■「ラーマガ」本誌に載せきれなかったレビューを掲載する「ラーメンレビュー増刊号」です
「ラーマガ」本誌では、各号で7件の個別レビューを掲載しています。遠征や連食などで、そこに収まらない私のレビューを、随時「ら~マニア共和国」で掲載します。
今回はコラムに神奈川と栃木の遠征、東京の油そば・まぜそばをあわせて、14軒のレビューを掲載します。ラーマガ本誌と合わせてお楽しみください。
□目次
1.無料公開!三崎まぐろラーメンレビュー!
・牡丹@三崎港
・港楽亭@三崎港
・ポパイ@三崎港
『「三崎まぐろラーメン」は町おこしの夢を見せたのか?』
3.栃木日帰り遠征:完全版
<本誌56号で「はつみ@芳賀町」のレビューを掲載>
<本誌57号で「麺屋一里@芳賀町」のレビューを掲載>
・のじじ@宇都宮市<煮干中華のGAME START!>
・安喜亭@鹿沼<鹿沼の味「豚そば」とは?>
4.東京のまぜそば・油そば大行進!
<本誌57号で「湯島ひよこ堂」の汁無し担担麺のレビューを掲載>
<レビュー増刊9号で「食堂七彩」の黒味噌まぜそばのレビューを掲載>
<レビュー増刊10号で「ゴマ哲」の汁なし担々麺のレビューを掲載>
・麺屋清水@小岩<3週に1週メニューに出てくる油そば>
・豚骨一燈@小岩<一燈の味を油そばで楽しむ>
・まぜはる@浅草橋<台湾まぜそばの底に潜む、カレー!>
・馬賊@日暮里<韓国では「チャジャンミョン」と呼ぶジャージャーメン>
・麺爺@西早稲田<神戸生まれ大阪育ち、早稲田にロックオン>
・新橋大勝軒@新橋<東池袋大勝軒出身なのに、チーズ油そばもあります>
・愛宕@新橋<鰹が売りの店でも台湾まぜそば>
・伊太利庵@池袋<パスタと中華麺に境界はあるのか?>
・醤油錦@立川<ラーメンスクエア、トライアウト優勝者の今年の味は?>
1.無料公開!三崎まぐろラーメンレビュー!
【牡丹@三崎港】
「三崎まぐろラーメン」850円
三浦半島日帰り遠征1軒目。三崎港の近くにある大駐車場に車を停め、少し歩いてこちらへ(実は駐車場はありましたが)。店の看板には、色褪せた「フカヒレ」の文字があるが、店頭には「三崎まぐろラーメン」のノボリがたなびいている。開店時刻に店内をみると、まだ仕込みの途中だったらしく、慌てて片づけた後に「どうぞ」と言ってくれた。ただ、店の名物という焼売の仕込みが終わっていなかったので、入店してから20分ほど待つ羽目に。食べ終わるまで、他のお客さんはやってこなかった。
この店では「三崎まぐろラーメン」と「漬けまぐろラーメン」の2種類を提供していたので、「三崎まぐろラーメン」を注文。こちらは、B-1団体の「三崎まぐろラーメンズ」加盟店が統一して提供しているラーメンで、塩味のスープの上に、鮪の角切りに椎茸などを加えたあんかけを乗せたスタイル。しっかり熱を通したマグロの肉が食べごたえを出し、柔らかい麺を引き出せば、あんかけともよく絡む。このメニューに出してくれる「鮪ラー油」を入れると、シャープな辛さが加わる。
同行者の「漬けまぐろラーメン」はマグロのづけをそのまま乗せているので、じんわり上質な塩味のスープがしっかりと楽しめる。もちろんマグロは美味しいけど、ちょっとベタベタした店の床や、ご主人のマイペースさは少し気になった。町おこしというよりも、まったりと街に馴染んだ中華屋さんといった感じでした。
三崎港 マグロを漬けたり 炒めたり
牡丹
神奈川県三浦市三崎3-4-10
京急急行久里浜線「三崎口」駅からバス「三崎港」バス停から徒歩2分
【港楽亭@三崎港】
「港楽ラーメン」820円
三浦半島日帰り遠征2軒目。三崎港に一番近い中華屋さんで店内は賑わっていた。昼から軽く飲んでいく地元客と、観光客が半々くらいといった感じ。店内は新しくはないが掃除されていて、油っぽさなどはなかった。
こちらの「まぐろラーメン」は、「三崎まぐろラーメン」「港楽ラーメン」「鮪じゃんじゃん麺」の3種類。他にづけマグロを乗せた「港楽丼」や、「まぐろシュウマイ」もある。
注文した「港楽ラーメン」は、鮪のカマを使ったという醤油味のスープ。飲めば確かにマグロっぽさを強く感じる。醤油味も相まって甘さが好みを分けるかもしれない。麺は普通の中華麺だが、茹で加減はやや柔らかめといった感じで悪くない。
具には、ワカメ、ほうれん草、水菜、ネギと、中央に乗った「まぐろサンガ」。マグロの肉がギュッと詰まっていて、一般的なツミレよりも少し大きく、味付けにもクセを感じる。
同行者の「三崎まぐろラーメン」は、鮪角切りと椎茸のあんかけである事は「牡丹」と一緒だが、こちらはあんかけが醤油味。塩味のスープに徐々に広がる醤油味と甘さが楽しめた。まぐろラーメン各種のリーダー的存在にも見えるが、地元客は麻婆豆腐などを頼んでいるので、そういったメニューも食べてみたかったかも。
三崎では 先憂港楽 成り立つか
港楽亭
神奈川県三浦市三崎5-1-10
京急急行久里浜線「三崎口」駅からバス「三崎港」バス停から徒歩2分
【ポパイ@三崎港】
「鮪ジャージャーメンパート2」950円
三浦半島日帰り遠征3軒目。三崎港からちょっと歩いた所に佇む中華屋さん。新聞が置かれたカウンター席の椅子には座布団も敷かれ、おばあちゃんがお茶を出してくるなど、地元で定着してきた和風中華の印象も。ただ、土曜の昼時で前後客がいないというのは気になった。こちらでは、鮪の角切りと椎茸をつかったあんかけ状の「三崎まぐろラーメン」は販売されていないようで、この店舗独自の「鮪ジャージャーメンパート2」だけが販売されていた。
ジャージャーメンというが、一般的なジャージャー麺と大きく違うのは、とろみがついた塩味のスープをかけている事。丼より浅い器に入れているので、上から見ると溢れそうになっている。
中太麺とそのとろみスープの上に、マグロの挽肉をトッピング。白ネギや糸唐辛子、シソなどをトッピングしているので、単調では終わらせない工夫がある。マグロ肉の味に支配されないほどスープなので、ジャージャーメンというより、とろみスープのラーメンと言った方が近いかもしれない。
潮の味 そぼろふりかけ 三崎味
中華料理 ポパイ
神奈川県三浦市三崎 1-17-1
京急急行久里浜線「三崎口」駅からバス「三崎港」バス停から徒歩4分
2.無料公開コラム!
『「三崎まぐろラーメン」は町おこしの夢を見せたのか?』
そんなわけで「三崎まぐろラーメン」を初体験してきました。まぐろ漁で三崎港に活気があった頃の、まぐろを中華で食してきた歴史を再現したいという思いで始まったそうで、最近は各地の「B-1グランプリ」関連イベントにも出店している。
今回3軒を食べてみて思ったのは、それぞれのラーメン作りはまっとうで、マグロの魅力をラーメンで表現しようという意図が感じられるものになっている。食べて損はないと思うのだけど、他のお客がいたのが「港楽亭」のみで、そこでも半分くらいの人はまぐろと関係ないメニューを頼んでいた。お世辞にも「まぐろラーメンで賑わいを取り戻している」とは言いづらい状況である。
とはいえ、三崎港周辺は決して寂れきっているわけではない。観光バスも数台停まっているが、観光客は寿司屋やまぐろ料理の専門店に向かっていた。まぐろで売りだしている町に来たら、にぎり寿司や刺身で食べたいのが一般的で、火を通してあんをかけたラーメンを食べに来るのはかなりの少数派だろう。まぐろラーメンの参加店が閉店して減る事があっても、増える事はないだろう。
かつて三崎まぐろラーメンのプロデューサーを名乗っていたブロガーさんのHPを見ても、まぐろラーメンの現状は分からない。「三崎まぐろラーメンズ」の公式サイトには、参加店舗が掲載されていない。三崎まぐろラーメンズの母体である「三浦中華料理研究会」のHPは、2011年で更新が止まっているようで、掲載されているチラシや店舗情報を見ると、「福の家」「舌鼓」など、既に閉店した店が掲載されていたりする。
また、長期間やってきた慣れなのか疲れなのか、「三崎まぐろラーメン」に賭ける各店舗の勢いも、既に失われているように見える。「牡丹」は開店時刻に仕込みが終わっていなかったし、「ポパイ」は「まぐろラーメンズ」統一のメニューは提供していなかった。三崎港は陸地から見れば突き当たりであり、新たな参入者が見込める状況でもない。厳しい言い方になるが、「三崎まぐろラーメン」は、町おこしラーメンから「限界集落ラーメン」に変わってしまっているように見える。
同じ「B-1グランプリ」には、勝浦タンタンメンも出場している。東京から離れた南関東の港町という共通項はあるが、勝浦タンタンメンを提供するラーメン店が、東京でも現地でも増えている。勝タンを食べに勝浦に行こう!という人も、三崎よりは多いように思う。勝タンは「港町だから魚を使おう」という発想に立っていないし、勝浦に観光に来て、魚料理を食べた人でも、ジャンルは被らない。そもそも勝タンは街で根付いていた独特のラーメンであり、町おこしの為に創作したラーメンではない所が、両者の違いを明確にしているのかもしれない。
これまでラーマガ本誌の連載コラムで紹介している町おこしラーメンの中でも、完全に頓挫してしまったものや、継ぐ人がなくて風化してしまったものも見られる。ラーメンだけでなく、B級グルメは町おこしの特効薬ではない。安易に頼る姿勢は、頑張って いるお店に対して失礼な行為だと思う。町おこしを考えている人達には、そろそろその事に気づいてほしいものだと思います。