
横田:確かに、多くの人に実は見られているということを、後で知ることは多いです。
野田:官僚やマスコミというだけではなくて、もっと幅広く、結構、見られているものですよね。そこを信じて、しっかりと自分のやるべきことをやり続ける。そのことをぜひ、読者の方々にも知っていただきたいですね。
横田:そうですね。別に誰かに見られたいからやっているわけではないですけど、結果論としてはそう思います。
野田:もちろん、見られるためにやるのではなく、実直にやりたいことをやることでしょうね。
APEC U.S.A.2011 WOMEN AND THE ECONOMY SUMMIT
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