北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第7回)
『ラーメンの憂鬱』〜『QSC』を鵜呑みにする店主(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜北東北のご当地ラーメン(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『映画「千年の一滴 だし しょうゆ」』山本剛志
ラーメン好きならば観て損のない映画を紹介します。現在「ポレポレ東中野」で上映中のドキュメント映画「千年の一滴 だし しょうゆ」は、2013年に放送されたNHKスペシャル「和食」をベースに、海外スタッフと共に仕上げられ、昨年夏にはフランスやドイツで反響を集めたという。映画は「第一章 だし」と「第二章 しょうゆ」から構成されている。
「第一章 だし」では和食特有の「素材の味を活かす」役割説明、そして「だし」を作る際には、味を引き出すから「だしを引く」と呼ばれる事が紹介される。そして、北の「昆布」は知床、南の「鰹節」は枕崎、山の「椎茸」は宮崎から、自然の恵みを損なわずに、手間暇をかけて作られる様子を確認できる。大きく離れた知床と枕崎で、素材を天日干しする事で旨味を増す工夫がなされている事にも驚いた。京都の料亭ではこれらの素材から「だし」が丁寧に引かれ、野菜や魚に合わせられる。
また、日本では仏教の影響で肉食が禁忌とされてきた。「典座教訓」の中で、料理を作る際に基本となる「六味」は、「酸っぱい」「塩辛い」「苦い」「甘い」「辛い」、そして「淡い」。淡い味わいのベースになるのが「だし」である。現在でも寺で典座が使う「だし」には動物である鰹節が使えない為、昆布だしと椎茸だしを合わせて使われている。
「第二章 しょうゆ」では、京都の町家で四季と共に作られる、伝統的な醤油蔵を中心に様々な物語が展開される。春に仕込まれる醤油蔵では、大豆を敷き詰めた上から麹菌を含ませた小麦を全体にかけるが、その際に「枯れ木に花を咲かせましょう~」と、「はなさかじいさん」のように声をかけながら行っていた。麹菌が培養されて醤油麹になり、醸造樽に入れられて冬まで仕込まれる。
同様に麹菌を使い、米を発酵させると日本酒になる。日本では、室町時代から守り続けてきた種麹を専門に扱うメーカーもあり、そこには全国から注文が集まっている。「種麹」を使うのは日本だけで、数世紀に渡る一子相伝により「アスペルギルス オリゼー」と呼ばれる日本独自の麹菌が生み出した醤油や日本酒が、京都の料亭の調味料として使われるところで、この映画はフィニッシュへと向かう。「だし」と共に、食材そのものが持つ力を活かす和食の軸を支えているのである。
だしと醤油の魅力をスクリーンで観ると、改めてそれらを味わいたくなる。だしの効いたラーメン店に行こうかと考えたが、この映画を観たのが昨日。このコラムを書くので精一杯だから諦めざるをえなかった。東京では「ポレポレ東中野」で2月下旬までの上映が確定しているが、今後全国各地でも上映予定。詳細は「千年の一滴 だし しょうゆ 公式サイト」にてご確認ください。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は2014年7月、大阪東梅田にオープンした『大阪 麺哲』の「醤油雲呑」を山路と山本が食べて、語ります。
「醤油雲呑」900円