北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第30回)
『ラーメンの憂鬱』〜老舗の閉店に思う(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜戦後ラーメン史(5)~チキンラーメンからカップヌードルへ~(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「ラーメンイベントの未来」北島秀一
ラーメンイベントの歴史をざっと振り返ると、私の記憶の範囲では2000年代初頭に遡る。函館や久留米などの地方都市で、各地の熱心な店主さん等が起爆剤となって「ラーメンフェスタin久留米」や「函館塩ラーメンサミット」などが開催。その時に、親交のあった店主(支那そばや佐野店主、ちばき屋千葉店主、博多一風堂河原店主、すみれ村中店主ら多数)が意気に感じて出店。「地元店&県外有名店」がそれぞれ数店舗ずつ一堂に会するフォーマットが全国に広まっていった。
が、そのフォーマットは首都圏には伝播せず、東京での大型イベントは2009年の東京ラーメンショーが嚆矢となる。このイベントは大きな話題を呼び、東京ラーメンショー自体は現在五回目が開催中。そのヒットを受けてか都内では各TV局主催の大型イベントが連発されたのも記憶に新しい。私個人は基本的に全てのイベントで「客」の立場で参加しているが、唯一東京ラーメンショーのみは実行委員会の末席に連ならせていただいているので、今回はその立場から見たイベントを少し書いてみたい。
主催者側に立ってみて一番悩むのが広い意味で「お客のニーズを読む」事だ。お客がどのようなお店を食べたいと思っているのか。どのようなラーメンであるなら、食べに来て貰えるのか。その見極めが、なまじっかマニアである自分には非常に難しい。マニアから見て貴重な名店の筈なのに、お客にとっては「何それ?」となってしまう…考えてみればラ博時代から同じ事を繰り返して来ているが、改めて本当に難しい。
特にTRSについては、過去「お客」として見て来た地方のイベントとは、行列の状態が明らかに違う。地方イベントではまず会場と同時に県外からの有名ゲスト店にどどっと長蛇の列が出来、昼を過ぎた頃から徐々に地元店に客が流れて行くパターンだったが、TRSではそれがあまりない。「ここを食べる」と決めたお客は、目標が二時間待ちで、すぐ隣のブースにお客がいなくてもそちらに流れない傾向がある。何故そんなに強固に「これを食べる」と決心しているのか、それが読み取れない。
もう一つは、これもマニアならではの考えだが、実際に大規模イベントに出店するお店には「体力」が必要だと言う事だ。単純に言うと一日1000杯程度のラーメンを平気で出せる生産力と組織力が無いと、まずイベントでお客をこなせない。が、実際には地方を象徴する名店即ち大規模店とは限らない。一日数十食~百食程度をきちんと売り上げ、それを何十年も続けているような老舗の味も他地域で紹介したいのに、それが出来ないジレンマ。どのようなバックアップ体制が必要かと言う事は大きな課題になりそうだ。
既に五回目、もし来年も実施されれば六回目になる東京ラーメンショー。ちょうど小学校に入学した子どもが6年生になるだけの時間が過ぎた。様々な問題をクリアしながらの五年だったが、来年以降は更にドラスティックな改革が必要なのかもなと、会場を見ながら考え続けている。(ラーマガ005号より転載)
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は11月11日、武蔵小金井にオープンした新店「麺工 豊潤亭」の「中華そば」を、山路と山本が食べて、語ります。