ラーメンマガジン「ラーマガ」

「ラーマガ」#014

2014/02/20 13:00 投稿

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北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
「ラーマガ」THE RAMEN MAGAZINE
#014

・北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
・2014年2月20日発行(月3回)2月第2号(通刊第15号)

【目次】

■巻頭コラム
 「哀しい一杯」(山路力也)

□クロスレビュー「必食の一杯」
 季織亭@経堂「冷たい小麦蕎麦 つけ 天然塩」

■ラーメン実食レビュー
【北島秀一】
  支那そば孤高@八幡山「醤油らーめん」
  豚そば 成@上永谷「ラーメン+味玉」
  支那そばや 鶴ヶ峰店@鶴ヶ峰「醤油らぁ麺」
  らあめん夢@東神奈川「つけ麺」
  環2家@上永谷「ラーメン+たまねぎ+ライス」
【山路力也】
  とんこつらあめん英@経堂「らあめん」
  麺屋すみす@青山一丁目「博多水炊きらーめん」
  ARCHITECT CAFE 青山@外苑前「北海道知床塩ラーメン」
  博多ラーメン四神 有楽町店@有楽町「博多とんこつ」
  らーめん房 やぶれかぶれ@前原「汁なし生姜やぶ」
【山本剛志】
  ソラノイロ japanese soup noodle free style@半蔵門「ソラのオイスターチャウダー2014」
  博多一風堂 池袋店@池袋「博多ブラックCURRY+ライスセット」
  らーめん天神下 大喜@湯島「担々麺」
  一しな@大曲「中華そば」
  ラーメン鈴弥@湯沢「ラーメン」

□拉麺人インタビュー 
 渡辺樹庵<渡なべ 店主>②
 「根拠のない自信で突っ走っていたあの頃」(聞き手 山本剛志)

■クロスコラム
 「甘いラーメンの話」(山本剛志)

□異論激論!
 今回のお題「高額ラーメンに思うこと」

■告知/スケジュール

□編集後記


■巻頭コラム
「哀しい一杯」山路力也

 先日、今月開店したばかりにも関わらず、早くもラーメン好きの間で話題となっている新店に足を運んだ時のことだ。新店だから当たり前といえば当たり前なのだが、店内外は明るく清潔感があり、女性一人でも入れそうな雰囲気。カウンターの上には調味料やオリジナルの香味油なども置かれ、もちろんそれらがベタついていることはなく、ピッチャーの水やコップが切れることもない。さらに店内には製麺所の名前の入った木の箱(番重=ばんじゅう、と言う)や小麦粉の袋、乾物が置かれ、麺や食材についての蘊蓄も語られており、いかに食材やラーメンに対してこだわりを持っているかということが長々と綴られていた。接客も過不足なく、真新しいユニフォームをまとったホールの女性の笑顔も爽やか。店内もしっかりと声が通り合っていて活気がある。

 しかし、肝心のラーメンがなかなか出てこない。客は数名しかいないのに、私より前の客にもラーメンが出ていない様子。可能性としては茹で湯を交換した直後、ということも考えられるが、キッチンのオペレーションに乱れがあることも、オープン間もない店には良くあることだ。それを兎や角言うほど無粋ではない。また、ようやく出て来たラーメンが既視感にあふれ、どこかの人気店のコンセプトやパーツを切り貼りしたようなものであったわけだが、その事自体も今の時代散見されるのでいい加減もう慣れた。他に気になったことがあるとすれば、陽がすっかり落ちているのに看板に灯りが点っていなかったことと、客の出入り口の床に宅配便の荷物が置きっぱなしになっていたことくらいだが、これらも忙しい時にはままあること。

 このようにどちらかといえば寛容で忍耐強い私ではあるが、このラーメンの麺を引き上げた時、心の中のトリガーが引かれた。麺がとぐろを巻いていてぐちゃぐちゃだったのだ。これは麺が可哀想だ。おそらくテボの中に菜箸を突っ込んで茹でてる間ずっと回し続けていたのだろう。大きな釜と違ってテボを使う茹で麺機の場合は麺が泳ぎ辛い。その為、箸などで麺を泳がせる場合があるのだが、麺はストレスに弱い性質があるので、何分間もグルグルかき回していては、食べにくいのはもちろんだが、麺の表面に傷が出来て食感なども悪くなるのは当然だ。そして入口に無造作に放り出されていた宅配便の段ボール箱。これはその製麺所からの麺だった。私が入店してから30分あまり、満席になるでもなくさほど忙しいとも思えない状況で放置され続けていた。

 そう、この店はすべてが「カッコ」だけなのだ。心がまったく籠ってないと言ったら言い過ぎかも知れないが、少なくとも目の前の丼の中には、長々と書かれた講釈のような愛情は入っていない。地方の老舗製麺所の麺に衝撃を受け共同開発した麺だそうだが、もしそのような思いの籠った大切な麺なのだとしたらこのような茹で方はしないだろう。そしてその麺を人の足にぶつかるような床に長いあいだ放置はしないだろう。

 いくらどんなにカッコをつけようとも、こだわりをアピールしようとも、麺の扱いひとつで馬脚を露わす。こういう店には私は二度と行かない。もっと誠実に丼と向き合っている人が作るラーメンが他にはたくさんあるのだから。


□クロスレビュー「必食の一杯」

 一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は惜しまれつつも今月末に23年間の歴史に幕を閉じる『季織亭』の「小麦蕎麦」を三人が食べて、語ります。

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季織亭@経堂
「冷たい小麦蕎麦 つけ 天然塩」850円
 

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