諸々の懸念を反映して、年初の下げから落ち着いて推移していた原油価格が下げ、WTIは57~60ドルの取引レンジから52ドル台へ急落。
為替市場では、資源価格や中国経済に敏感な豪ドルが下落、原油価格の下げは、ノルウエイ・クローネやカナダドルの下げに繋がりました。日本円は、122円台の取引を中心に、リスクオフの動きから上値が重い展開です。
一時楽観もあったギリシャ情勢は、国民投票での緊縮策反対多数を経て、救済は新たな協議に持ち込まれる様相です。
先週末5日に行われたギリシャの国民投票は、債権者の支援計画に対して、投票者の6割以上が反対を表明しました。事前予想が賛否拮抗だったので、結果には驚きでした。
余談ですが、関連ニュースで報じられた「もうEUの奴隷にならないぞ」と叫ぶ群衆のシュプレヒコールは、まるでミュージカル、レ・ミセラブルで歌われた民衆の革命歌の歌詞の一部の如くでした。
週明けの為替市場の反応はユーロ安、円高。その後、協議再開や、ギリシャ財務相の辞任の報道を好感する場面もありましたが、通貨ユーロは、限られた範囲での方向感定まらない動きになっています。
ユーロ対米ドルは、5日の投票結果を受けて、前の週の終値1.1110水準から、東京時間早朝に1.0970をつけた後、1.10台後半まで買い戻さ れ、その後は1.09台から1.10台を往復する動きが続いています。ギリシャのユーロ離脱の可能性への言及も聞かれますが、すでにユーロ売りが累積して いることや、先が読みにくいことでユーロ取引を控える傾向もあるように見られます。
また、最近では、ユーロ懸念がある局面ではユーロ買い、リスクが緩んだ局面では低金利でのユーロ・キャリーを目的としたユーロ売り取引が増える傾向があります。
直近の情報では、ギリシャの新しい提案期限を9日として、救済するかどうかの議論は12日のユーロ圏首脳会議で決めると伝わっています。主要市場として最初に開く東京マーケットに大きな影響を与える可能性がありますので、来週初も要注意です。
下げ止まらない中国株の影響は、豪ドルが対米ドルで2.65%下落、0.74台を割り込む場面もあり、2009年来の安値圏に来ています。オーストラリ ア準備銀行が、今後利下げに動くのではないかという予想も通貨の下げに影響しています。また、オセアニア通貨であるニュージーランド・ドルも、利下げ予想 や、同国の主要な輸出品の一つである粉ミルクを中国が輸入禁止にしたこともあり影響しています。下値リスクが高い状態です。
日本の投資家にも人気があるオセアニア通貨ですが、両国とも中国との交易の比率が高いので、中国経済への不安が両国の経済に影響することに留意しておく必要があります。
ギリシャや中国株に関心が集まるところですが、引き続き米国の利上げが今年中にあるのかどうかが為替市場での大きなポイントになるでしょう。
このところ発表される米国の経済指標は、改善しているものもあるものの、早期利上げへの決め手になるほどでもない、という印象です。昨日、IMFの理事 は米国の利上げは今年でなく、来年まで待つべきだとコメントしました。欧州や中国の現状を考えると、微妙ですが、FRBからのコメントは、利上げは「経済 指標次第」としていますので、こちらからも目が離せません。
ギリシャは、来週14日にサムライ債、そして20日に35億ドルのECB保有の国債の返済期限がきています。今後の交渉次第ということになるでしょう。
ギリシャの新しい財務相は前任者と違って、EU側から好感を持たれているようです。ギリシャが譲歩するか、債権団が債務減免に応じるか、注目されます。
某フランスの著名経済学者から、大戦後に債務減額してもらったドイツやフランスに対して、ユーロ圏はギリシャにもっと寛容になるべきだとの意見も首脳陣に送られたと伝えられます。ドイツが寛容になるかどうかが、ポイントになってきそうです。
ただ、当面の交渉期限内に妥協策はでても、このギリシャ債務問題の根本の解決への道はエンドレスのようにも思えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*7月8日15時執筆
本号の情報7月7日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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