ラーマガ限定「NAKED」#002
らーめん天神下 大喜『かけみそ』
実食インプレッション
麺とスープだけで美味いと唸る一杯。究極の「かけラーメン」に人気ラーメン店が毎月月替わりで挑戦する、ラーマガ限定「NAKED」。第2作目は、湯島の人気店『らーめん天神下 大喜』が登場。店主武川数勇さんが取り組んだのは、塩でも醤油でもなくなんと「味噌ラーメン」。
スープは鶏を主体にした清湯ベースに魚節などの旨味をプラス。味噌は八丁味噌や仙台味噌など数種類をこのラーメンのためにブレンドした特製味噌ダレを使用。麺は北海道産の超強力小麦粉「ゆめちから」とカナダ産小麦粉「ICW」を配合した切り刃#10の平打ち自家製麺で、麺量は150g。打ち立ての麺を2分じっくり茹でてしっとりとした食感に仕上げた。唯一乗せることが許されている薬味は、味噌の風味を引き立て、さらに口の中をリセットする針生姜を採用。
武川さんが従来の味噌ラーメンの常識とは真逆の設計で挑んだ味噌ラーメンの意欲作。麺の達人、武川さんならではの麺の食感、風味と穏やかで力強いスープとの見事な融合を楽しめる一杯になりました。
北島秀一
実は今回の「かけみそ」には、幻となった試作一号Verがあった。諸事情で実際に試食させてもらったのは私だけ。それは今回提供して頂いた「かけみそ」とはかなり異なっていた。ややオイリーで動物系のコクが土台となったスープに、中太のしゃきっと茹で上がった麺。薬味には針生姜ではなく、刻んだ牛蒡に濃いめの味付けをした味変薬味が使われていた。
これはこれで美味しかった。が、正直自分が期待した「大喜のNAKED」は、もっともっとぶっとんだ発想で、マニア層を唸らせる物を作って欲しかった。ので、武川店主には大変申し訳ないが、私の独断でほぼ全面的にダメ出しをさせてもらった。
その時の武川店主曰く。「了解。ではセオリー無視の変態ラーメンで行きますか」だそう【笑】。結果出て来たのが、あのシャープなスープに「日本味噌ラーメン史上もしかしたら最柔」かも知れない麺の組み合わせ。まさに「変態」と言うに相応しい個性的なこれが、ただ単に奇をてらった物ではなく、確かな美味しさに裏打ちされているのは既に多くの皆様に味わってもらった通りである。
やはり「かけ」と言うお題はかなり難しいらしく、店主もいろいろと悩んだ模様だが、最終的には本当に期待を超える作を提供して頂けた。あとはこのラーメンの真価がどれだけの人に伝わっているのか。その反響が気になるばかりだ。
山路力也
この企画を最初に考えた時、いつかは「大喜」にお願いせねばなるまいとは思っていた。十年以上にわたり人気を守り続け、今もなお多くの支持を受ける名店中の名店。当初はもう少し企画が温まってきた頃にご登場頂ければとも考えていたのだが、三人でミーティングを重ねていく中で、やはり「NAKED」という今までにない概念の創作ラーメン企画の場合、最初にどんなラーメンが出て来るかでその後の企画の成否が決まるだろうと。読者の皆さんもこれから参加して下さる店主さんも、最初の数杯を見て「NAKED」の概要を判断するであろうと。そうなると出し惜しみせずにスタートダッシュをかけて全力でぶん回していくしかない。最初は今年オープンの新店「らぁ麺やまぐち」にお願いしたのだから、次はベテランで誰もが一目置く存在の店がいい。そうなると答えは一つだった。しかも、前作のやまぐちが醤油だったのに対して、大喜は味噌を出してきて下さった。これも今後の「NAKED」の世界観に大きな振り幅を与えてくれたと思う。
味噌は本来調味料としての存在感が強いものだけに、押し並べて食べた時や食後の印象が似てしまいがちだ。ましてや変化をつけやすい具材は一切使えないわけで、正直「NAKED」で味噌を出すというのはかなりの難しさとリスクを伴う。しかし、さすが武川さん、我々の想像を超える設計で見事な「かけみそ」を作り上げて下さった。まず、スープの濃度、粘度、塩度など、ここ最近の味噌ラーメンのトレンドを嘲笑うかのようなサラッとした味わいと口当たりにしている。味噌汁よりはもちろん濃度もあるし、動物系の旨味も含んでいるのだけれど、ぐいぐいと飲めてしまうような。そこに合わせる自家製麺は、かなりしっかりと茹でていてこちらも昨今の麺固めの風潮に反する「柔らかい」食感の麺にしてあるのが興味深い。麺がしっとりとスープを身にまとい、麺とスープの境目が分からないような。それでいてちゃんと麺を味わうことが出来る存在感。正直、食の嗜好は人それぞれなので、この一杯を苦手と思う人もいるだろう。しかし、今までに誰も食べたことのない味噌ラーメンであることだけは間違い無い。
山本剛志
「NAKED」第二弾は、東京を代表する人気店「大喜」に依頼。スープは鶏ベースの通常営業の物だが、味噌ダレが個性的。赤味噌を中心にしたシャープな味わいで、舌にしっかり刺さる味がありながら、喉にしっかりと絡みつく。「味噌汁っぽくなっちゃいましたかね」と言う店主だが、赤味噌に鶏の味が追いかけてきてしっかりラーメンしている。平打ちのビラビラした麺を柔らかめに茹でていて、スープと一体化した食感。具を入れていたらここまでの一体感は楽しめないだろう。そして薬味には刻んだ生姜を乗せる事で口の中をリセットさせる効果がある。
「大喜」は「冷やしとりそば」や「味噌ラーメン」といった毎年恒例の限定メニューでも、以前と全く同じままというケースは少ない。それまでになかった新しい取り組みを加えていて、その味を元にレギュラー品も高みを目指す「らせん」を徐々に駆け上っていく。それが大喜を名店たらしめているのだと、この「かけみそ」からも実感できる。また、マニア好みと店主が言い切る麺の柔らかさもポイント。これだけ茹でても麺としてへたらず、小麦の可能性を形にしている。今まで食べた事のない味噌ラーメンに出会えるはず。
【NAKED #002】
らーめん天神下 大喜(東京都文京区湯島3-47-2)
「かけみそ」(680円)
一日20杯限定(11:00〜10杯、17:30〜10杯/日祝11:00〜20杯)
販売期間:販売中〜30日(土)
(ラーマガ有料会員ではなくても注文が可能です)
注文方法:「醤油らーめん」の食券を購入し、店員に「かけみそ」と伝えてください。