北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第40回)
『ラーメンの憂鬱』〜味以外の価値観を上げる(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜ラーメン店の方向けのネット活用術~(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『「中華そば」の流行に思う事』北島秀一
今年(2013年)の首都圏の新店を見ていて思うのは、品名に「中華そば」と名付けたラーメンが目立つ事だ。具体的には「しながわ」や「すずめ」、また今回のクロスレビューに登場した「維新商店」などだろうか。基本的なスタイルは清湯醤油ながら、「支那そばや」「69'N'ROLL ONE」あたりから始まった、ここ数年の「清湯系」とは少し毛色が異なって感じる。一言で言うなら「清湯系よりも少しゆるい」との印象があるのだ。
「清湯系」に関しては、何しろスタートがラーメンの鬼である佐野店主であり、更にその思想とキャラを受け継いだ嶋崎店主のスタイルに感銘を受けたお店が始めた為もあってか、「こだわり」を感じさせる物が多い。各地から厳選された素材であったり、精密な調理法であったり、シンプルながらも奥深さを感じさせる味であったり、あらゆる意味でラーメンの存在感をワンステージ引き上げる存在であった。その業界に対する影響力は非常に大きく、現に講談社の「TRY本」では一日100杯程度の単独店としては異例の「TRY大賞」を69'N'ROLL ONEが獲得した事もある。
それに対し、「中華そば」はもう少しリラックスしたムードのラーメンだ。素材感をあまり前面に出さず、醤油の風味とまろやかさ、場合によっては背脂の甘味などを加え、これまでの清湯系に比べて気軽な感じがある。醤油の味を軸にしている為か、品名通りのノスタルジックな味でありながら、当然現在の丁寧なラーメン作りを行っているのか、極端な旨味は塩分は控えられ、食べ易く仕上がっている。
個人的には、「尖ったラーメン」はクルマで言うところのF-1であったり、世界最高峰レベルにアタックするクライマーであったりして、彼らの存在が業界を牽引していくのは間違いないが、逆に言うとそれらの精緻なラーメンは「彼らだからこそ出来る」と言う点でかなり属人的な部分もあると思うしある意味お客を選ぶラーメン(店)でもあると思う。もしも今の「中華そば」が、より幅広い客層にアピールする「普及版」的な意味合いを持つのだとすれば、今後大きなムーブメントになるのかも知れない。(ラーマガ006号より転載)
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は9月1日原宿駅前にオープンした新店「Noodle Stand TOKYO」の「KUROSHIO煮干ラーメン(醤油)」を山路と山本が食べて、語ります。
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