カップ麺『にぼみそ』を食べてみた
ラーマガが誇る我らがラーメン王、山本剛志が監修しているカップ麺「3大ラーメン王豪華監修!! にぼみそ」(明星食品)が、現在全国コンビニ・スーパーなどで絶賛発売中です。遅ればせながら、北島・山路両名もこのカップ麺を食べてみました。
「遠慮無く、忌憚ないご意見をお聞かせ下さい」(山本)と、殊勝なことを言っていたので、ヨイショ無く、嘘偽り無く、本音で語っちゃいましょう!
↑雑誌の誌面や中吊り広告のようなイメージの斬新なパッケージ。監修者3人の顔写真入り。
↑出来上がりはこんな感じ。カップからは煮干しの香りが。思いのほか具だくさん。
北島秀一
随分久しぶりにカップ麺を食べたが、麺がかなり進化しているんだなと感じた。しなやかでスープの絡みもよく、派手な感じではないがするするっと食べられる感じがよかった。
スープは文字通り煮干+味噌。一歩間違えば味噌汁になるだろうが、調味オイルの効果か、動物系のダシをしっかり土台にしているのか、最後まできちんとラーメンとして楽しめた。カップ麺にそこまで求めるのは酷だが、個人的にはキャベツが生に近い物(桂花の太肉麺的な)物だと、もっとスープにパンチを出してもバランスがとれ、よりインパクトのある仕上がりになったと思う。
ここ数年、リアルのラーメンに於ける煮干の隆盛は言わずもがなだが、その多くは醤油ベース。味噌を使った新提案をするあたりはさすがにこのお三方だと感じた。
山路力也
これまで何度かカップ麺の開発もお手伝いしてきたことがあるが、この「縦型カップ」の開発は大変だったろうと思う。というのも丼型のものよりも予算も少なく色々と制限が多いため、味の表現や再現が難しいからだ。丼型カップ麺の場合は、そもそもの売価設定も高いため、例えば具材ならレトルトなども使うことが出来るし、スープも濃縮液体スープを使うことが出来る。麺もオリジナル麺を作ることが可能だ。しかし縦型カップ麺の場合は、具材はフリーズドライだしスープも粉末スープ。せいぜい香味油などを足せるくらい。麺も原則として既存の麺を使うことが前提になっている。しかし、逆に考えれば制限された枠の中でどこまで美味しさを追求出来るか、なかなか取り組みがいのある開発だったのではないかと思う。
今回の「にぼみそ」は煮干しを効かせた味噌ラーメン。2014年のトレンドを予測しカップ麺で表現するというコンセプトのようだ。煮干しを効かせた味噌ラーメンそのものは、決して珍しいものではなく、私も以前よりその手のラーメンは色々食べてきて美味しさを感じた組み合わせ。ここ数年の煮干しブームと今年の味噌ラーメンの緩やかな復権を捉えたものだと思うが、冬にリリースする商品でもあるし、その狙いは間違っていないと思う。懸念があるとするならば「煮干し」という素材に対する一般消費者の抵抗感が如何ほどか、という点と、決して食欲をそそるとは思えないオッサン3人の顔がパッケージに載っていることによって、購買意欲が削がれはしないかという点である(苦笑)。
まずカップから立ち上がってくる煮干しの香りがいい感じ。これは後から加える香味油の効果。明星のノンフライスチーム麺は、柔めの食感ながら適度にコシがあって茹で伸びも遅く、なかなか頑張っているなぁという印象。欲を言えばもっと平打ちだとスープとも絡むかな、とも思わなくもないが、先述したように麺に関してはそもそも開発における自由度が低いので致し方無し。細かなキャベツやコーンなどの具材が時折麺に絡んできて楽しい。具に関しても縦型カップ麺の場合はこんなものだろう。
つまり、縦型カップ麺の開発のすべてはスープと言っても良い。実際彼らの意見を一番反映させられる部分もスープだろう。そのスープだが、全体的に旨味の濃度が弱く感じた。もちろん煮干しも味噌もバランス良く溶け込んでいる味わいなのだが、簡単にいえば控えめな味というか振り切れてないというか。「煮干しの香ばしさと味噌のコクの絶妙な味わい」というキャッチだが、その印象が非常に弱いのだ。塩度、旨味の濃度、スープの粘度、すべてにおいて物足りなさを感じてしまう。美味しくまとまっているのだけれど、存在感が弱いのだ。
なぜこのようなバランスになったかの真相は監修者本人の解説に委ねるとして、私の邪推としては一般消費者がどこまで許してくれるかを探り過ぎて、いわゆる「万人受け」するところが落としどころになってしまった結果なのではないか。煮干しをこれ以上効かせたら拒否感があるのではないかとか、味噌をこれ以上強めたら塩っぱいと感じてしまうのではないかとか。あるいは3人の監修者の意見の擦り合わせの結果、最大公約数的な味が答えになった部分もあると思う。結果として「にぼみそ」という比較的尖ったコンセプトのラーメンでありながら、完成品は物凄く円くまとまってしまったなぁという印象。
この商品に期待されている部分は「万人受け」ではなくて「マニア受け」なのではないか。ラーメン店のメニューに例えるならば、一般向けの看板メニューと常連やマニア向けの限定メニューがあるように、明星食品ならラーメン店の看板メニューにあたるものが「チャルメラ」「一平ちゃん」で、限定メニューにあたるものがこの「にぼみそ」なのだと思う。ならばもっと振り切っていい。そもそも「にぼみそ」「3大ラーメン王監修」というフックに引っかかる客層は、一般消費者とはセグメントが異なる。にぼみそを食べたいという消費者はやはりもっと煮干しを感じたいだろうし、もっと味噌を味わいたいはずだ。誤解の無いように再度言えば、もちろん美味しく仕上がっている。しかし歴代ラーメン王3人の監修、煮干し味噌という強いコンセプトに期待した自分からすると、ちょっと物足りないかなぁという感想。
あと、これは直接この商品とは関係無いが、消費者の方に是非ともお願いしたいこと。カップ麺を美味しく食べるためには「時間」「湯量」をとにかく正確に計って調理して頂きたいと思う。これがちょっとでも違うと全然違う食べ物になってしまうのだ。あともう一つは「食べる前にしっかりと良く混ぜる」ということ。特に縦型カップ麺の場合は底の方から麺を持ち上げるようにしっかりと混ぜるべし。感覚的には15秒から30秒くらいは混ぜた方が、メーカーの意図する味に近づくと思うので是非実践して頂きたい。
山本剛志
今回は、この「にぼみそ」を開発した時のエピソードなどを。私と小林孝充さん、青木誠さんの3人でプロデュースするカップ麺も今年で3年連続3回目。「えび塩」「焦がし醤油」ときたので、今年はやはり「味噌」なのかなという考えで初回の打ち合わせに。明星さんからは「味噌ありきではないですよ」ということでしたが、自然に味噌に何を合わせるかという話に。「海老」だと一昨年やっているし、最近「イカ」が話題だけど、カップ麺にしたら分かりづらいかもという意見も出た。当時、他社の縦カップ麺で強烈な「煮干」味を出している商品があり、煮干し全開のスープに味噌を合わせるのはどうだろうということでそれを提案。もう一つ、「キノコ味噌」を提案して二度目の打ち合わせへ。
4種類の味を食べ比べると、キノコはその味の特徴が弱く、「やはり煮干し味噌だね」とスムースに決定。しかし明星さんが提案してきた味ではあまりにオーソドックス。煮干しをもっと強めるために鶏などのスープ素材を極力削ってもらい、煮干と味噌の存在感を高めてもらう改良をお願いした。
その中で出てきた提案が「とろみをつける」というもの。冬に出される味であることを前提に、温まる味になってなかなかいいが、煮干味噌味としての特徴との両立に試食を重ねた。麺はやや中細でスープに絡みやすく、具は味噌ラーメンらしさが分かるものをということでチョイス。商品名は、煮干味噌味というイメージが分かりやすいものをということで、平仮名で「にぼみそ」。「みそ」の文字を味噌色にすることでイメージを表したとのこと。
打合せをした明星食品の会議室にはキッチンもついていて、その場でスタッフの方が試作品を作るのだが、4分たってフタを開けてからの、かき混ぜ方の本気度には驚いた。あそこまでかき混ぜてる人はいないんじゃないかと思えるほど。その分スープのムラもなくなっていたので、皆さんもカップ麺を食べる時には、必死にかき混ぜてみてほしいと思った。
あと、今回の商品名に「三大ラーメン王プロデュース」と入ってますが、この「三大」というのは、歴代のテレビチャンピオンラーメン王選手権優勝者の中で、体型が大きい人順に三人、という意味であればOKと、明星食品さんと打ちあわせ済みだったりします。年末に向けて、徐々にコンビニでの販売からスーパーでの販売に遷移している。「にぼみそ」を見かけたら、一度買ってみてください。
というわけで、山本剛志が監修しているカップ麺「3大ラーメン王豪華監修!! にぼみそ」(明星食品)は、現在全国コンビニ・スーパーなどで絶賛発売中です。ぜひ一度お試し下さい!そして感想もお待ちしております!