皆さま唐突ですがアタクシ、ひさしぶりにパーマをあてがったんです。
「ゆるふわで」とオーダーしたのですが結構クルクルで
「コントでかぶるヅラ」みたいになっちゃいまして。
梅雨空のようにどんよりな毎日ズラ。
ということでもう9回目な「Pの中の人おすすめの何か」ですが
どんよりな時はもっとどんよりしちゃおう!ということで
人によってはトラウマ必至の強烈な作品をご紹介しちゃうズラ!
▼「銭のためならなんでもするズラ!」
『銭ゲバ』上下巻 ジョージ秋山著(幻冬舍文庫)
あれ?●沢翼?
この作品4~5年前に松山ケンイチさん主演でテレビドラマ化になってましてご覧になったことがある方もいるのではないでしょうか。
ジョージ秋山先生はビックコミックで人情時代劇「浮浪雲」を長く連載されてまして大御所の作家さんなんだにィ。(先生は栃木出身で語尾が「にィ」)数々の問題作を発表されてるのですが、なかでも『アシュラ』という作品には飢餓から人肉を食べ、我が子までをも食べようとする女の描写がありまして。これを掲載した1970年8月2日号の『週刊少年マガジン』は一部地域で有害図書指定され、当時大変な騒ぎになったようです。(この作品は最近アニメ映画化されました)
さて、「銭ゲバ」ズラ。この「ズラ」はアタクシの「ヅラ」ではなく
この作品の主人公蒲郡風太郎の語尾が「~ズラ」なんだズラ。
風太郎は貧しいうえに醜い少年です。
(キャラクター造形的にはオッドアイ。今風にしたらアリかもです)
バカにされ、いじめられ、お金がないために病弱なお母さんとも死別してしまいます。
そしてお金をめぐって
実の兄を殺してしまいます。
……オッドアイって何ズラ。
兄を殺した風太郎は故郷から逃亡。上京し、
とあるお金持ちの家族に取り入りその一族の会社、屋敷を乗っ取ってしまいます。
そのためにまた何人もの人を殺め、それを隠そうとしてまた罪を重ねていきます。
全ては「銭」のために。
ジョージ秋山先生の一見ノーマルな昭和テイストな絵柄はその端はしで狂気をはらんでおり、
ドストエフスキーの「罪と罰」のような重いストーリー、
主人公の荒んだ心情をよく描き出しています。
ほら、笑いながら怒られるとすごい怖いじゃないですか。そんな感じ。
驚く事にこの作品は1970年に週刊少年サンデーで連載されたものなんですね。
今ではたぶんアウトですね。青年漫画誌がなかったころの時代ならではですね。
財産、地位ばかりか名誉までも「銭」の力で手に入れた風太郎が
本当に手に入れることができたのは何なのか。
「銭」で本当にすべてが手に入るのか。
ネタばれになるので書きませんが
風太郎が自身の人生を振り返るシーンは
涙なくして読めません。
そう、この作品バッドテイストなのに
とても深く心を揺さぶるズラ。
「銭」と「人生」…読み終わった後には
いろいろ考えさせられる作品ですズラ。
そして語尾に「ズラ」と
付けたくなる作品ズラ。
さてさてちょっと遅れでお送りした「中の人おすすめの何か」略して「中おす」。
次回は「私はマツキヨのクレンジング何個買えばよいのですか?」と幸せそうな「む」が
銭より面白い何かをご紹介するズラ。お楽しみにズラ。
PHP研究所 PHP-COMIXの編集長。社風にそぐわぬ異色の企画をプロデュースし続ける45歳。尊敬する漫画家は、藤子F不二雄。好きな映画はゾンビもの。1歳半の娘を魔法少女に育てたい一児のパパ。
◎バックナンバー
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【第1回】『鳥海浩輔・安元洋貴の禁断生ラジオ本』
【第2回】 九井諒子さんの作品集×3作品
【第3回】『ヨルムンガンド』『乙嫁語り』『小南正太郎、家から出るをはじめました。』
【第4回】 へんしゅうちょの机
【第5回】『風の谷のナウシカ』
【第6回】『ここはグリーン・ウッド』
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【第8回】『ピンポン』
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