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「主人と一緒は嫌!」熟年離婚のお墓問題

2016/10/24 13:47 投稿

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赤トンボ、赤エビスビール、秋服のチラシ・・・カレンダーをめくった途端
秋まっさかりですね。
露木行政書士事務所・露木幸彦と申します。

さて、ここからが本題です。

このメールのバックナンバーは「ブログ」で読むことができます。
http://ameblo.jp/yukihiko55/


さて前回までは母親から父親との熟年離婚の相談を
持ちかけられた息子のことを紹介しました。

そこで問題になったのは「お墓」の問題。
老い先短い両親がどこの墓に入るのか・・・

それは意外を見落とされがちな盲点ですが、これはどういうことでしょうか?
今回はその続きからです。



<家族構成>(すべて仮名)
藤谷勇(78歳)年金受給者
藤谷美智子(76歳)専業主婦
藤谷圭介(46歳)勇・美智子夫婦の長男(一人息子)会社員で妻と娘(15歳)の3人家族



そして最後に残された離婚の懸案事項は「お墓」です。



ところで近年、高齢化社会の進行とともに「終活」と
いうキーワードが注目を集めています。

終活とは人生の老い支度という意味で、
例えば、葬儀や相続、介護や後見の希望をエンディングノートに
前もって書き残しておいたり、葬儀業者や信託銀行、
そして介護施設に対して「万が一のとき」の各種手続を
先んじて頼んでおいたり、私物を整理しておいたりするのですが、

もちろん「自分の遺骨をどうするのか」も大事で、
終活のなかにお墓のことは欠かせません。



ところで相談当時、勇さんは78歳、美智子さんは76歳。


いつ何があってもおかしくはない年齢ですから、
特にお墓のことは差し迫った問題です。

ですから、勇さんはすでに終活を済ませ準備万端でも
良いはずですが、実際のところ、どうだったのでしょうか?

勇さんはとにかくケチでお金大好き人間なので、
先々の墓より今のお金の方が大事だと本気で思っているので、
過去に圭介さんがお墓のことを尋ねたところ、
こうやって一笑に付したようです。

「そんなこと(お墓のこと)は死ぬ間際に何とかすればいいだろ。」



どうやら自腹でお墓を買うつもりはないのでしょう。


ところで勇さんは三男坊なので、長兄、次兄を押しやって
実家のお墓を引き継ぐことは可能です。


また勇さんは気性の激しさが災いして長兄、
次兄はもちろん、親戚中から距離を置かれているそうです。


そのため、勇さんが亡くなった後、圭介さんが叔父
(勇さんの長兄、次兄)に対して

「父の遺骨の行き先がなくて困っているから、
実家で引き取ってくれませんか?」と
頼み込むことも難しい状況です。

結局のところ、勇さんは何もせずに今日をむかえてしまったのです。


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一方、美智子さんの事情はどうでしょうか?

勇さん(三男)と違い、美智子さんは1人娘。


しかし、すでに嫁に出ている美智子さんが実家の墓を
守っていくことは難しいので、これは叔父に譲ったとのこと。


ただし、美智子さんは「夫と同じ墓に入りたくない」と
いう一心で、今から4年前(美智子さんが72歳のとき)に
両親の遺産から400万円という大金を叩いて、
自分名義の墓を購入したそうです。


もちろん、勇さんに知られないよう、内緒でこっそりと
動いていたのですが、美智子さんは離婚しようがしまいが、
隠し墓の存在を勇さんに知られないようにしたかったのです。


とはいえ、いかんせん勇さんは金目のものに
鼻が利くタチなので、圭介さんに対して
こんなふうに凄んできたそうです。



「そういえば、離婚したらアイツ、墓はどうするんだ。
行く先もないだろうに」と。



もちろん、圭介さんも墓の件を隠し通さなければ
ならないことは重々、承知していました。



しかし、勇さんの言葉には「どうせ行く先がないから
本気で離婚する気なんてないんだろう」という具合に
美智子さんの覚悟を鼻で笑っているように

圭介さんには聞こえたそうで圭介さんも積年にわたる怒りが
こみ上げてきて『誰のせいでこんなことに!』という
衝動に突き動かされ、思わず、こんなふうに言い返してしまったそうです。



「母さんの気持ちも考えて欲しい。
母さんは一緒のお墓に入るつもりはないから。

母さんのお墓は僕たちが守っていくから、
好きにすればいいじゃないか!全部あんたのせいなんだからさ」と。



圭介さんは勢いに任せて、ついつい墓の存在を白状して
しまったのですが、勇さんはどんな反応をしたのでしょうか?


勇さんは何も悪びれることなく、こう言い放ったそうです。


「おお、それなら俺も入れてくれよ」と。

「過去の行いを悔い改めることもなく、
よくもしゃぁしゃぁと言えたものだな」と。



圭介さんは呆れ返って何も言えなかったそうですが、
すでに圭介さんが「離婚交渉」のために勇さんの施設に
通い始めてから3ヶ月が経とうとしていました。


しかし、勇さんのずうずうしさ、無神経な振る舞い、
そして悪気のない暴言の前に「墓の件」で引っかかってしまい、
そのせいで「熟年離婚の直談判」は押しても引いても
前に進まない袋小路に陥ってしまったのです。


そんなにっちもさっちもいかない状況でどうやって
収束にむかったのでしょうか?




「もういいわ。お父さんと私のお墓に入れてあげるから」



私は耳を疑いました。あれだけ嫌がっていた美智子さんが翻意し、
勇さんと自分の墓に入れることを承諾したのです。


最終的には美智子が業を煮やして全面的に妥協した形ですが、
私にとっては全く意外な展開で、解せない




確かに「死後の世界」は各人の死生観や人生観、
そして宗教によって様々でしょう。


ただ、生まれ変わりを信じるのなら現世より来世、
信じないのなら生前より死後の方が時間的には長いと
考えるのが一般的でしょう。


ところで勇さん美智子さん夫婦は現在、70代なので、
老い先は長くはなく、せいぜい残り20年でしょう。


一方で来世の世界、死後の世界は想像もつきませんが、
とにかく途轍もなく長いのでしょう。


現世はせいぜい80年なので有限ですが、もしかすると
来世はいつまでも続き、終わりのない「永遠」の世界かもしれません。




基本的には「夫と妻が同じ墓に入ること」は
死後の世界でも引き続き、一緒に過ごすことを
意味するはずです。


ですから、美智子さんが今、勇さんと離婚することができ、
残りの10年、20年の人生のなかで勇さんから解放されても、
美智子さんが亡くなり、お墓に入った途端、
(勇さんが亡くなるのが先か後かは分かりませんが)

また勇さんが墓のなかで待っていて、
離婚前に戻ってしまうのです。


これでは何のために離婚するのか分かりませんが、
今現在、生きている私たちにとって死後の世界のことは
結局のところ、「死んでみなければ分からない」ので、
それなら死後より生前の世界を充実させたいと
思ったのかもしれません。


「後のことは後になって考える」という発想は
少し投げやりですが、残された時間は限られているので
「今さえ良ければそれいい」という気持ちも分からないではありません。



そして圭介さんも美智子さんの気持ちを尊重する形で、
墓の件が折れたのですが、


実際のところ、勇さんは気丈に振る舞いながらも、圭介さんが病院に通うたびに、
少しずつ体は小さくなり、声も小さくなり、動きも遅くなり、
圭介さんの知っている父親の姿とはかけ離れていく一方でした。



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突然降って湧いた「妻との離婚」のせいで、
ますます心身の衰えに拍車がかかっているように思えたので、
そんな気持ちが圭介さんにも芽生えてきたようで、
少しかわいそうに思えてきたそうです。

「父を早く、この件から解放して、楽にしてあげたい」



ところで離婚した元夫婦同士が同じ墓に入るケースというのは
決して珍しくはありません。


そもそも美智子さんのように「妻のお金」で「妻の墓」を
用意できる妻は稀で、

実際のところ、せっかく意気揚々と離婚しても、
自分の生活に精いっぱいで、墓を買うほどの余裕はない
ケースがほとんどです。



結局、まともな終活(墓の準備やそれに代わる散骨など)も
できないまま、最後の時をむかえたら、どうなるでしょうか?


残された遺族(息子や娘)が遺骨の埋葬先を探さなければ
なりませんが、最終的には元夫の実家(息子、娘の父親)に
行き付き、夫や夫の実家の墓に入れられてしまうという顛末です。


あくまで消去法なので本人が生前、「夫と同じ墓に入りたくない」と
ゴネていたとしても遺族としては仕方がないのです。


このように考えると、美智子さんが特別に不幸というわけではなく、
最終的には行き付くところに行き付いたという印象です。



(おわり)

今週に入って朝晩、冷えることが多いですが、体調崩されていないでしょうか?
ところで現在私が執筆しているダイヤモンドオンラインの連載
『実例で知る! 他人事ではない「男の離婚」』ですが
おかげ様で本日、16回目が公開されました。

今回は『やっぱり息子は自分の子でなかった!
元彼との再婚のつなぎに使われた悲劇の夫』です。


男性はもちろん、夫の作戦を守って知りたいという女性にも
役立つ内容です。立場を逆にすれば、きっと応用できるはず?!

ぜひぜひご覧いただければ嬉しいです。


http://diamond.jp/articles/-/81258

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